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標的83 もたらされた情報
γが地面に落ちると共に華麗に着地した雲雀はトンファーと球体を匣へ収め悠然と立ち上げる

新奈は其の姿に十年前の面影を見て目を見開く



「雷の属性のリングはいらないな」



歩み寄り足元に転がるγのリングを見て溜息混じりに言い放つ雲雀に

新奈とラルは茂みから出た足を止めると雲雀は振り返り新奈と目を合わせる



「何してたんだい?沢田新奈」

「ヒバリさん!!」



新奈は笑みを浮かべ雲雀の名を呼ぶが見当たらない友人の姿に視線を走らせる



「山本武と獄寺隼人はその林の中だ」

「え!?」



雲雀の示した先へ駆け出す新奈をラルと雲雀はそのまま見送る

林の中でリーゼントの人物に看られる傷だらけの二人の姿に青ざめる



「獄寺君、山本君!」

「大丈夫、命に別状はありません」

「あ、貴方は・・・草壁さん?」

「はい・・・とは言え、すぐに治療は必要だ、アジトへ運びましょう」

「二人とも・・・こんなに傷だらけに・・・っ!」



酷すぎる二人の傷に新奈の目尻に涙が溜まる・・・

其れを確認した雲雀は社の方へと歩みだすとラルが制止を掛けた



「待て、負傷者もいる・・・今彼らを抱えて移動するのは危険だ!
また敵に襲われる確立も高い上、アジトの場所も発見されかねない」

「その心配は要りません、我々の出入り口を使えば・・・」

「(我々の出入り口・・・?)」



草壁の言葉にラルは目を細めると雲雀は一つリングを指に嵌めるすると地響きの様な音が響く



「!?何の音?」



視線を社に向ければ雲雀の姿が消えた事に新奈は驚き声を上げた



「っ、消えた・・・?」

「(隠し扉?霧系のリングを使ったカモフラージュか・・・)」

「ただ、このまま立ち去るには一つ問題が残っています・・・雨と嵐のボンゴレリングです」



草壁はラルの前に二つのリングを差し出しラルも其れに視線を向けた



「敵のレーダーに映っている事でしょう・・・此処で反応を消すわけにはいかない」

「分かった、其の仕事は俺が引き受けよう」

「ラルさん・・・」



新奈はラルに駆け寄るがラルは何でもない風に新奈に指示した



「沢田、お前は獄寺と山本を連れてアジトに先に戻れ」

「・・・はい、気を付けてくださいねそれと、京子ちゃんを・・・」

「あぁ、分かっている此れが済んだら俺が迎えに行く安心しろ」



ラルは草壁からリングを受け取るとその場から素早く駆け出し神社を後にした



「では沢田さん、我々も行きましょう」

「はい」



草壁に促され新奈は獄寺を

山本は草壁に背負われ先程雲雀が消えた隠し扉からアジト内へと入った



「やはり、私が二人背負いましょうか?」

「大丈夫です・・・それより此処って」



獄寺を片手で何とか背負い草壁と並び歩きながら和風の装飾が施された廊下を見回す



「我々の日本における研究施設の一つです。」

「研究?」

「他にも色々と兼ねてますがね、ほらあそこ」

「え?」



首を傾げつつ草壁に示された方に和風の造りには似つかわしくない鉄の扉が在った



「ちゃおっス」

