[携帯モード] [URL送信]
標的75 アジト
言葉を失う新奈達にラルは再び背を向ける



「急げ」

「十代目、立てますか?」



獄寺に促され無言で立ち上がりラルの背中を追う、其の足取りは段々と速くなり

ラルに追いつく頃には駆け足になっていた、二人は黙ってラルの背を見失わぬよう走り続けるが

新奈の頭の中には先程告げられた言葉がずっと渦巻いていた



"リボーンも・・・・・・いない"



「(リボーンがいない・・・あのリボーンがっ・・・・・・リボーン!)」

「(十代目・・・)」



一心に自分の前を走る新奈の背に獄寺は視線を向け走り続ける



「っ!?」

「大丈夫ッスか十代目?」



サンダルは新奈は大きかったようで引っかかり片方脱げてしまった

其れを拾い新奈の足元に持っていく獄寺は息を切らす新奈の汚れた足を見て顔を顰める



「チッ、あのクソアマ!」

「大丈夫、急ぎましょう・・・」

「・・・っはい」



サンダルを履き直し控えめな笑みで獄寺に促すと薄っすら汗を浮かべる新奈に獄寺は頷くしかなかった



「・・・おい、女!少し休ませ――・・・!川ッスよ十代目!水が飲めます、休憩しましょう」



新奈の横を走りラルを見つけると同時に視界に川を入れ新奈と共に川縁に腰を下ろす



「お先にどうぞ」

「ありがとう・・・(冷たい・・・)・・・ふぅ」



水に手を付け頬を緩ませ掬い喉へと流し込み息を吐く新奈に獄寺も安堵したように自身も水を飲む

そのやり取りを尻目に、ラルはマントの裏に隠し持つ箱の一つを手に指輪の一つの鎖を解き

其れを穴へと差し込み箱を開け中から小さな炎を宿した小さな気球を宙へと放す



「おい!どれだけ走らせんだよ!!アジトはまだなのかよ」

「今日はここで野宿だ」

「な!?」

「・・・野宿?」



水を飲み落ち着いた獄寺と新奈はラルに向き直り訊ね其の返答に困惑する



「闇で目が効かないお前達と動くのは危険過ぎる・・・まったく、いい迷惑だぜ」

「テメー、調子乗ってんじゃねーぞ!」

「それは俺の台詞だ」



淡々と告げられる言葉に青筋を浮かべる獄寺、ラルは武器を向け黙らせる



「俺は自分の飯しか用意してないぜ、自分達の分は陽のあるうちに取って来い」

「え・・・?メシを取るって・・・・・・あの、その前に話しだけでも―――・・・」

「そんな時間はない」



頬を引き攣らせる新奈の言葉を一喝



「チッ・・・行きましょう、十代目」

「え?ぁっ・・・」



ラルに背を向け新奈の手を引き森の中へと戻る獄寺に困惑しながらも足を動かす新奈



「十代目・・・」

「ん、何?」

「スイマセン!!俺がいながらあんなヤツをのさばらせて!!」

「っちょ!?獄寺君!」



ある程度歩いた所で突然地面に頭を打ち付ける様に土下座する獄寺に新奈は慌てる



「でも、アジトに着くまでの辛抱スから!」

「え・・・?」

「何の証拠も無いリボーンさんの話で十代目を脅しやがって・・・!ホントに胸糞悪い女ッスよ!」

「・・・脅し?」



獄寺の言葉に静止の為に差し出していた手を握る新奈



「私・・・リボーンは本当に死ん――・・・」

「そんなはずありません!忘れたんスか?無敵のリボーンさんですよ!!」

「そう・・・かな?」

「えぇ、きっと無事ですよ」



言葉を遮る様に立ち上がる獄寺



