標的1 えぇ!?私がマフィアの10代目!?
「おはよう、母さん」
「にーちゃんおはよう」
並盛中学の制服に身を包み母に挨拶をしつつ食卓へと座る新奈
母・奈々はとびきりの笑顔で娘へと挨拶を返す
「そうそう、にーちゃん」
「ん?」
「今朝、ポストにおもしろいチラシが入ってたから早速電話しちゃったv見て見て!」
「?『家庭教師いたします。お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科問わず』・・・・・・・・・」
新奈は口の中のご飯を飲み込み奈々から受け取ったチラシの見出しを読み上げ不思議な内容に首を傾げる
「訪う方若くてイケメン!ねぇ、それにご飯と寝る所さえあればタダで教えてくれるんですって」
「タダとイケメンに惹かれたのね・・・私家庭教師付けなきゃいけないほど成績悪いつもりないんだけど・・・」
「にーちゃん成績は良いけど友達も作らないで寂しい人生を送っちゃうと思って・・・チラシを見てコレだ!て思ったのv」
奈々の中でどういった方式が完成させたのかは定かではないが、新奈にすれば有難迷惑であった、奈々にチラシを渡し足早に玄関へと向かった
「私、家庭教師は必要ないから悪いけど断ってね母さん、じゃあ学校に・・・」
「ちゃおっス」
玄関には二足歩行で黒スーツを着こなし、ボルサリーノに鮮やかな緑色のカメレオン乗せつつ片手を上げて喋る赤ん坊の姿があった
「お前がニーナか?」
「え?えぇ(馴れ馴れしい)・・・」
「今日からオレが面倒みてやるぞ」
目の前の赤ん坊に激しい違和感を覚え咄嗟に身構え、新奈の反応に赤ん坊はニヒルに笑う
「あら、ボクどこの子?」
「オレは家庭教師のリボーン」
黒スーツの赤ん坊は簡素な名刺を差し出し奈々は軽やかに笑うが、新奈は笑えないこの場を逃げる事にした
「遅刻したくないからもう行くね」
「えぇ、いってらっしゃいにーちゃん」
「行ってきます」
無視することにしたらしい
「もう、一体なんなのあの赤ん坊・・・(凄く変な感じがした)」
「本職はヒットマンだ」
「ヒットマンって、殺し屋よね・・・ん?わっ!?」
玄関からずっと駆け足だった新奈は突然の声に犬の尾を思いっ切り踏みつけ転んでしまった
その時咄嗟に頭の上にいたリボーンを両手で持ち上げ巻き込まないよう倒れた
「っ〜いつのまに・・・ぁ・・・・・・怒ってる?」
「まぁ、当然だな」
尾を踏まれ唸っていたチワワに逃げ腰の新奈
今だ新奈に抱きかかえられているリボーンは、口元を持ち上げチワワの頭を撫で怒りを静めた
「・・・ありがとう、えっと・・・リボーン?」
「あぁ、オレを助けてくれたからな、サービスだ」
「なんのサービスよ・・・」
擦りむいた足とリボーンを恨めしげに睨み、立ち上がる新奈
「(み、見てしまいました・・・もうドキドキドッキリです可愛くて可愛くてもうギュ〜って抱きしめたいです)」
「わぁ可愛い!」
曲がり角からリボーンに熱い視線を送っていた少女がまさに歩み寄ろうする横を黄色い声上げ横切る少女
熱い視線の持ち主はタイミングを失ったようで奇声上げ地面に倒れた
「ちゃおっス」
「おはよう」
「笹川さん・・・」
「おはよう、沢田さん」
「おはよう・・・・・・!?」
リボーンに駆け寄って目線を合わせたのは、新奈と同じクラスの笹川京子だった
同世代の子と話すのが苦手な新奈は、さっきまでの勢いはどうしたのか
小声で呟くように挨拶をすると、先程奇声を上げて倒れた少女が歩み寄ってきた
「はぁはぁ・・・この子、弟さんですか!?」
「いえ、違います」
即答する新奈
「ボクどうしてスーツなんて着てるの?」
「マフィアだからな」
「わぁーかっこいい!じゃあ学校遅れちゃうからまたねボク!」
「ちゃおちゃお」
「私も遅刻です!また今度!!はひ〜」
二人の後ろ姿に安堵の息を吐くとリボーンは意外そうな声を上げた
