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ひとつなぎの願い
私がアイツでアイツが私
騒がしい周囲、しかし霞が掛かったように動けないティティ、周囲からは血の匂いと叫び声。

『(血の、におい・・・体、動かない)』
《ティティ・・・》
『(・・・リリィ)』

良く知る声に名を呼ばれティティの意識は沈んで行った。

《・・・》

意識が沈んだにも関わらずティティは目を開きゆっくりと其の身を起こし自身の両手を見つめる。

《体が動く?》

緩慢な動きで周囲を見回し長い髪に触れる。

《ティティの体?》

再び両の手を見つめ其処に意識を集中させると淡い光が集まる。

《魔法は使える・・・声は、出ない・・・体は》

立ち上がり体を動かし確認するのはリリィ、ティティの双子の片割れの意識が其処にあった。

《どういうこと・・・私は何もしていないのに》
「歓迎の町・ウイスキーピークは賞金稼ぎの巣か・・・」
《!》
「そんな事じゃないかと思ってたわ」
《・・・》
「ティティ、アンタあっさり酔いつぶれたと思ったけどひょっとしてワザとだったの?だとしたらアンタもとんだ役者ね!」

嬉々として起き上がったナミに目を瞬くリリィ。

《酔いつぶれた?》
「ティティ?どうしたの?さっきのやっぱりマジだった?具合悪いとか?」

リリィの声はナミには届かず心配したナミは額に手を翳しリリィの脈を計る。

「うーん、脈は正常だし、熱も無い、顔色も悪くないし・・・」
《私の声、聞こえますか?》

ナミの手に手を添え訊ねたリリィの声にナミは慌てて手を離そうとするとリリィは手を掴み再度問う。

「え!?頭の中に声が・・・っ!?」
《驚かせてごめんなさい、聞こえていますか?》
「え、えぇ・・・これティティ声なの?魔法?」
《はい、コレは相手に自分の声を届ける魔法なんですが一度相手に触れて魔法を掛けないと声が届かなくて・・・》
「あぁ、それで手を・・・っていうかティティ、アンタ喋り方が・・・まだお酒が抜けてないの?」
《・・・その、私もなんでこの様な状況になっているのか分からないのですが》
「?」
《私はティティの双子の妹でリリィと言います》
「は?」
《何もしてなかったのですが何故か私の意識がティティの体に・・・まぁ、ティティは血のにおいで動けなかったのでちょうど良いのだけど》

リリィの話にナミは額に手を置き何やら考えている様だが人の慌ただしい動きに気付いたリリィがナミの手を引き其の場を離れる。

「ちょっと!?」
《人が来ます、ゆっくり話も出来ませんからコチラヘ》

別の家に入ればナミは家探しを始めた。

《ナミさん?》
「ナミでいいわよ、一度魔法を掛ければ手を繋ぐ必要もないんでしょ?」
《はい、まぁ・・・》
「そういえば、外結構血だまりが出来てたけどアンタは平気なの?ティティは血を見ただけで動けなくなるのに」
《私はティティとは魔法の性質が違うので血は平気です、ティティの体でも適応されているのには驚きましたが》
「性質?」
《簡単に攻撃や防御といった違いで、ティティは攻撃型で私は防御型の魔法が得意なんです》
「ふーん、それで何で血が平気なの?」
《私達魔導師は力を持ちすぎるが故に争いの火種になる事を恐れて自分達に“呪い”をかけたんです》
「まじない?」
《はい、力の大小や性質で呪いの違いがあるので・・・》
「成る程、ティティは血が駄目なのはその“呪い”の所為なのね」
《はい・・・》
「アンタは何かあるの?」
《私は人を傷つける事ができない呪いを掛けられています》
「しっかしある意味不便よね、うっかり傷つけたりイキナリ攻撃されたらそのまま殺されちゃうじゃない」
《その為に私達は“呪い”を防ぐ“まじない”を作り出しました》

其処でリリィは腕の紋章を指し示す。

「あ、それが?」
《はい、コレが浮かんでいれば自分に掛けられた呪いを防ぐ事ができるんです》
「なるほど・・・覚えておくわ、それにしても・・・」
《?》
「お宝はたったこれだけ?何処が賞金稼ぎの巣なのよ・・・シケタ町だわ、ウイスキーピーク・・・」
《ナミ・・・》

リリィの話を聞きながらも家々を渡り手を休めず金庫という金庫を漁っていたナミから溜息が漏れる。

「リリィ、アンタお宝探せる魔法とか無いの?」
《?》
「ティティは探し物の魔法はあるって言ってから」
《あぁ・・・お宝と言っても具体的に欲しい物があれば探せま――・・・隠れて》
「え?」

