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ひとつなぎの願い
上陸
世間の情報の源、ニュースクー・・・本日も麦わら海賊団の元に新聞を届けに飛んできた。

『ん?・・・・・・カモメが新聞運んできた!!?』

舳先に止まったカモメの肩から掛かる新聞の束に驚いたティティはカモメを指さし驚きの声を上げた。

「ティティあんた、ニュースクー知らないの?」
『ニュースクー?』

硬貨を手に歩み寄ってくるナミにティティは首を傾げる。

「呆れた・・・」
「いやいや、よく考えろナミ、ティティは数百年氷の中に居たんだぞ」
「あぁ、なるほどニュースクーが無い時代の人間って事ね・・・って、何百年前?」
「・・・さぁ」
『ねぇナミ!どうしたらいいの?どうやって新聞貰うの!?』

興奮した声、煌めく瞳をナミとカモメに向け無駄にヒラヒラしたドレスを揺らすティティにナミとウソップは苦笑する。

「はいはい」

ニュースクーについての説明をしつつナミはティティに買い方をレクチャーする。

「――・・・また値上がりしたの?次上げたらもう買わないわよ!」
「くー」
『えー』

新聞の値上がりに眉を寄せるナミに申し訳ないと頭を下げるカモメと不満の声を上げるティティ。

「何でアンタまでんな声出すのよ」
『次は私がひとりで買ってみたいの!』
「はいはい、次はお願いね」

買ったばかりの新聞でティティの頭を軽く叩き椅子に腰かけるナミにウソップが声を掛ける。

「お前、金はもう集めてねェんだしイイじゃねェか?」
「分かってないわねウソップ!!あの一件が済んだからこそ今度は私は私のために稼ぐのよ!ビンボー海賊なんていやだもの!」
『(あの一件?何だろう?)ナミ・・・』
「ん?」
「さわるなァ!!!」

ティティ問いを遮るように怒鳴り声と共に打撃音と苦痛の声の原因がウソップの腹の上に落とされた。


「何だよイイじゃねーか一個ぐらい!!」
「ダメだ!ここはナミさんのミカン畑!!この俺が指一本触れさせねェ!!!ナミさん!恋の警備万全です!!」
「んっ、ありがとうサンジくん」

意にも介さず、新聞を開くナミにティティは冷や汗を流した。

『(こーいうのを魔性の女っていうのかな?)』
「しかし世の中も荒れてるわ、ヴィラでまたクーデターか・・・」

新聞を捲りつつ呟くナミを眺めているとティティの前に一枚の紙が滑り落ちてきた。

「ん?」
『・・・?』
「「ん?」」

ナミ、ティティ、ウソップ、ルフィがティティの拾った一枚の紙に視線を向け、サンジも何気に上から覗き込む。

「「「「『あ・・・』」」」」
「ぐー・・・」

五者五様、其々違う色の声が重なる。

「あああァァァ―――っ!!!」

ティティの手から手配書を受け取り皆に見せるように翳し、手配書と同じ笑顔で喜びを現すルフィ。

「なっはっはっは!オレ達“お尋ね者”になったぞ!!三千万ベリーだってよ!!!」
「アンタ・・・また見事に事の深刻さが分かってないのね・・・これは命を狙われるって事なのよ!?この額なら本部も動くし強い賞金稼ぎにも狙われるし――・・・」

ナミが思案している中、興奮冷めやらぬ四人は耳を貸さず息巻いていた。

『三千万ってルフィそんなに悪いことしたの?』
「ちがうぞー、オレはただ気に入らない奴をブッ飛ばしただけだ!」
『人を殴っただけで賞金首になるの!?今の世の中恐いね・・・』
「違うんだティティちゃん、そいつが言うブッ飛ばしたってのが――・・・」
「(俺が写っとる!?)・・・これは俺様の後頭部に三千万の懸賞金が――・・・」
『え?そうなの!?』
「んなワケあるか!テメー、ティティちゃんに変な事吹き込んでんじゃねェよ!!」
「聞けェ!!!これは“イーストブルー”でのんびりやってる場合じゃないわね」
「おい、なんか島が見えるぞ?」

