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標的76 守護者探し
「散り散りになった六人の守護者を集めるんだ」

「え?守護者を、集める?」



椅子から降り新奈達の前に立つリボーン



「オレ達がこの時代に来た事と、今ココで起こっている戦いは
無関係じゃねーはずだ・・・奴等に対抗するには守護者を集めるしかねー・・・」

「(確かに皆、心強いけど・・・)だけど、たった七人で何が――・・・」

「情けねーこと言うな、ボンゴレの長い歴史上、危機的状況は何度もあった・・・
だが、その度に歴代ボス達は困難を打ち破ってきたんだぞ、大空を守護する六人の仲間達と共にな」



守護者を含めての少数に不安気にリボーンに訊ねるが反論は許されなかった



「分かったな?んじゃ、守護者を集める段取りを決めるぞまず――・・・」

「ちょっと待って!さっき、私達の知り合いもボンゴレ狩りの的になるって
言ってたけど・・・それって、母さんや京子ちゃん達も入ってるの!?リボーン!!」



一番心配な武力を持たない友人や母の事に新奈はリボーンに強く問いかける



「ミルフィオーレが標的にする対象は広がり続けている、彼女達も恐らく・・・」

「そんな・・・皆戦えないのに、リボーン!」

「手はうってある」



山本の言葉に目を見開きリボーンに指示を求めると先手を打ったと告げられた



「俺がラルを迎えに行くと同時に、イーピンとランボが笹川とハルを探しに行ったのだ」

「あいつ等が?」

「ぁそうか、ランボとイーピン、こっちじゃ子供じゃないから・・・!」



頼もしい助っ人の存在に友人達の事で安堵するもリボーンの言葉で其れは崩れる



「それと・・・ママンだがなタイミング悪く、家光とイタリア旅行に行っていて、状況が掴めねぇ」

「イタリアって・・・!(ボンゴレ本部がある・・・)」

「十代目、確かボンゴレ本部は壊滅したって」

「まさか・・・母さん?」



目を大きく見開き涙を浮かべ震えを抑える様に自分の体を抱く新奈



「他の仲間だが、ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている」

「アネキ達は無事なのか!!?」

「だが、このニ日間で並盛に居る俺達の顔見知りは殆ど奴等に消された・・・」

「山本の親父もな・・・」



山本の言葉に補足するリボーンの言葉に獄寺と新奈は同時に山本を見返す



「そ、そんな・・・(そんな酷い事って・・・)っ!」

「十代目・・・!」

「(こんな、酷い未来・・・)ふぅ・・・・・・!」



ついに泣き崩れた新奈を獄寺が支え新奈はその胸にしがみ付き声を押し殺して涙を流す



「山本、ニーナを部屋に案内してやってくれるか」

「!・・・あァ」

「話はまた明日だ、ニーナ・・・ゆっくり休め、明日から忙しくなるぞ」



リボーンに返事を返す余裕もなく山本に支えられ部屋を出る新奈



「獄寺、ちょっと残れ」

「え?ぁ・・・はい」



追随するつもりだった獄寺はリボーンに止められ小さく震えている新奈の背を見送る



「あの・・・リボーンさん、何か――・・・?」

「茶ァ淹れるから持って行ってニーナに飲ませろ」

「・・・分かりました」

「寝るまで一人にするなよ、あいつ結構自虐的な性格だからな」



手早く茶を淹れるリボーンを眺めながら待つ獄寺だが

リボーンが最後に何か薬を入れたのを目撃し焦り声を上げる



「リ、リボーンさん!!?何入れたんスか!?」

「ニッ」



妖しく笑い獄寺に紅茶を差し出すリボーン

其れを震えた手で受け取るが紅茶を凝視したまま動かない獄寺



「安心しろただの睡眠薬だ」

「え?睡眠薬?」

「泣き疲れて寝るかもしれねーが、コレだけ環境が一気に変わると
眠れねーかもしれねェからな・・・守護者探しに支障をきたしたくねーんだ」

「分かりました、十代目の部屋はどちらに?」

「その前に濡れタオル用意してけ、絶対必要だからな」

「?・・・分かりました」



口答で新奈の部屋への道順を指示すると流石は獄寺一度で覚え直ぐに部屋を出た










廊下を無言で進み新奈の部屋の前で扉を開け中へ促す山本

新奈の涙は止まってはいたが、瞳は潤みっぱなしだった



「ニーナ、この部屋だ・・・一人部屋だけど良いよな」

「・・・・・・」

「・・・大丈夫だって、イーピン達は頼りになるし、おばさんにはおじさんが付いてるし・・・
信じて待ってれば吉報があるさ・・・・・・じゃあゆっくり休めよ、おやすみ」



新奈の頭を優しく撫で踵を返す山本を見送り新奈はベットに腰を掛け涙が一筋頬を走る



「(山本君・・・笑ってくれた・・・お父さんが亡くなって辛いはずなのに・・・)
私・・・情けない・・・泣いてばかりで・・・・・・まだ判らないじゃない皆の安否なんて
(諦めるな・・・泣くな!お願い、止まって・・・泣いちゃ・・・ダメ!!)っ・・・」