家の外を歩いていると感じた不穏な気配にリリィはナミを物陰に押しやり気配の方を窺うとナミも共に覗き見る。

「ハァ、ガハッ・・・!!」

傷だらけで倒れるナミ達をこの町に歓迎した町長を名乗った男と双子岬であった男女の姿。

「アイツら!」
《え?知り合いですか?》
「知ってるけど敵!」
「無惨はモンだなたった一人の剣士に敗けただと?」

リリィに即座に答えたナミに続いて聞こえて来た男の声に二人は其方に意識を向ける。

「Mr.5!!?ミス・バレンタイン!!」
「お前らフザけてんのか?ん?」
「キャハハハハハハハ!!しょせんこれが私達との格の差じゃない?」

癇に障る様な物言いにナミは眉を寄せる。

「何、アイツら・・・」
《倒れている方達の知り合いの様ですが・・・》
「なんか強そう・・・」
《大丈夫です、ナミは私が護ります》
「リリィ・・・アンタいい子ね!」

ティティの妹なら信じられるっとリリィの手を握るナミ。

「心当たりはねェか?社長がわざわざこのおれ達を派遣する程の罪人がココにいるんだよ」
「ボスってコイツらのトップよね?」
《恐らく》
「社長の言葉はこうだ『おれの秘密を知られた』どんな秘密かはもちろん俺も知らねェが、我が社の社訓は謎・・・社内の誰の素性であろうとも決して詮索してはならないのが掟だ!もし誰かが社長の秘密を知ったとしたら当然死は免れねーさ」
「で、如何なる人物が社長の秘密知ったのか、よくよく調べ上げれば・・・あら大変!ある王国の用人がこのバロックワークスに潜り込んでるとわかったじゃない?」
「(あ、コレっておいしい話!?)」

王国と言う言葉にナミの目の色が変わる。

「罪人の名はアラバスタ王国で今行方不明になっている――・・・」
「死ね!!!イガラッパッパ!!!」
「王女には触れさせん!!アラバスタ王国護衛隊長の名に懸けて!!!」
「イガラム!!!」
「アラバスタ王国護衛隊長イガラム!!そしてアラバスタ王国王女ネフィルタリ・ビビ・・・二人をB.W社長の名の元に抹殺する!」
「(王女!!?)」

砲撃されても傷つかない男より一国の王女が襲われている事実の方がナミを動かした。

《ナミ》
「え?」

リリィに手を掴まれたナミは一瞬で建物の上へ移動した。

「えぇ!?」
《瞬間移動の魔法です、あんな場所じゃ流れ弾に当たるかもしれませんから》

下を見れば攻撃の手を休めないイガラムをはじめ他の面々もよく見える。

「ん?あれってルフィ!?」
《ルフィ?》
「ウチの船長よ!あ、ゾロ・・・」

ゾロがルフィを引き攣れて行く姿に安堵しゾロの元に行こうとリリィに声を掛け其の場から動く。

「・・・――っ剣士殿!!貴殿の力を見込んで理不尽な願い申し奉る!!!」
「まつるな!知るかよ!!手を離せ!!!」
「あの二人組み、両者とも“悪魔の実の能力者”ゆえ私には阻止できん!!!かわって王女を守ってくださるまいかっ!?どうか!!!」
「あ”ぁ!?」
「遥か東の大国“アラバスタ王国”まで王女を無事送り届けてくだされば・・・!!ゴホッ!ガなラヅや莫大な恩賞をあなだがだに・・・!!お願い申し上げる!!どうか王女を助け・・・ガ!」
「ふざけるな!お前らさっきまで俺達を殺そうとしてたんだぞ!?もっぺん斬るぞ!!!」
「莫大な恩賞って、ホント?」

丁度良い場面に出くわしたと降りる寸前に腰を落ち着けたナミの後ろに控えるリリィ。

「その話のった!10億ベリーでいかが?」
「ナミ!!ティティ!!!」
「10億ベ・・・ゴホン、マーマーマーマーマ〜〜♪」

上を見上げれば女性クルー二人の登場に目を瞠るゾロ、そして驚愕の額を提示されたイガラムはむせ返る。

「てめェら、酔って寝てたんじゃ・・・」
「あのねー、海賊を歓迎する様な怪しすぎる町で誰が安心してよってられますかっての!全部演技よ、え・ん・ぎ!!まだまだイケるわよ、私っ」
「はー、そうかい」
「―――で?10億の恩賞を約束してくれるの?護衛隊長・・・私達に助けを求めなきゃきっと、王女様死ぬわよ?」

屋根から飛び降り笑い飛ばすナミはイガラムに視線を向け更に笑みを深め目線を合わせる様に屈む。

「っ!!?私の様な一兵隊にそんな大金の約束は・・・!!!」
「ん?まさか一国の王女の値段はそれ以下だっていうの?」
「っ・・・・・・・・・!!!」
「出せ」
「脅迫じゃねェか」