「リボーン!?どうしてリボーンが此処に?」

「我々の施設と貴女のアジトは繋がっているのです
もっとも不可侵規定により今まで一度もこの扉を開いた事はありませんが・・・」



視線を向けると同時に開かれた扉の先にはリボーンが立っていた



「群れるのが嫌うヒバリらしいシステムだな、とりあえずそいつ等を医務室に運ぶぞ」



リボーンに指示され第一、第二医療室へ山本と獄寺を運び治療が施された










第二医療室

体中に包帯を巻かれ顔にもガーゼや包帯を巻かれ眠る獄寺のベットの脇・・・椅子にリボーンが腰掛

看ていると病室の戸が音を立てて開き其方に視線だけ送れば新奈が歩み寄ってくる



「獄寺君はどう?」

「まだ起きねーぞ・・・だが、まァつくづく良かったな」

「っ!?この状況の何処が・・・!」

「良かったじゃねーか、ミルフィオーレを相手に
オレ達が生き残るため残された道はお前達それぞれが成長する事しかねーんだ」



リボーンの言葉に、新奈は目を細めリボーンを見返すだけ、リボーンは言葉を続ける



「それに、ピンチの次には良い事もあるはずだぞ」

「良い事・・・あるとイイけど・・・っ!」



リボーンから獄寺に視線を移すと其の瞼が揺れゆっくりと瞳が開かれた



「十代目・・・すいません」

「獄寺君!」

「すいません十代目・・・」



目を覚まして早々謝罪を口にする獄寺に新奈は其の言葉に耳を傾ける



「全て、俺の責任です・・・オレ、本当は・・・本当はこっちの世界に来て・・・
びびってた、みたいっス・・・テンパって、山本に当たって、あんな事に・・・」

「獄寺君・・・」

「山本もそう言ってたぞ」

「!?」



獄寺は僅かに目を見開きリボーンへと視線を向ける



「アイツもさっき――・・・『オレ・・・いっぱいいっぱいで
獄寺に言わなくていーことまで言っちまった・・・謝らねーとな』・・・――ってな」

「な!じゃぁ山本は!!」

「生きてるわ、結構元気に!」



新奈の言葉に僅かに安堵の笑みを浮かべる獄寺は僅かに起こした体を横たえ



「・・・・・・ちぇ、生きてやがったか!」

「(いつも通りの悪態!?)」
いつも通りの悪態ではあるがその表情は柔らかく其の笑みに新奈も笑みを浮かべるが・・・

「(・・・私、自分の事ばっかりで、全然気づかなかった・・・皆もこんなに余裕無かったなんて)」



自身の事ばかりで周囲に目がいかなかった自分の不甲斐無さに視線を落とし拳を握り締める



「そりゃそーだぞ、京子も獄寺も山本も、まだまだ乳くさいガキンチョっだからな」

「っ!?人の心読まないで!」

「お前らは経験不足で不安定で、すぐ血迷ってイタイ間違いを犯しやがる」

「そ・・・そこまで言わなくても・・・」



オブラートに包む事も無くストレートに言い放つリボーンに新奈は頬を引き攣らせる



「だが、今は死ななきゃそれでいいんだ」

「え・・・?」

「イタイ間違いにぶつかる度にグングン伸びるのが、お前達の最大の武器だからな」

「リボーン・・・」



リボーンの言葉に新奈と獄寺の表情に笑みが零れる



「ねぇ」

「っ!」



不敵な笑みを零すリボーンに続き掛けられた声に入り口へと振り返れば雲雀が居た



「もういいかな、話があるんだけど」