涙を止めようと拭っても後から後から溢れ止まらない、目を擦っていると

部屋の戸が叩かれ新奈が返事を返すと開けられ、獄寺が控えめに入ってきた



「失礼します十代目・・・」

「獄寺君・・・ごめんなさい、私泣いてばっかりで」

「いいえ!ああ、目を擦らないでください、腫れますから」

「・・・っうん」

「ぁ、このタオルで目元を冷やして寝てください少しマシかと」

「!ワザワザ持ってきてくれたの?ありがとう」



リボーンに言われて用意したタオルを新奈に差し出し受け取り、礼を言われると



「いいんスよ、そんな!(お役に立てた・・・ありがとうございますリボーンさん)」



慌てて首を振り持って来た紅茶を新奈に差し出す



「十代目・・・リボーンさんがお茶を淹れてくださいました・・・飲んでください落ち着きますよ」

「・・・うん、ありがとう」



静かにリボーンの淹れた紅茶を飲む新奈・・・獄寺はそれを少々不安気に見つめる



「横になってください、十代目・・・オレ、寝るまで側に居ますから安心してください!」

「!・・・リボーンに何か言われた?」



飲み干したカップを獄寺が受け取り寝るよう促されると新奈の顔に薄い笑みが零れる



「っ!?いいえ、何も!」

「ありがとう、獄寺君」

「恐縮です!!(幸せだ!涙を止めてくださった!!)」



新奈の微笑みに満面の笑みで返事を返す獄寺に

新奈は笑い声が漏れたが新奈の体が急に傾き獄寺は慌てて支える



「じゅ、十代目大丈夫ですか!?」

「・・・ぁ、ごめん・・・安心したからかな?なんか、急に・・・眠気、が・・・」

「ぅ”・・・(睡眠薬が効いてきたんです・・・)」



獄寺は良心が痛み新奈から顔を背ける



「わた、し・・・寝る・・・ね」

「あ、はい!ゆっくり休んでください、十代目・・・」



新奈を横に寝かし毛布を掛ける獄寺に

新奈は最後に小さな声で途切れ途切れに「ありがとう」と告げる

やや腫れている其の目にタオルを乗せ、眠った新奈を確認し

カップを手に新奈の寝顔を背に獄寺は部屋を後にした










翌朝、目が腫れることもなく少し憔悴しているようだが、笑みを浮かべている新奈に

獄寺は安堵の息を吐き元気に挨拶し昨日の指示された部屋へと共に向かった



『今はニーナ達にお前の力が必要なんだ、考え直せねーのか?』

『お前と山本がいれば充分だぜ、断る』

『コロネロの敵を討つ気だな』



扉の向こうから聞こえる声に二人は顔を見合わせ再び扉に目を向けると扉が開きラルが出てきた



「っ!よぉ・・・」