「ただ今は、ヤツについて行くしか手掛かりがないのも確かです・・・!大丈夫、リボーンさんは生きてますよ!」

「そ、そうね・・・何だかそんな気がして来た!」



獄寺に笑みを向けられ、控えめな笑みを浮かべ頷き笑い合う



「それにしても・・・私達いつまでこの時代にいるのかな
過去に戻りさえすれば、こんな事にはならないんだろうに・・・・・・」

「十代目・・・」



周囲を見回しながら呟く新奈に声を掛けようと口を開く獄寺を泣き声と羽音が遮った



「っ!!?」

「!・・・鳥ッスね」

「・・・―――と、とりあえず急いで食べ物探そうか!」

「そーッスね!手分けして探しましょうか?」

「え・・・う、うん・・・」



恐がりな新奈は顔色を悪くしつつも獄寺の案に頷き二人は二手に別れた



「森で食べられる物なんて、分からないんだけど・・・何を探したら良いんだろう」



身を縮めながら歩き周囲を見回す新奈

サイズの合わないサンダルに足を取られ躓き地面に手をつけた



「うわっ!痛っ・・・ん?」



目の前には茸の群れ



「キノコ?コレ・・・食べられるのかしら・・・?
(取り合えず歩く図書館な獄寺君に聞いてみるか、採っていこう)」



新奈は目の前で群生している茸を両手に抱えられる程度に採取し戻るために踵を返す



「ぁ、獄寺君」



しばらく歩いた所で立ち尽くしいてる獄寺を見つけ声を掛け獄寺はイキナリの声に肩を震わせる



「キノコを見つけたんだけどコレって食べられ―――・・・」

「ああ・・・じゅ、十代目ぇ!!静かに!」

「え?・・・っわ・・・っ!!」



慌てて新奈の口を塞ぐ獄寺それに驚きよろけ、二人は共に池へと落下



「ぶっ!ごほっ、ごほっ・・・」

「ぷは・・・だ、大丈夫スか十代目!!」

「な”、なんとか(器官に入った・・・)」

「ガキ共が」

「「っ!」」



水から顔を上げ咳き込む新奈に慌てる獄寺、そんな二人に向けられた声に振り向くと

ラルが呆れた様に溜息を吐き堂々と立っている全裸で・・・二人は一瞬固まり



「っ・・・な・・・うがっ!!」

「獄寺君!?ラルさん!せめて隠してください!!そんな堂々と・・・」

「ガキに見られても問題ない」

「思春期の子供に見られるのは問題です!!幼児じゃないんですよ!!」



鼻血を出し倒れる獄寺を沈まぬ様に支え取り合えず目を隠し頬を染めラルに抗議する新奈



「獄寺君しっかりして!」

「っ・・・十代目ェェ!!?・・・っ」

「え?ちょっ・・・獄寺君!!?」



水辺まで運びなんとか陸に上がり獄寺の頬を軽く叩き起こすが新奈を見た途端再び鼻血を吹き倒れた



「・・・・・・取り合えずお前は服を乾かせ風邪を引くぞ」



新奈の白のインナーは水を含み肌に張り付き下着が見えていたことに

ラルは再び溜息を吐き乾かすよう指示、未だ獄寺の心配をしている新奈はまったく気づかず

取り合えず服を脱ぐといつの間にか服を着たラルがマントを投げてよこした



「えっと・・・あの?」

「下着だけでいたいなら返せ」

「・・・・・・お借りします・・・」



ラルのマントで体を覆い使えそうな木の蔓を引っ張り自分の服や髪を解き絞って乾かす

服のポケットからハンカチを取り出し水気を絞り獄寺の目元に宛がうと獄寺は勢いよく起き上がった



「っ!!?ご、獄寺君大丈夫?(吃驚した・・・)」