「ヒバリさん!!」



新奈は雲雀に体を向けると獄寺は驚き身を起こす



「ヒバリ!?てめー何でココに・・・ぅっ〜・・・」

「獄寺君、無理しないで・・・ヒバリさんはね、獄寺君達を助けてくれたの」

「なっ!!?」

「助けた積りなんて無いけどね、あの男が気に入らなかっただけだから」



慌てて獄寺を制する新奈の横に雲雀も並び獄寺を見下し告げると獄寺は青筋を立て睨みつける



「会いたかったぞヒバリ」

「僕もだ、赤ん坊」



笑顔で挨拶を交わす二人に新奈も頬が緩む



「あの、ヒバリさんお話って――・・・」



新奈の言葉を遮りジャンニーニが医務室に顔を覗かせた



「あのーちょっとよろしいでしょうか?」

「何だ?」

「良いニュースです!情報収集に出ていたビアンキさんとフゥ太さんが、帰って来ましたよ!」

「フゥ太!?」

「アネキが!!?」



驚く新奈と獄寺にリボーンは口角を上げ笑みを浮かべる



「言っただろ?ピンチの次には良い事があるってな」



病室の扉が再び開き話はまたも中断され其方に目を向ければ

十年前と大きな変化は見られないビアンキが目に入る



「っ!リボーン!!もう放さない!!愛しい人!!!」



リボーンに飛びつき頬を染め頬擦りするビアンキに新奈は思わず一歩下がる



「(十年後のビアンキ!?見た目変わってないけど、何か激しくなってる・・・)」

「無理ないよニーナ姉、この時代ではリボーンもニーナ姉も死んじゃったんだ」

「も、もしかしてフゥ太!?」



歩み寄ってきた長身の青年に昔の可愛らしい面影と呼び名で新奈は驚きに目を瞠る



「へへっ、やった!!ニーナ姉より高い!」

「フゥ太伸び過ぎっ・・・」



大きく逆転された身長差に驚く一方

姉のビアンキを見た獄寺がベッドから転げ落ち声を掛ける新奈



「獄寺君!?ビアンキを見たからか・・・」

「期待出来そうだぞ、ニーナ・・・ビアンキ達も新しい情報を持ち帰ったらしい」

「(そうか、皆の情報を集めれば過去に戻る為のもっと詳しい方法が分かるかも)あのヒバリさん・・・」



リボーンの言葉にハッとして、雲雀の方を振り向いた新奈だが、雲雀からは独特の不機嫌オーラを漂わせていた



「これ以上群れれば、咬み殺すよ」

「ふにゃァァっ!!」



雲雀は新奈の両頬を力の限り引っ張る



「もういい、帰る」

「ヒ、ヒバリさん!」



雲雀は足早にその場を去っていった










「みんな集まったな」

「では、雲雀の代わりは私が勤めますので」



医務室から談話室に移った面々はソファーや椅子に腰掛た



「(はぅぅ・・・結局、頬引っ張るだけ引っ張って帰るし・・・十年経っても変わってない)」



右手で頬を押さえたまま新奈は草壁の話しに耳を傾ける



「まずヒバードですが、黒川花の要請で我々が飛ばしました」

「え?花ちゃんからの?」



ヒバードのSOSの発信元に友人の名が出され目を瞬かせる新奈に草壁は笑みを浮かべ頷く



「そうです、笹川京子に対する黒川花からの救援要請です・・・
これは我々とボンゴレの取り決めでしって、ある経路からSOSがあった場合其の現場にヒバードを飛ばす事になっているんです」