「えっと、あの別に聞いていた訳では・・・」



二人の声を無視してそのまま間をすり抜けていくラルの背を見送り新奈は眉を寄せる



「(コロネロの、敵・・・?)」

「イイから、入って来い」



いつもの黒スーツに身を包み声を掛けるリボーンに振り返り部屋へと入る新奈と獄寺



「おめー等よく眠れたか?いよいよ守護者を集めるミッションをスタートさせるぞ」



其の言葉に不安を抱えたままだと言わんばかりの新奈にリボーンは一喝



「いつまでも京子達の心配したて始まんねーぞ、守護者を集める事が最終的に京子達を守る事になるんだ」

「大丈夫っスよ、十代目!
アホ牛はともかくイーピンは結構やります!きっと無事に帰って来ますよ」

「獄寺君・・・」



獄寺の笑顔に釣られ笑みを浮かべ頷く、其れにリボーンも口角を上げる



「んじゃ始めっぞ・・・あれから山本と話し合ったんだが最初に欲しい守護者は即戦力・・・つまり強えー奴だ」

「強いって言ったら・・・」

「そうだ、ボンゴレ十代目最強の守護者、雲雀恭弥だ」

「まぁ、俺がここにいるし、残りの守護者ん中じゃ最強っスね…」

「(張り合わなくてイイよ、獄寺君・・・)ヒバリさん、今は何処に?」

「それがよく分からねーんだ」



リボーンの言葉に新奈の目に不安の色が現れる



「俺も並盛をしばらく離れてて
守護者の皆が何処にいるのかは・・・でもヒバリの手掛かりはある、コイツだ」



山本から差し出された手紙はテーブルを滑り新奈の前へと流れる

丸くてふわふわした黄色い鳥の映る写真



「?これって」

「この鳥は・・・」

「ヒバリさんと一緒にいた・・・」



写真を受け取り除く新奈を獄寺



「ヒバードっていうらしいぞ」

「(誰が名前つけたの!?)」

「そいつを探すんだ」

「!?手掛かりってこの鳥だけなの!?」



いつも通りの新奈の調子にリボーンは多少安堵する



「ヒバリの性格を考えれば
この町を遠く離れるとは思えねェ・・・人一倍並盛が好きだからなアイツは」

「まぁ、そうでしょうね」

「オレはいけねーが、しっかり連れて帰って来い」

「行けないって、リボーン、そんなに外だと体調酷いの・・・?」

「余計な心配すんな」



やはり不安なのか眉を下げる



「情けねー顔すんな・・・
代わりに山本がついてるぞ、コイツはこの時代の戦い方を熟知しているからな」

「そう・・・だけど」

「なーに、ビビるこたぁないさ・・・
お前達はこの時代の俺達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか」