傷つき地面に臥している者に無情に笑うナミにゾロの率直な言葉に心の中で頷くリリィ。

「ゴホ、ならば、王女を国へ無事送り届けてくださるというのなら!!王女に直接交渉して頂ければ確実です!!!」
「・・・・・・!!まず先に助けろってわけね」
「・・・・・・・・・!!!こうしている今にも!!王女は奴らに命を!!!」
《ナミ、助けないんですか?》

必死の形相で懇願するイガラムに加え、眉を下げるリリィにナミは溜息交じりに立ち上がる。

「・・・分かったわ、おたくの王女、ひとまず助けてあげる」
「・・・・・・!!!」
「・・・――さァ!!行くのよゾロ!!!」
「行くかアホっ!!!何でおれがてめェの勝手な金稼ぎにつき合わなきゃならねェんだ!!」

突然話を振られたゾロは、噛み付くように反論する。

「あーもーバカねー!!私のお金は私のものだけど、私の契約はあんたら全員の契約なのよ?」
「どこのガキ大将の理屈だそりゃあ!!!」
「なによ、ちょっと斬ってきてくれるだけでいいのよ!」
「おれは使われるのが嫌いなんだ!!あのアホコックと違ってなァ!!!」
「そんな事言って・・・アンタ、アイツらに勝てないんじゃないの?」
「何だと!?もういっぺん言ってみろ!!」
「そんな事言って、アンタ、アイツらに勝てないんじゃないの?」
「綺麗に言い直してんじゃねェ!!!」

怒涛の口撃の応酬に言葉を挟めずに居たリリィの目の前を眠っていたはずのルフィが横切る。

《ルフィ?》
「べんじょ〜」

ルフィは聞こえていない筈のリリィの疑問に返答し其の場から去る。

「ちょっと忘れてない?アンタ私に借りがあるのよ?」
「あ?ねーよそんなモン」
「ローグタウンでアンタに貸した10万ベリー・・・」
「それはそっくりそのまま返しただろう!?刀は貰ったから金は使わなかった!」
「でも、返す時は三倍返し、つまり30万ベリー・・・20万ベリー返済されていません!」
「っ、ならティティだって・・・」
「ティティはその日の内に30万ベリーきっちり返済したわよ」
「なっ!!?」
「アンタ“約束”の一つも守れないの?」
「!!!」
「言う事聞いたらチャラにしてあげてもいいわよ?」
「テメー碌な死に方しねェぞ・・・」
「そうね!私は地獄に落ちるの」
「くっそたれー!!!」
「お願いねー!!」

口論の末ナミに言い負かされたゾロは悪態を吐きながら王女の元へと駆けだした。

《ナミ・・・アレではゾロが可哀想ですよ》
「アイツは平気よ!打たれ強いし!」
「面目ない・・・」
「《ん?》」
「私にもっと力が有れば王女をお守りできたのに・・・」
「大丈夫よ、あいつはバカみたいに強いから」
「王女にに・・・ビビ様にもしもの事があったら、アラバスタ王国はもう終わりだ・・・」
「《!》」
「あの方は生きねばならん!!!」

苦悶に涙を浮かべるイガラムにナミは頭を軽く掻く。

「・・・護衛隊長死にそうね、手当――・・・」
《ナミ、治療は私が》
「治療系の魔法とか?」
《病は治せませんが怪我なら》

イガラムの横に膝を折り手を翳し暖かな光が掌から注がれる。

「貴女方はい゛っだゴホ!」
「そんな無理に喋る事ないわよ・・・」

イガラムに魔法を施すリリィを眺めながら手近な場所に腰を下ろすナミ。

「ホント、魔法って便利よね・・・医者いらずじゃない」
《いいえ、魔法も決して万能ではありません、病気は治せないし、死者を甦らせるなんてもってのほか》
「!」
《それでも、人は生に貪欲だから私達には魔法医と言う職もあります、コレは応急手当みたいなものですよ》
「そう・・・ねぇ、B.Wって一体何なの?」
「・・・」

儚い笑みを向けられ、同じく笑い返すナミは、徐々に塞がって行く傷を呆然と眺めるイガラムに問い掛ける。

「秘密犯罪会社です・・・社員の誰もボスの顔も名前も知らない」
《え?》
「主な仕事は諜報・暗殺・盗み・賞金稼ぎ、すべてボスの指令で動きます」
「そんな正体も分かんないようなボスの言う事、何でみんな聞くのよ!」
「B.Wの最終目標は・・・理想国家の建国!今この会社で手柄を立てた者には、後にボスが造り上げる理想国家での要人の地位が約束されるのです」
「なるほど・・・」
「ボスのコードネームはMr.0!つまり、与えられたコードネームの数字がゼロに近いほど後に与えられる地位も高く、なにより強い・・・特に、Mr.5から上の者達の強さは異常だ!!」

