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標的74 10年後の世界
「・・・しくった」

「まったく・・・スペルミスなんかしやがって万年二位が」



学校からの帰り道

本日返却されたテストのミスに眉を寄せ答案を睨みつける新奈の前を歩くリボーン



「テストで獄寺君に勝てるわけないでしょ・・・」

「・・・帰ったら徹夜で勉強だからな」

「何でよ!?96点の何処に不満があるって言うの!」

「ミスってんじゃねーか、イイ点だからって調子に乗るなよ」



リボーンの言葉に突き出した答案用紙を握りつぶし押し黙る

新奈達は背後からの元気な声に足を止める



「ニーナ!ナハハハ待てェェニーナ!!」



ピンクの風船とペロペロキャンディーを手に

笑顔で駆け寄ってくるランボに新奈は腰を下ろしその場で待つ



「見てみて!商店街でもらったんだもんね!
なんかね人もいっぱいでねアメもくれたんだもんね!!」

「良かったわねランボ」



風船と飴を見せ新奈に頭を撫でて貰うと更に笑みを深めるランボにリボーンが一言



「相変わらずお子ちゃまだな」

「リボーン、オレっちのことバカにしたな!!」

「馬鹿にしたんじゃないぞ、本当の事を言ったまでだ」

「なんだそう――・・・ん?やっぱバカにしたな!!」



青筋を立てリボーンに怒りを向けるランボを更に煽ると

ランボは風船を手放し自分のアフロに手を伸ばす

宙に浮いた風船を新奈は素早く掴み二人を見守る



「ランボさんは優秀なヒットマンなんだぞ!死 チ ね!」

「お前がな!」

「ぐぴゃっ!!」



手榴弾を取り出したランボの顔面に蹴りを見舞い

ランボを吹き飛ばす弾かれた手榴弾はランボの口へと飛び込む



「ぐっ!?・・・ああ・・・ピンを外す前で助かった」

「残念、もう少しで煙に出来る所だったのにな」



涙目で慌てて口から手榴弾を取り出したランボに辛辣な一言を浴びせるリボーン



「・・・リボーン、そこまで言わなくても――・・・」

「〜〜おのれリボーン・・・垂れ眉の癖に!!」



そう言って十年バズーカを取り出すランボ、リボーンの眉がピクリと動くのは同時だった



「星になれ」

「ぐぴゃっ!!!」



リボーンは地面の欠片を持ち上げ其れをランボへと投げ付ける

ランボが倒れた拍子にランボの手から離れた十年バズーカは宙を舞い弧を描くようにリボーンへと落ちる



「ぁ!?リボーン!」



余裕の笑みを浮かべていたリボーンから笑みが消えた



「やべーな、動けねぇ」

「え?」



次の瞬間、リボーンに十年バズーカが直撃、立ち篭める見慣れたピンクの煙



「っ・・・リボーンが十年バズーカに!?
・・・じゃあ、まさか・・・ここに十年後の、リボーンが・・・?」



息を飲み、次第に晴れて行く煙を見守る新奈



「えっ?いない・・・?」



周囲を見回しても人影は無い其の事に新奈は不安の色を見せる



「リボーン!何処なの、リボーン!・・・あれ?
十年バズーカって現在の自分と十年後の自分が
五分だけ入れ替わるのよね?誰も居ないって・・・ランボ分かる?」

「にゅー・・・オレっち難しいことはわかんない・・・じょ〜・・・ニーナ風船ン!」

「え?あぁ、はい」



新奈から風船を受け取るとランボはまた笑いながら走り去っていった



「(今ここにいないって事は・・・十年後のリボーンは・・・)」



嫌な考えが頭を過ぎり頭を振り其れを払う



「・・・・・・五分たったら戻って来るよね」



十年バズーカの効果は五分、其れを知っているからこそ

直ぐ戻ると考えた新奈は其のままランボと共に帰路に着く



「(今は考えたくない・・・リボーン)」



不安をから逃げるように足を速め家へと帰る










翌朝、いつものリボーンの寝床であるハンモックに視線を移すが

其処にいつもの生意気な赤ん坊の姿はなく新奈は不安に駆られる

寝巻きから着替えリボーンを探す為表へ出る新奈



「リボーン・・・何で帰ってこないの?・・・一体何処へ、ん?」



家からそんなに離れていない場所で新奈の背後から馴染みの声が聞こえてきた



「何で獄寺さんもニーナさん家行くんですか!?」

「通販で買った土産の生八っ橋をお渡しすんだ!!」

「通販はお土産じゃないです!!」

「うるせぇ!心が篭ってればみんな土産なんだよ!」



言い合いをしながら歩いて来る獄寺とハルに新奈は振り返る



「獄寺君、ハル・・・」