「失った?」

「すんげー力・・・?」



山本の言葉に首をかしげる言葉を繰り返す獄寺と新奈



「そうさ・・・お前達は希望と共に来てくれたんだ、ボンゴレリングっていうな」



其の言葉に思わず驚きの声を漏らすが早速行くと出口へと案内された










入って来た場所とは違う出入り口から出ると外から射す日差しに目を細める新奈



「此処は・・・」

「五丁目の工場だ今は廃墟だけどな」

「ここ・・・潰れたのね」

「六つある入り口の一つは此処に出るんだ・・・とりあえず並中に行くか」



周囲を見回し廃工場を見回し呟いた言葉に前を歩く山本が答え新奈は獄寺と並び其の背を追う



「おい山本、ボンゴレリングが希望ってどーゆーことだよ!!」

「ん?」

「失ったとか言ってたじゃねーか、何でボンゴレリングがこの時代にねーんだよ!」

「あー、その話な・・・だいぶ前にリングを砕いて捨てちまったんだ」



獄寺が山本に眉を寄せ尋ねると山本はすんなりと答え其の答えに二人は驚愕し足を止めてしまった



「え!!?」

「なっ!?捨てたー!!?」

「あんなに苦労して手に入れたリングを!?」

「誰がそんな事したんだよ!!」

「うちのボスさ」



同じく足を止め二人を見やり答える山本に二人は再び声を上げる



「っな・・・!」

「それって!!もしかして・・・!!」

「じゅ、十代目が!!?」



絶句する二人を置いて山本は背を向けたまま言葉を続ける



「守護者には反対する奴もいたんだが、そりゃーもーニーナの奴譲らなくてな」

「・・・私、何でそんな大それた事を?(ボンゴレの至宝だったのでは・・・)」



困惑する新奈に笑みを向け再び歩き出す山本に二人もまた足を進める



「あはは、お前にも分かんねーか・・・ニーナがボンゴレリングの破棄を
口にするようになったのはマフィア間でリングの奪い合いが始まった頃なんだ」

「リングの?」

「奪い合い・・・」

「戦いの火種になるぐらいなら無い方がいいと思ったんじゃねーか?」



山本は憂いをおびた瞳で新奈を見ると再び前を向く



「お前はそういう奴だ・・・ボンゴレの存在自体にすら首を傾げていた程だからな」



獄寺と新奈は山本の背を何とも言えず見つめる



「つっても今じゃ、俺達もリングに頼ってる部分がデカいんだけどな・・・」



山本の言葉を遮る様に前方で爆音と土煙にそちらに目を向け山本は刀を肩から下ろし前を見据える



「こっちです!」

「急いで、早く!」

「っ!あれは・・・ランボにイーピン!!」



爆煙の中に見た背と聞き覚えのある姿に新奈は二人の名を呼んだ



「早く!こっちに!!」

「誰かを連れてるな」

「っ!?まさか・・・」



山本の言葉にイーピンが声を掛けている煙の向こうの人影を見つめる



「っ!京子さん、ハルさん、逃げて!!ここは私が!!」

「やっぱり!」

「きゃあっ!!」



イーピンの言葉に駆け寄ろうとしたがイキナリの上空からの攻撃で再び土煙が舞う



「っ!皆・・・!」

「上か!!」



悲鳴に反応する新奈は獄寺の言葉で咄嗟に先程爆破の原因たる攻撃を放った敵へと目を向ける

赤い死ぬ気の炎を足に宿し宙を飛ぶ二人の黒服の男達の姿に山本の目つきは鋭くなる



「とどめを刺して来い」

「任してよ、兄貴」



褐色の肌の体格の良い炎を宿した鎌を手にした男と、長髪の小柄の少年・・・



「ミルフィオーレのブラックスペル!」

「・・・?ブラックスペル?・・・ぁ、京子ちゃん達は!?」

「いくぜ!ボンゴレリングからマモンチェーンを外せ!」



山本は敵から目を逸らすことなくチェーンを外し新奈と獄寺に指示を出す

言われた通り二人はリングからチェーンを外し山本について爆煙へと駆け出す



「うわあああん!!」

「へへっ、獲物が一匹、二匹・・・」

「っ・・・此処は私が!ランボは、京子さんとハルさんをお願い!!」

「その体じゃ無茶だよ、イーピン!!」

「いいから早く!」



泣き喚くランボを尻目に敵長髪の声に素早く立ち上がりランボに強い口調で指示するイーピン