「また何でそんな変わった方法で――・・・」

「予備の救援伝達システムだな」



新奈の横の椅子に腕を組み座っているラルの言葉に頷き草壁は言葉を続ける



「其の通り、普通の通信が困難な場合などに使われる予備のSOS手段の一つです」

「しかし、なぜSOS信号が神社で消滅したのでしょう?」

「恥ずかしながらバテリーの接触不良です」

「やはり故障でしたか・・・」



ジャンニーニの疑問にもすんなり答えた草壁にリボーンは先ほどから出ている気になる言葉を聞き返した



「それで『我々の組織』って言ってたがそれは何なんだ?」

「そういえば、このボンゴレのアジトに繋がってる様な秘密基地を持つ組織って・・・」

「平たく言えば、並盛中学風紀委員を母体とした、秘密地下財団です」

「まだ風紀委員関係してるんですか!?」



ビアンキに抱きつかれたままのリボーンから草壁に視線を向けた新奈の疑問に答えた草壁に新奈は驚きの声を上げた



「ニーナ姉に聞いた事があるよ」

「え?」

「ぁ、大人の方のニーナ姉ね
その財団では雲雀さんは匣の研究や調査をして、世界中を飛び回ってるって」

「匣の・・・?」



フゥ太の補足に新奈は首を傾げた



「此処から先は直接雲雀に聞いてください、雲雀はしばらく此処に滞在するつもりですので」

「本当ですか?」

「はい」

「ヒバリさんが居てくれるなら心強いです」

「私の話はこんな所です」



草壁からの雲雀の滞在に新奈は笑みを浮かべる



「大変だったわね、ニーナ」

「え?」

「リボーンから聞いたよ・・・僕達もニーナ姉達が過去に帰れるように協力するよ」

「今の所、貴女達と我々の目的にはいくつか共通点がある・・・我々も力をお貸し出来ると思いますよ」

「・・・ありがとう」



ビアンキ、フゥ太、草壁の言葉に新奈は瞳を閉じ静かに礼を口にした



「過去に戻る為には、ミルフィオーレの入江正一を倒せばいいのよね」

「え?えぇ・・・」

「ミルフィオーレは私の敵でもある・・・倒すのには何の躊躇も無いわ
それに貴女達が十年前に戻って過去が変われば、私の愛する人や
たくさんの仲間を失うこんな未来にはならないかも知れない・・・」

「ビアンキ・・・」



ビアンキの僅かに影を落とした表情に新奈は眉を下げる



「今日まで私達のしてきた事も役に立つはずよ」

「僕等は日本に居るミルフィオーレファミリーの情報集めをしていたんだ
ミルフィオーレには全部で17部隊あるんだけど、その中でもAランク以上の隊長は六名だけ・・・
そしてその中の二人が日本を任されてるんだ」

「γと・・・・・・入江正一か?」



顔を挙げ真っ直ぐ新奈を見返すビアンキ其の横に座るフゥ太の言葉にラルが口添えするとフゥ太は頷く



「そう、入江正一は日本支部に帰ってきてる」

「え!?(入江正一が、日本に・・・)」

「標的はすぐ側って訳さ」



日本に居ないと思っていた標的の存在をフゥ太に側に居ると告げられ新奈に緊張が走るがビアンキが笑顔で続ける



「良いニュースはそれだけじゃないわ、敵の日本支部アジトの入り口を突き止めたわ」

「敵のアジトの入り口!?」

「!?」

「本当か!?」



新奈だけではなく草壁、ラルからも驚きの声が漏れる



「灯台下暗しだったんだよ・・・同じ並盛の地下、並盛駅地下のショッピングモールだよ、その先に入江正一はいる」



「地下ショッピングモールって・・・駅に地下街なんて――・・・ぁ『ニーナさん!
並盛駅に地下商店街作る計画聞きました?今日までイベントやるんです!』そうか、十年前は建設計画中だったんだ・・・」



新奈にしてみればつい二日前の事、ハルの言葉を思い出した



「この情報の意味は大きいぞ」

「はい・・・」

「これで此方から攻め込める」

「けど、怪我人ばかりで戦力を考えても攻め込むのは無謀です」

「あぁ、今のオレ達の状態じゃ成功はしねーだろうーな
γとの戦闘でミルフィオーレの本当の恐ろしさはよく解ったはずだ・・・」



闘志を燃やすラルを新奈とリボーンが止めた



「入江正一もγと同じ隊長だってことはそう簡単に倒せる相手じゃねーぞ
それに敵はもう十年前のお前達の存在に気づいていると考えた方がイイ・・・
奴等はボンゴレであるお前達を狩るために血眼になってこのアジトを探しているはずだ
このヤバイ状況の中を生き抜いて日本支部の入江正一を倒せるかどうかは
お前達が短時間にどれだけ強くなれるかにかかっているんだぞ」

「(短時間で・・・強く!)」



リボーンの最後の言葉に新奈の瞳は揺れ目を釣り上げる



「守護者の情報収集は僕等がするよ、だからニーナ姉は自分の修行にだけ専念してよ」

「おまかせよ!」

「私が来たからには家事と京子達の事は任せなさい」



ランキングブックと同じエンブレムの入ったアタッシュケースを手に微笑むフゥ太

大きく胸を張るジャンニーニと自信に溢れる笑みを浮かべるビアンキ



「皆・・・ありがとう・・・・・・そうさせてもらうわ」


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