「お前、同世代の奴苦手なのか?」
「え?・・・まぁ、そうね・・・話が全然合わなくて、それと小学校の時ちょっと・・・・・・それ以来結構人見知り」
「そうか・・・」
「って、何であなたにこんな話を――・・・」
「あ、沢田さん」
「え?」
口を滑らせ焦る新奈に京子が声を掛けた
「一緒に学校行こ!」
「え!?」
「行って来いニーナ、せっかく誘ってくれてるんだ」
「・・・ぁ・・・・・・うん・・・ありがとう、えっと・・・ご一緒させていただきます」
「うん!」
リボーンに後押しされ、京子と並んで通学路を歩く
「沢田さんとこうやって歩くの初めてだね」
新奈はただ頷く、その頬は若干赤みが差している
まるで好きな子と初めてデートする男子中学生の様だ
「沢田さん一人でいること多いもんね」
「話すのが苦手だから・・・ただ、それだけ・・・」
「そうなんだぁ」
「やぁ、京子」
「持田先輩・・・」
「・・・・・・じゃあ私は先に・・・?」
前々から京子と噂のある剣道部主将・持田の登場に、気を利かせようとした新奈の制服の裾が引かれ其方に目を向けると京子の手であった
「一緒にいて沢田さん」
「(笹川さん先輩の事嫌いなのかしら、よく一緒にいるのに・・・)うん」
学校までそんなに距離は無かったが校門に差し掛かったところで京子へ一方的に話していた持田が新奈を指差し声を張り上げ周りの注目を集めた
元々小学校時代に問題を起こしていた新奈に好んで近づくモノ好きなど居なかったため、中学で新奈は浮いた存在だ・・・その存在を煩わしく思ったのだろう
「オイ沢田、少しは気を利かそうと思わんのか!俺と京子のツーショットを邪魔して!」
「え?」
「(何言ってんのこの人)別に、邪魔するつもりはありませんが・・・」
「だったら何で並んで歩いてんだ!お前は京子に嫌われてるのが分からんのか!」
「持田先輩?」
「(どう見てもあなたが嫌われてると思うけど・・・)お言葉ですが先輩、笹川さんの好き嫌いを決める権利は貴方にはありません。
彼女を所有物のように扱うような関係性にも見えません・・・失礼すぎませんか?」
京子の困った顔に眉を顰め、新奈は持田に冷めた視線を向け言い放っ
新奈の言葉にあっさり切れた持田は新奈に殴りかかるが襲い掛かってきたが、反動を利用されそのまま投げ飛ばされ、ちょうど通りかかった新奈のクラスメート野球部の山本武に支えられた
「おっと」
「ナイスキャッチ!」
「さすが野球部」
「きゃー山本君!!」
「武!」
「あいつウチのクラスの…」
思わぬ通行人の登場に新奈は山本に軽く会釈をし立ち上がったり、懲りずに殴りかかってきた持田を今度は地面に叩きつけた
「男尊女卑するわけではありませんが、女に手を上げるなんて最低ですね先輩」
「っ・・・」
まだ諦めないのか、立ち上がろうとする持田、が・・・校舎側から声が掛けられた
「何やってるのかな、ソコ」
「ヒバリさん」
新奈がその人物を呼んだ瞬間全員慌てて校舎へと駆け込んでいった持田も例外無く、新奈はそんな彼らをただ見ていただけで特に慌てる事はしなかったが
「キミか・・・何やってたの?」
「言いがかりを付けられただけですよ、チャイム鳴る前に行きますね」
「ちょっと待って、教室の前に保健室にいきなよ」
「え?」
「足・・・そのままにしとく気?」
「あーそういえば」
「・・・・・・まさか彼にやられたの?」
「いいえ、来る時転んだだけですよ・・・じゃあヒバリさん、また」
「うん、気をつけなよキミ、変なところが抜けてるから」
「・・・・・・(否定できない)はい」
他人行儀な会話で淡白な二人だが小学生からの幼馴染兼恋人である
とてもそう見えないため噂の一つもたたない末恐ろしい二人だ、そんな雲雀に別れ、保健室で治療を受けた後、教室に行くとクラスメートから持田の伝言を受け取り、昼休みに体育館へと行くと
「きやがったな暴力ゴリラ女め!!