「じゃぁオイラが貰う!手ぇ出すなよ、太猿兄貴」

「しっかりやれよ、野猿」

「へへー」



野猿はリングに炎を灯し匣に炎を注入し太猿と同じ大鎌を取り出した



「じゃあいくぜ!オイラの獲物達!!ショアッ!」



振り下ろされた鎌から刃のように炎がランボ達を襲い土煙が派手に上がった



「弱ったところを狩ってくらあ!!そこのカゲ、首いただき!」



上空から一気に煙の中へと突っ込み視界に入った人影に鎌を振るが

金属音が響き晴れた視界には先程は居なかった刀を持った剣士が野猿の鎌を防いでいた

その光景に、太猿、イーピン、ランボが目を見開く



「なっ!?・・・兄貴、コイツ誰だ?」

「ターゲットリストに載ってたかもしんねーが・・・消えてく人間をいちいち覚えちゃねーな」

「だよな!!」



野猿は次々と鎌を振り下ろし攻撃するも、山本は難無く其れを流していく



「何だコイツ!?オイラの攻撃を!!」

「行くぜ・・・!」



野猿の攻撃が怯んだところで山本の眼光が鋭く光りリングに灯った炎が刀に伝う



「時雨蒼燕流 八の型・・・」

「離れろ、野猿!!」

「っ!!?ギャア!!」

「篠突く雨!!」



山本が構えると太猿が叫び其の声に野猿は咄嗟に身を引くも山本の刀は右から左へと振られる



「浅いか・・・」

「いつつ、あっぶねーっ!」

「ボンゴレには二大剣豪がいると聞く・・・・・・よもや、あいつ」



手応えの無さに山本は眉を寄せ宙へ逃げ体勢を立て直す野猿を見やる、其の光景に太猿は呟いた



「みんな大丈夫!?」

「しっかりしろ!!」

「ボ、ボンゴレ!!獄寺氏も!」



駆け寄る新奈と獄寺の姿にランボとイーピンは笑みを浮かべる



「だから言ったじゃないですか」

「「っ?」」

「絶対、ニーナさん達が助けに来てくれるって」

「「(十年後のハル―――・・・!?)」」



煙から姿を現したショートボブの女性・・・獄寺の身長を超える程度まで成長したハルの姿に新奈と獄寺は唖然



「(ハル・・・凄く女っぽくなってる!)」

「はひ?何だかハル、急に背が伸びたみたいです!」

「「(中身変わってねェー!!)」」



女性的ハルに驚くが中身の変化の無さに二人は肩を落とす



「しゃらくせー!よくも兄貴達と揃いのスーツ破いたな!ショアッ!!!」



再び鎌を振り攻撃を仕掛けてくる野猿に、山本は匣をを取り出し素早く開匣する



「んだとぉ!?」

「水のバリア」

「っ!!」

「凄い・・・」



開匣された匣から水が勢いよく溢れ盾の様に山本達を護る、野猿、太猿、獄寺、新奈は其れに見入る



「お前達、よく覚えとけ」

「「っ?」」

「リングには、この匣ってのを開ける力がある」

「あ、そーか!コイツに開いてる穴はそーやって使うんだな!」



山本が匣を見せると獄寺は思い出したように苔むした匣を取り出し匣を確認する



「お前、それ何処で・・・?」

「十年後の俺のカバンに入ってた」

「そーいやアイツ、スゲーの手に入れたって・・・」

「お前ばかりにイイ格好はさせないぜ!・・・ぁん?何も起きねーぞ・・・」



山本に倣い獄寺もリングを匣に差し込んむが何も起きず山本は軽く笑う



「テメー何がおかしーんだよ!!」

「人間の体ってのは、血液だけでなく目に見えない生命エネルギーが、波動となって駆け巡ってるんだ」

「?」

「生命エネルギー?」

「波動は七種類あってなリングは自分の素質と合致した波動が通ると反応し、それを高密度エネルギーに変換して生成する」

「それって・・・!」



右手のリングを見せ青の炎を灯す山本に新奈は目を瞠る



「そう・・・死ぬ気の炎だ!!」

「んだありゃ・・・?」

「っ・・・ツバメ?」



山本は新たな匣を取り出しリングを差し込むと炎を纏っている燕が野猿に飛んでいく



「なんだこの小っけーのは!・・・っ炎が!?うわっ!コイツ、炎を消しやがる!!」

「やはりアイツは、ボンゴレの雨の守護者だ」



その燕は、野猿の回りを飛び回り炎を徐々に消され叫ぶ野猿、太猿は山本が守護者だと感づき警戒を強める



「あ、あれ!?」

「どうしたの、イーピン?」