騒がしい面々の声で目を覚ましたゾロは視界に写った島を指しナミは笑みを浮かべた。

「見えたか・・・あの島が見えたってことはいよいよ“グランドライン”に近づいてきたってこと!」
『何かあるの?あの島』
「無知なティティの為に教えてあげる」
『私、無知違う!!』
「数百年の空白はデッカイわよ・・・あそこにはね、有名な町があるの」

からかう様な笑みに頬を膨らますティティの頭を撫で答えるナミ。

「“ローグタウン”別名始まりと終わりの町・・・かつての海賊王G・ロジャーが生まれ、そして処刑された町・・・」
「海賊王が死んだ町・・・!!」

ナミの言葉に目を輝かせたのはルフィであった、ナミは自身の船長へと目を向け訊ねる。

「行く?」

同然答えは是、羊の船首はローグタウンへと向いた。

「あ!そうだティティ!」
『?』
「アンタ着替えなさい」
『え・・・何で?』
「そんなヒラヒラドレスで歩く気!?」
「あー・・・そーいやティティ島を出た時からずっとその服だったな」

ナミに言われてウソップも気づき全員改めてティティの姿を見やる。

「ソレでよく動き回れるなティティ」
「確かに・・・重そうだ」
「動きずらそうだ!」
『私は着慣れてるからそうでもないんだけど・・・』
「ティティちゃんによく似合ってるから俺は全然気にしないぜ!」
「動けようと、慣れていようと目立つから却下!!」

ウソップ、ゾロ、ルフィに言われ手を広げ自身の服を眺めながら気にしないと言うティティとサンジの言はナミに遮られる。

『でも私何も持ってないんだよ、服なんてコレだけだよ』
「仕方ないわね・・・私の貸してあげるからそれ着なさい!」
『はーい』
「髪も結ってあげる、そんなに長いと大変でしょ」
『ホント?ありがとうナミ!』

ナミの服を借り身形を整えた頃には、ローグタウンの港に着いていた。

―――
――



「ウーッ!!でっけー町だー」

町への入り口からでも分かる町の活気に全員の顔に笑顔が漏れる。

「かつてはグランドラインへ向かう海賊達で賑わった町よ、必要な物はなんでも揃うわ」
『私何も持ってないから日用品とかいっぱい買わないと!』

ナミの言葉にティティは目を輝かせ何処から回ろうか笑みを浮かべ思案する。

「よーし!これから始まる大冒険のために俺ァ装備集めに行ってくる!」

ウソップはこれからの予定を口にし。

「ここはいい食材が手に入りそうだ!あといい女・・・」

サンジも露店を見回した後頬を緩め後の予定に思いを馳せる

「俺も買いてェモンがある」
「あらぁ、どうやって?」
「ぐっ」
「確か文無しよねェ」
『はっ!私もお金ない・・・』

ゾロ達のやり取りに自身も無一文である事を思い出し現実に引き戻されたティティ、二人の表情にナミは口角を上げ魔性を発揮した。

「貸すわよ、利子3倍ね!」
「っ、てめー!」
『完全に足元見られた!』
「よーし!オレは処刑台を見てくる!!見に行くんだ、海賊王が処刑された場所を!!!」

自分の目的第一にルフィは仲間を顧みず颯爽と走り出す。

「おいっルフィ!って行っちまった、まだ集合場所も決めてねーってのに・・・しょーがねェな」
「大丈夫じゃない?目的の場所は分かってるんだし」
『いざとなったら私が探すよ、探し物の魔法使えるから』
「へェ便利そうだな」
「流石ティティちゃん、頼りになるぜ!」

集合場所と時間を決めるとルフィに続きウソップとサンジも目的の為足を進める、そして・・・

「んじゃ、お金の無い二人にはやさしー私がお金を貸してあ・げ・る♪」
『本当に優しかったら利息なんて付けないと思う』
「まったくだ」
「んー?なに?3倍なんて余裕だから5倍?」
『ごめんなさい!3倍で勘弁してください!!』
「(この女・・・)」

ティティとゾロはナミから十万ベリーを受け取り別れた。

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