「っ!スイマセン十代目!!(十代目をなんて目で見てんだオレは!!)」

「イイのよ気にしないで(獄寺君も男の子だし・・・ラルさんプロポーションいいし・・・)」



双方の意思疎通にやや誤りがあるようだが互いに通じているらしい

ラルは焚き火の用意をし終えると二人に顔を向ける



「おい、お前等メシはとれたのか?」

「あ・・・さっき池に・・・」

「はぁ・・・魚が多く捕れた、余った物を勝手に食べろ」

「え・・・・・・(コレがハル達が言ってたツンデレ?)」

「・・・何だ、多く捕れただけだ、勘違いするなよ!」

「はい・・・(優しい人だ・・・)」



ラルの言動にやや人間性を感じた新奈・・・



「獄寺君、そのままじゃ風邪ひくから服乾かそう?」

「あ、はい!」



獄寺は上着とトレーナーを脱ぐと新奈は其れを蔓に引っ掛け干す










すっかり日も沈み辺りは暗くなり三人は焚き火を囲って食事をとる

ラルに魚を貰った魚を手に新奈と獄寺並んで座る獄寺はラルの方を見れない



「・・・良かったね、ラルさんの魚分けてもらえて」

「そう・・・ッスね・・・・・・」

「・・・・・・」

「ん?」

「(参ったぜ・・・・・・目が合わせらんねェ・・・)」



女性二人からの懸命に視線を逸らす獄寺に新奈は哀れむようにラルは首を傾げ見やる



「あの・・・貴女は私達の事を何処で」

「・・・」

「(また、無視される?)」

「お前達の事は、写真で見た事しかない・・・」



その言葉に、獄寺はようやく顔を上げ新奈と共にラルを見る



「だが、十年バズーカの存在と面影で何者か識別出来た・・・時間が出来た、知っている事を話してやる」

「本当ですか!?」



新奈は思わず前に乗り出すがラルはそのまま話を続けた為再び腰を降ろす



「俺はボンゴレ門外顧問の組織に属している」

「門外顧問って・・・父さんの?」

「じゃあ・・・お前、味方なのか!?」

「あぁ、そういう事だ・・・
緊急事態が発生した為、十代目ファミリーの状況を調べる命令を受けてやって来た」

「緊急事態・・・?」

「そうだ・・・ボンゴレ本部は壊滅状態に陥った」



新奈はラルの言葉を繰り返しラルの表情は険しく、そして返された言葉に新奈と獄寺は目を瞠る



「今のところ本部の生存者は0名、九代目も行方不明・・・
急遽門外顧問のチームが救援に向かったが消息は途絶えている・・・・・・」

「っ!?・・・・・・」

「騙されないで下さい、十代目!!」



動揺する新奈は獄寺の怒鳴り声に立ち上がる獄寺に目を向ける



「こいつの言う事はデタラメです!あのボンゴレが壊滅なんてするワケねぇ!!」

「十年前ならな・・・」

「「っ?」」

「だが、この時代にはボンゴレを壊滅させる程の力を持つファミリーがいる
ミルフィオーレファミリー・・・ボスの名を白蘭」



落ち着き払ったラルの言葉に新奈はこの時代に来て直ぐに聞いた言葉を思い出す



「っ!・・・ビャクラン、十年後の獄寺君が言ってた――・・・(やっぱりこの人の言葉は嘘じゃない・・・)」

「この時代、戦局を左右するのはリングと匣だ・・・その威力はよく見ただろ」

「リングとボックスって指輪と、その腰の箱ですか?」

「あぁ・・・元々リングは闇の世界を生きるマフィア達の象徴と思われてきた・・・
だが、沈黙の掟、オメルタに守られて来たマフィアのリングには人知を超えた力が宿っていたんだ・・・」