「大変、京子さんがいない!!」



イーピンの言葉に上空に向けられていた視線は周囲に移されたが辺りに京子らしき人影はない



「そ、そういえば・・・」

「もしかしたら・・・さっきの爆風で・・・!」

「そんな・・・!」



ランボも京子が居ないことを思い出したかのように呟き眉を下げるイーピンに新奈は不安を募らせる



「まだ決まってねーぜ!探しに行け、ニーナ!敵はこっちで引き受けた!!」

「う、うん!分かった!」



山本の言葉に弾かれたように動き全員を背に駆け出す新奈其の光景に傍観していた太猿が笑みを浮かべる



「くそっ素早しっこい!!」

「前言撤回だ野猿・・・手は出さんつもりだったがな、くだらん雑用任務に転がり込んだ久々の大物だ、見逃す手はねぇ」

「ずりーぞ兄貴!アイツはオイラの獲物だ!他のは譲るからよ!」

「分かった、待っててやるよ・・・俺が他の連中を片付けるまではな!!」



その言葉と共に太猿の鎌から放たれた炎は、新奈へと向けられ其の軽い体は吹き飛ばされ工場の中へと放り込まれる



「っ!あぁっ!!?」

「ニーナ!」

「十代目!!」










窓を突き破り廃工場内へと放り込まれた新奈は砂利をクッションに軽傷だった為直ぐに起き上がる



「痛っ・・・・・・皆・・・山本君が居る、大丈夫・・・大丈夫!私は、自分の出来ることを!」



自分に言い聞かせるように立ち上がり周囲を確認し探している友人の名を叫ぶ



「京子ちゃ――ん!!京子ちゃん、何処ォ!!」



走りながら不安が募っていき歯噛みする新奈



「(今の私みたいに飛ばされたのなら怪我とかして動けない可能性も・・・!)京子ちゃん!」



荒れ果てた部屋などを覗き人影がないと分かると再び別の場所へと駆け出す



「(お願い、無事なら返事して!)京子ちゃん!・・・はぁはぁ、きょう、こ・・・ちゃん?」



京子の心配をしているを瞳に涙が浮かぶが気にせず探す別の部屋へと入ると

其処には髪の長い女性が座り込んでおり新奈の声に顔を上げ見返してきた



「「・・・・・・」」

「京子、ちゃん?」

「ん?」



首を傾げるその姿に十年前の友人と重なり安堵の息を吐き新奈は軽く涙を拭う



「にーちゃん?」

「・・・・・・え?」

「ありがとう、来てくれたんだね、にーちゃん」

「(にーちゃんって何――・・・!!?)」



十年前からは想像も出来ない呼び方に羞恥を感じ新奈の頬に血液が集まり固まる



「ごめん、私・・・足挫いちゃって・・・」

「え!大丈夫!?」



新奈は慌てて駆け寄り京子の足を診る



「あれ?何だろう・・・にーちゃん何か幼くて懐かしい感じがする!」

「っ・・・それは・・・・・・(十年前の子供ですから・・・)」



やはり近くで見ると十年の差を互いに感じてしまい焦る新奈・・・しかし背後からの声に弾かれるように其方を見る



「取りこぼしは無しだぜ」



先程外で傍観を決め込んでいた体格の良い褐色肌の男、太猿が鎌を構え宙で笑っていた



「なぁにすぐ済む・・・メインディッシュの雨の守護者を待たせらんねーからな」

「っ・・・」

「大丈夫、さがって!」

「ふんっ、やる気か・・・?」



恐怖に怯える京子を背に隠し太猿を睨む新奈



「っ・・・!」

「にーちゃん」



京子は新奈の服の裾を掴むと其処から微かな震えが伝わる



「させない・・・(例えボンゴレを壊滅寸前に追い込むほどのファミリーでも私の大切な友達は・・・)絶対護る・・・」



新奈は其の手に死ぬ気丸の小瓶を取り出す



「どうした嬢ちゃん、震えてるぞ」

「にーちゃん・・・」

「・・・大丈夫・・・大丈夫だから――・・・え!?」



太猿、京子の声に気持ちを落ち着かせ、小瓶の蓋を開けようとすると背後から聞きなれた爆音に振り返るすると其処には



「ん?・・・ニーナちゃん?」

「っえ?・・・えぇ―――!!?」



十年前の友人の姿に新奈は何が起きたか理解できず目を瞠り固まる



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