其の話にリリィは眉間の皺を深くする。

《たとえ、そのB.Wなる組織が理想の国家を造った所で碌な国でない事は確かです》
「まぁそうね・・・犯罪を犯してる人達が作った国だもん」
「?」

リリィの声の聞こえないイガラムは行き成りのナミの独り言に眉を寄せる。

《上が碌な事をしない国では私達民が・・・》

治療の手を止め立ち上がるリリィにナミとイガラムが視線を向ける。

《そんな国、要りません!》
「リリィ?」
《!・・・ごめんなさい、何でもありません》
「いいわよ別に・・・っ!?」

突如爆音や建物の壊れる音が連続して響きナミの肩が撥ねリリィは探るように周囲を見回す。

《・・・》
「え?何?まさか・・・ゾロの奴」
《・・・先程まで無かった殺気も感じられますね・・・》
「え?えぇ!?新手!!?何かすごい音するんだけど!!!」
《様子を見てきます、ナミはココで待っていて――・・・》
「置いてかないで!!(負傷したおっさんよりリリィと居た方が安全!!!)」

必死の形相で掴まるナミに驚きつつ頷くリリィ。

《じゃあナミ、護衛隊長さんに・・・》
「あ、そうね!じゃあ護衛隊長、私達ちょっと行って来るんで待ってて」
「え?ちょっ!」

イガラムの返事を待たずにナミはリリィの腕を掴んだまま音源へ向かう。

「「ゴチャゴチャうるせェな!!!勝負の邪魔だァ!!!」」
「《!!?》」

聞き慣れた声に駆けていた足が止まり左右に薙ぎ払われた敵の姿を視認するナミとリリィ。

《えっと・・・とりあえず倒した様ですよ?》
「・・・あいつら、なにやってんのよ!」

敵は倒したというのに戦意を収める様子のないルフィとゾロにナミが歩み寄り拳と刀を交えようとしたまさに其の瞬間。

「やめろ!!!」
「「ぐぁ!!!」」
「「《!!?》」」

野獣の様な男を可憐な女が殴り飛ばす様に見ていた二人と一匹は大きく口を開く。

「あんたらねェ・・・一体何やってんのよ!!」
《ちょっ、ナミ!》
「一応あの娘を守れたから良かったものの危うく10億ベリーを逃すとこだったのよ!?わかってんの !?」

ルフィとゾロの襟首を掴み上げ怒鳴るナミにリリィは慌てて駆け寄る。

「・・・あなた達、何の話を・・・どうして私を助けてくれたの!?」
「そうね・・・・・・その話をしなきゃ、ちょっとね・・・私と契約をしない?」
「契約?」

困惑するビビに笑みを見せるナミだが掴み上げられているにも関わらず睨み合い手を出すルフィとゾロ。

「あばれるなっ!!」
《ナミ!?やめてあげてください!》

拳骨を受け地面に臥す二人を確認すると一つ溜息を吐くナミ。

「リリィ、私はあの娘と話すからあんたはコイツらに説明しといて」
《は、はい・・・》

リリィは屈みルフィとゾロの手を取る。

「ティティ止めんなよ!ゾロは町の連中を斬ったんだ!」
「だから敵だっつってんだろうが」
《その事を含めて説明します、少し落ち着いてください》
「「!?」」

頭に直接響く声に二人はリリィに目を向ける。

「今のティティが喋ったんだよな?」

頷きが返って来るとルフィは首を傾げる。

「あれー?なんか変に聞こえたぞォ?」
「頭に直接聞こえたぞ」
《その事も一緒に説明します》

腰を据えられる場所に移りリリィは話せるのは魔法の一種である事を二人に語る。

《改めて、はじめましてと言うのは変な気もしますが、ティティの双子の妹、リリィです》
「ティティの妹か!」
「え!?はぁ!!?おまっ、ティティだろ!?」
《体は確かにティティのモノです・・・でも、どういう訳かいつの間にかティティの体に・・・》
「不思議体験だな!!」
《そうですね!》
「それで片付くか!!!」

笑い合うルフィとリリィに青筋立てるゾロにリリィは眉を下げる。

《どう足掻いても私の事は説明できません・・・魔法とでも思っておいてください》
「あぁ・・・そうするよ」
「あっはっはっ!!」
《とりあえず今の状況ですが――・・・》

ウイスキーピークやB.Wについてルフィ達が理解できるかはさておき現状の説明をした。

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