「・・・・・・」

「ミルフィオーレはリングと匣の力でボンゴレをも圧倒した」



新奈は自分の首から下げているボンゴレリングと掴み見つめる

上空に浮く気球が僅かな火の粉を出し、其れに気づいたラルの速さは迅速だった

新奈に乾いた服を投げつけマントを剥ぎ取り手元の砂袋から砂を焚き火に掛け其の火を消す



「っ!!?何やってんだ!!」

「敵だ!奴等は強い、見つかったら終わりと思え!早く服を着ろ」

「っはい・・・(驚いた・・・)」



突如光が消え目が慣れていなかったが

慣れた自分の服を急いで着る新奈、獄寺も直ぐに服を身につけ

ラルの誘導で近くの岩に身を潜める



「あの・・・敵って、さっき言ってたミルフィオーレ―――・・・」

「しっ」



新奈の言葉はラルに遮られる直後、重音な鈍い足音が三人の元まで響いてくる



「あいつは偵察だな・・・下手に動かず、このままやり過ごそう」



重い足音に新奈は不安気にラルと見やると小さく囁かれ無言で頷く



「っ!?あいつはヴァリアーの・・・」

「ゴーラ・モスカ?」



獄寺と新奈は岩影からそっと顔を覗かせ足音の主に驚く



「ストゥラオ・モスカ・・・ゴーラ・モスカの
ニ世代後の機体だ、軍は、ボンゴレ以外にも機密を売ってやがったんだ・・・」



鈍重な動きを止め新奈達の方にゆっくりと首を動かしたため慌てて首を引っ込める



「こっち向いたぜ!」

「大丈夫だ、アイツは内蔵されたセンサーで
リングの力を探知し反応したものを攻撃する・・・俺達のリングの力はマモンチェーンで封じられているからな」



慌てる獄寺に冷静に右手のリングを見せるラルだが

次の瞬間モスカのセンサーの音が聞こえ其の足は真っ直ぐと三人に向けられた



「おい、こっちに来るぞ!」

「気づかれた!?」

「バカな!!お前達、ボンゴレリング以外のリングは持っていないな!?」

「あぁ」

「私も・・・ぁ」



ラルの焦る声に新奈は思い出したように内ポケットに入れたままの指輪の存在を思い出し取り出す



「ランチアさんに貰ったリング・・・」

「そのリングは・・・!何故話さなかった!!」



新奈の出したリングを見て一喝するラル、獄寺は素早くダイナマイトを構える



「へっ、弱気じゃねーか・・・あんなヤツ三人で掛かれば―――・・・」

「三人でも倒せる相手じゃない!全滅だ・・・!」

「自慢のリングで何とかできねーのかよ!!」

「戦いは力だけではない!相性が重要なんだ!!」



挑発するように言う獄寺に、ラルは更に怒鳴り向けられたモスカの手に歯噛みする



「アジトまであと僅かという所で・・・!くそっ!」



マモンチェーンを外し左の武器に炎を注入するとラルは前に飛び岩の上で構える



「っなに!?」

「俺が時間を稼ぐ、早く逃げろ!」

「そんな・・・ラルさん!」



ラルの言葉に戸惑う二人

突如モスカの背後にから現れる素早い黒い影と金属音に目を瞠り三人は動きを止める



「「っ!!?」」

「(衝撃波!?)」



驚くラルの前に黒い影は刀を携え其方へと見返っる



「鮫衝撃 アタッコ・ディ・スクアーロ 、こいつで一分は稼げるはずだ・・・助っ人とーじょーっ」



いつも見慣れた姿ではなく長身の其の男の面影に獄寺と新奈は目を瞠る



「ま、まさかお前・・・・・・」

「や、山本君!?」

「あれ?悪い冗談じゃ、ねーよな・・・
門外顧問のトコの使者を迎えに来たらお前達までって・・・・・・ん?」



駆け寄り確認するように名前を呼ぶと相手も少々困惑したように確認してくる



「でも縮んでねーか?幻・・・?妖怪か?」



その発言でニ人は確信する



「(やっぱこの人山本君だ―――・・・!!)あの、私達、十年バズーカで過去から来て――・・・」

「あァ・・・そっか昔の!」

「え?」

「あはは、焦ったぜ・・・どうりでな、元気そうだなニーナ」



新奈が説明することなく状況を理解した山本はやや複雑そうな表情で新奈を見る



「ぇ・・・うん」

「・・・」

「とりあえず行こーぜ・・・こんな奴、相手にするだけ損だ」



獄寺は不満そうに山本を睨むが其れを気にした様子もなく歩き出し先を促す



「っ!?」

「(山本君・・・そんな事知ってるんだ、それに・・・さっきの技はスクアーロの)」



山本に続いて、三人も歩き出しアジトへ向かった










「あはは、そっか、十年前って言えばリング争奪戦が終わった頃か」

「うん」

「懐かしいな・・・」

「(何だか不思議・・・いつもの山本君を話してる感じ・・・)」

「あれから色々あったんだぜ」



哀愁を帯びた山本に新奈は首を傾げる



「この十年間、お前はそりゃー凄かったんだぜニーナ!!」