おまえのようなこの世のクズは
神が見逃そうがこの持田がゆるさん!!成敗してやる!!!」
面を着けず防具で身を固め、竹刀を手に体育館中央に居た持田が声を張り上げながら新奈に歩み寄ってきた
周りには噂を聞きつけたのかギャラリーがいっぱいクラスメートや見知らぬ先輩まで・・・
壁際にいた雲雀の姿に新奈は内心驚いた、持田の啖呵に眉を寄せ口を開く
「剣道にふれた事の無い私に剣道勝負を挑むおつもりですか?(卑怯だ・・・)」
「心配するな、貴様のようなドアホでもわかる簡単な勝負だ。貴様は剣道初心者、そこで10分間に一本でもオレからとれば貴様の勝ち!できなければオレの勝ちとする!賞品はもちろん、笹川京子だ!!!」
聞き捨てならない言葉にギャラリーからどよめきが興る
「しょ、賞品!!?」
「最低の男ね」
「本気で仰ってるんですか先輩」
「臆したか、沢田」
「もういいです、貴方とは話をしたくありません。私に投げられた腹いせの勝負に人を賭けるなんて・・・」
「っうるさい!いくぞ沢田!!」
「ニーナ!」
丸腰の新奈に向かって駆け出す持田、見学に来ていた山本武が新奈に竹刀を投げて寄越した
新奈はそれを掴むと即座に構え持田の竹刀を止めた
が、剣道初心者の新奈は防ぐのにいっぱいいっぱいでなかなか反撃に出られない、あろうことか持田は新奈に足払いをしこけさせた
「なっ!?汚ねぇ!!」
「剣道部の風上にもおけねーぞ!」
「沢田さん・・・」
剣道の試合としても反則技なのだが審判は何も言わない
「(反則を取るどころか、仕切りなおしもしないなんて)・・・っ」
その審判の行動に吹っ切れたのか、新奈は足で持田の竹刀を砕き回し蹴りで持田の頭部を蹴った
即座に立ち上がり倒れた持田にめいいっぱい竹刀を振り下ろした
周りは新奈の勝利を確信したのだが審判は新奈を反則負けと宣言しようとした
何時の間にやら審判の背後を取った雲雀のトンファーによって地に沈められ体育館は静まり返った
「沢田新奈の勝ちだよね?」
半分意識の飛んでる審判に問い掛ける雲雀の言葉に審判は慌てて赤い旗を上げ新奈の勝ちを宣言した
「あの・・・ヒバリさん?」
「新奈、群れるのは程々にしときなよ、じゃなきゃ咬み殺す」
「・・・・・・・・・何しに来たんだろう」
雲雀が体育館から出たと同時に見物人から歓声が上がった、この一件で新奈は京子やクラスメート等とよく話が出来るようになり、そのまま良き学園生活がおくれそうではあったが、新たなリボーンの刺客は新奈を見ていた
「あれがボンゴレファミリー十代目、ボス候補の沢田新奈か・・・」
体育館の中を見つめる謎の銀色の影には誰も気付く事は無かった
夕飯も終えリボーンに話があると言われ自室で聴いた新奈は目を白黒させていた
テーブルを挟んだ向こうに居る赤ん坊との言葉の攻防が始まった
「ボンゴレファミリー十代目・・・って、私が?」
「オレはボンゴレファミリーのボス・ボンゴレ\世の依頼で、お前を立派なマフィアのボスにする為にやって来たんだ」
「あの・・・ごめん、ムリ、他を当たってください」
「お前しかいねーんだ、他の候補者はみんな死んじまったからな、だからお前に白羽の矢が立ったんだ」
「ものすっっっごく迷惑なんだけど・・・なんで私に白羽の矢が立つの?」
「ボンゴレファミリーの初代ボスは引退して日本に渡ったんだ、それがニーナのひいひいひい爺さんだ。つまりお前は、ボンゴレファミリーの血を受け継ぐれっきとしたボス候補なんだぞ」
初代からの家計図と地図を合わせた様な紙を見せられ、新奈は口元を引き攣らせ、リボーンは何故か寝巻きに着替え出した
「・・・それってひょっとして血縁者内でボスを決めるの?」
「そうだぞ」
「なっ!職業選択の自由が認められる現代社会で世襲制度!?」
「お、さすが学年上位、難しい言葉知ってんな」
「嬉しくないわよ!ん?・・・でもそれなら女性はボスになれないんじゃ・・・」
「心配すんな、ボンゴレでは素質と実力があれば女でもボスになれるぞ、現に八代目ボスは女だったしな」
「世襲制なんて旧体制を敷いてるのに男女平等の実力主義ておかしくない!?」
「オレの見たところ 素質は及第点だ、明日からオレがビシビシしごいてやる、オレはスパルタだぞ、覚悟してろよニーナ」
ニッとシニカルに笑うリボーンに新奈は気が遠くなっていくのを感じた
リボーンの方へ目をやれば新奈のベットのド真中を占領し寝る構えだ
「スルーした上に寝た!?私のベットで・・・ん?って!何を仕掛けてんの、なにを!!」
自分のベットの周りにはもの凄く分かりやすいトラップが仕掛けられていた
「言い忘れたが、オレの眠りを妨げたらブービートラップが爆発するぞ スピー」
「目ェ開けたまま寝た!?私に何処で寝ろって言うの!ちょっとリボーン!!」
この日から沢田新奈はボンゴレファミリー]世への道を歩み始める事になったのだ
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