「ん?」

「っ!!」

「獄寺、お前もな」



山本が新奈の頭上に腕を乗せると其れに獄寺が反応し山本はそんな彼を振り返る



「おい、走らないのか?歩いていては朝までかかるぞ」

「そっか、言ってなかったな・・・お前の知ってるアジトの場所の情報はガセなんだ」



前を歩いていたラルが歩みを止め振り返ると山本は思い出した様に新奈から離れ先頭を歩き出す



「悪りぃもうそろそろだな・・・俺を見失わないように、ついて来てくれ」



右手のリングからチェーンを外し、匣の穴に差し込むと

青い炎を帯びた何かが山本の周囲を飛び回り強い風が巻き起こる



「っな!?」

「何!?」

「防犯対策のカモフラだ、余所見はするなよ」



山本が告げると新奈の鼻頭に冷たい雫が落ちてきた



「え?・・・雨?」



上空を見上げると段々と激しくなる雨に手で防ぐように目上に持ってくると痛いぐらいの大雨が降り注ぐ



「うわっ!」

「何でイキナリ!!?」

「(雨属性の匣か・・・)」

「いてて!なんも見えねぇ!!」

「っまるでジャングルの雨ね!」



叩き付けるように降り注ぐ雨に両手で頭を庇う二人に山本の声が届く



「こっちだ」



その声に薄目で見やるとそれまでには無かった大きな入り口が山本の後ろに見えた



「降りるぜ」

「わぁ・・・凄い・・・アジトって、地下にあるの?」

「あぁ、そうだ、他にもこんな入口が六ヵ所ある」



長く下へと続く階段に新奈は驚きの声を上げ山本に続き降りる

降りると見えたドアの横にある指紋センサーに山本が右手を沿えると

ドアは開いた中はエレベーターとなっており、更に下へと降りていく



「ここはボンゴレの重要な拠点として、建造中だったんだ」



地下五階で開かれた扉の向こうには

太い柱の連なる広い空間が広がり新奈と獄寺は感嘆の声を上げる



「いまんとこ、六割方出来てるってトコだな」

「凄い・・・ボンゴレってこんなの作れちゃうのね・・・・・・」

「あはは、いい事教えてやろーか?お前が作らせたんだぜ、ニーナ」

「・・・え!?私!!?」



感嘆する新奈の頭に軽く手を載せられ告げられた言葉に新奈は驚きの声を上げる



「あぁ、もう少しでかくなったお前がな」

「し、信じられない・・・」

「ん?おい、あの装置は何だ?」

「あぁ、メカニックのジャンニーニが作った、何とかって物質を遮るバリアだそうだ」



呆然とする新奈、歩みを進める一行の前に

レーザーのようなもので先を遮る装置が見えた・・・ラルの問いに山本は大雑把に答える



「(ジャンニーニーが作って・・・大丈夫なのこれ?)」

「大丈夫だって来いよ」

「っうん・・・何ともない?」



あっさり其れを通り抜け促す山本に新奈は思い切ったように其れをすり抜ける



「うっ!うぐ・・・」

「おい!どーした!?」

「「っ!?」」



ラルと獄寺も新奈に続き入って来るが、ラルは通り抜けた瞬間その場に倒れる

獄寺の叫びに新奈と山本は慌ててラルに駆け寄る



「しまった、すまない気づかなくて!」

「ラルさん!?どうしてラルさんだけ・・・!」

「とりあえず心配ない・・・環境の急激な変化に体がショックを起こしただけだ」

「大丈夫なの?」

「少しすりゃ、目を覚ます」



焦る新奈に山本は冷静に話しラルを抱き上げ新奈達を先へ促す



「さぁ、着いたぜ」



長い廊下を歩き、ある部屋のドアを開け入るように進め二人は入る



「おせーぞ」



とても綺麗な造りの部屋を見回していると聞きなれた声が耳に届く



「ちゃおっス」

「リ、リボーン・・・・・・っ」



いつものように黒スーツに身を包んだリボーンの姿に新奈目に涙が浮かぶ



「抱きしめてェ〜」



歩み寄ろうと足を踏み出すと目の前からではなく別の方向から聞こえる声に瞬時に其方に振り返る



「こっちよ!・・・!!?」

「リボーン・・・!!」

「(ちっ・・・蹴飛ばす積りだったんだが―――・・・)」



飛んできたリボーンをなんと受け止め抱きしめる新奈



「よかったリボーン・・・無事で、心配したんだから」



師の名前を呼び強く抱きしめる生徒に毒気を抜かれ涙を流す新奈の腕からすり抜ける



「ったく、相変わらず泣き虫だな・・・
お前を立派なマフィアのボスにするまでオレはお前の側を離れるつもりはねーぞニーナ」

「っもう・・・でもよかったリボーンが居てくれて、変な格好だけど・・・」



全白タイツで身を固めた猿スタイルのリボーンが口角を上げて笑う

其の笑みに新奈は涙を流したまま笑い返す



「しょーがねーだろ?この特殊スーツを着てねーと体調最悪なんだ
あのバリアも俺の為に作らせたんだしな・・・可愛くねーか?」

「まァ可愛いけど・・・どういう事?」

「俺には厳しい世の中って事だ」



リボーンの言葉に涙を拭いながら首を傾げ椅子に飛び乗り座るリボーンを見つめる



「・・・ぁ、リボーン、過去に戻れない事で何か分かってることってない!?」

「そーなんです!おかしーんスよリボーンさん!
オレ達過去に戻れなくなっちまって・・・十年バズーカの故障とか――・・・」

「確かに故障も考えられるが、おかしいところはそれだけじゃねーんだ」

「おかしい所?」



新奈と獄寺の言葉にリボーンは更なる問題を二人に知らせる



「時間がズレてんだ・・・十年バズーカで撃たれたはずなのに
この時代は元の時代から九年十ヶ月ちょっとしか経ってねーんだ、ただの故障じゃねーだろ」

「約二ヶ月のズレ・・・」

「なんでこんな事になっちまってるのかオレにもさっぱりだ・・・」

「リボーンにも解らない、か・・・二ヶ月経ったら戻れるとか?」

「その可能性もありますが、ヘタしたら永遠に・・・って事も」

「うぅ〜・・・」

「まぁ、ワケのわからねー土地に飛ばされなかっただけでも良かったけどな」



新奈と獄寺はリボーンの言葉に視線をリボーンに移し不思議そうな顔をする



「・・・土地?あ、そうだ此処って何処なの?」

「?・・・そんな事も解ってねーのか?」

「うっ・・・色々あったの・・・」



リボーンの問いに悔しげに目を逸らす新奈にリボーンは鼻で笑い山本に顔を向ける



「山本、モニターに映るか?」

「あぁ、これが上だ」

「?」

「暗くてよく見えねー・・・」



リモコンのスイッチを入れ普通の夜の町並みがモニターに写されるが二人は眉を寄せるだけ



「コイツは見覚え有るはずだぜ」

「ぇ・・・並盛中?ってことは、此処並盛なの!?」

「日本だったスか!!?」



モニターが映し出した場所・驚愕の事実に驚く二人



「そーだぞ・・・そして、過去に戻れない以上、ここで起こっている事は、お前達の自身の問題だぞ」



リボーンに続き山本が状況を把握しきれていない二人に説明を始める



「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が
同時に攻撃を受けている・・・勿論この日本でも、ボンゴレ狩りは進行中だ」

「・・・ボンゴレ」 「狩り・・・?」



山本に告げられた不吉な言葉を新奈と獄寺は小さく呟く



「お前達も見たはずだぞ、ボンゴレマークのついた棺桶を・・・」

「それって私が入ってた――・・・?」

「てめぇ!!」



新奈の言葉に何かが切れたのか獄寺が山本の頬を殴った



「っ獄寺君!?」

「何してやがった!!何で十代目があんな事に!!」

「っすまない・・・」



噛み付くように山本に怒鳴ると口から血を流し辛そうに謝罪する山本



「てめえ、すまねーで済むワケねーだろ・・・」

「やめろ獄寺、十年後のお前も同じ立場だったんだぞ」

「く、そ・・・」



掴みかみかかる獄寺をリボーンが制し其の言葉に項垂れる



「敵であるミルフィオーレファミリーは恐ろしいほどの戦闘力を持っている・・・そして、冷徹で残虐だ」

「ボンゴレ本部が陥落した時点で
ミルフィオーレはトップ同士での交渉の席を用意して此方のボスを呼び出した・・・
だが、奴らはその席で一切交渉などせずボスの命を奪ったんだ・・・!」

「っ!!?」

「っ!(それって十年後の――・・・)」

リボーンと山本の話に新奈は肩を震わせる



「それ以後ミルフィオーレはこちらの呼びかけに一切応じず
次々こちら側の人間を消し続けている・・・奴らは目的は、ボンゴレ側の人間を一人残らず殲滅する事だ」

「そんな・・・・・・つまり過去から来た私達も危ないって事?」

「それだけじゃねーぞ、お前達と関係のあった人間、全てが標的だ」

「っ!!」

「それって・・・・・」



山本、リボーンから齎される信じがたい情報に困惑する獄寺と新奈



「うろたえんな、まだ希望が無くなったワケじゃねぇ
山本、バラバラに散ったとは言え、まだファミリーの守護者の死亡は確認されてねーんだな」

「あぁ・・・」

「なら、やる事は一つだ!」



山本の答えにリボーンの口角が上がる



「お前はまず散り散りになった六人の守護者を集めるんだ」



**********
あとがき

自分はラル姐さん大好きです

そして再会シーンで蹴らせても良かったのですが

やっぱ先生は抱きとめなければ!と思ったしだい書けて満足中

読み返したら何故か獄寺氏がムッツリ?純情少年?になっていたカシコ・・・逃)



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!