「あ!ニーナさん!」

「十代目!!」

「ニーナさん!並盛駅に地下商店街作る計画聞きました?
今日までイベントやるんです!皆で行きませんか?」

「チッ、お子ちゃまが・・・」

「ハルは立派なレディーです!」

「何処がレディーだ!どこが!」



新奈に駆け寄ってきた二人は再び睨み合いの口喧嘩を始め

其のいつもの光景に新奈は安堵の溜息を吐く



「そういえば、十代目は何処かにお出掛けで?」

「え?・・・ぁ、それがリボーンが・・・・・・ちょっと、あって」

「はひ?」

「リボーンさんがどーかしたんスか?」

「実は―――・・・」



獄寺の問いに眉を下げ拭えない嫌な予感を抱えたまま

昨日の一部始終を話しリボーンが帰宅していない旨を伝える新奈



「え!?帰ってこない!!?っていうか、十年バズーカってなんですか?」

「っ!?(しまった!ハル知らないんだった・・・)」



ハルの言葉に冷や汗を浮かべ自分の迂闊さを呪い

説明に戸惑う新奈に、思案していた獄寺は深刻そうに其の口を開く



「・・・十代目、リボーンさんは確かに十年バズーカで消えたのに、其処には誰も現れなかったんスね?」

「・・・・・・うん」

「ま、待って下さい十代目・・・十年後から来なかったって事は
居なかった・・・つまり十年後にリボーンさんは存在してないって事なんじゃ・・・・・・」

「っ・・・確かに考えられる事ではあるけど・・・
そのまま未来に取り残されるなんて・・・故障でもない限り、無い・・・でしょ?」



新奈は拳を強く握り締め考えたくなかった事実に唇を噛み締める



「・・・まさか・・・・・・とにかくリボーンさんを探しましょう!」

「うん」

「はひ!?」

「オレは学校に行きます!」

「ハルは山本さん家に・・・!」

「じゃあ私、公園見てくるから、お願い!」



三人はその場で別れ駆け出した



「破!ヤァ!!」

「ぁ!イーピン!」



公園で修行中のイーピンを見つけ新奈は駆け寄るとイーピンは笑顔で答える



「弥好ニーナサン!今日モ晴天!」

「ねェリボーン見なかった?」

「イーピン知ラナイ」



頭を振るイーピンに落胆する新奈



「そう・・・見つけたら教えてね」

「清楚了!」(分かりました!)

「お願いね」



気持ちを切り替え次の場所に行こうと駆け出すと読書をしながら歩く少年とぶつかってしまった



「ごめんなさい、大丈夫ですか?」



眼鏡を掛けた少年は新奈の顔を見ると恐れるように逃げ去っていく其の姿に新奈は目を瞬かせる



「?どうしたのかしら・・・あんなに怯えて・・・・・・っ!それよりリボーン」



新奈は思い出したように公園を出て走り出す



「(元はといえば、原因は十年バズーカ・・・かと言ってランボに十年バズーカの事を聞いても何も解らないだろうし
ボヴィーノの人間に知り合いなんて居ない・・・あ!)大人ランボに聞けば、何か解るかも!」



足を一度止め、自宅へと方向を変え駆け出す新奈

家に着くと、ランボの名を呼び奈々に居場所を聞き自身の部屋で寝ているランボを起こす新奈



「ランボ!・・・ランボ、起きて!」

「ん〜ランボさんは今お留守ですぅ〜」



幸せそうに腹を掻きに新奈に背を向けるランボ



「ランボ起きて!!」

「ん〜〜?」

「お願いランボ!十年バズーカで大人になって!」

「何言ってんのニーナ、ランボさんは十年バズーカなんてシ・リ・マ・セ・ン」

「頭から出てるじゃない!」

「ンギクッ!!」

「ほらコレ・・・!」



ランボの頭の中から顔を覗かせる十年バズーカを無理矢理引っぱり出そうとしたところランボが抵抗をみせる



「んぁ!!ダメだもんね!ボスに使っちゃダメって言われてるんだもんね!!」

「もう使いまくってるのはバレバレよ!」



こうなれば自分でランボに撃とうとランボから取ろうとするもランボは譲らない



「バレてないもんね!!」

「お願いよ、ランボ!!」

「イヤだ!!」



双方の揉み合いの内にランボはバズーカの引き金を引いてしまう銃口を持っていたのは新奈



「っ!?(うそ!?もしかして私、十年バズーカに?じゃあ私、十年後に・・・!!?)」



聞き慣れた爆発音だが、新奈が目を開くと不思議な空間で身動きも出来ず

何処かに運ばれ物凄い勢いで引っ張られる感覚に思わず声を上げてしまう



「痛っ!!」



落下し背を打ちつけ瞑った目を開くが視界には何も映らない、辺りが暗いことに気が付き

他の感覚を使い周囲の情報を集める一番に飛び込んで来た情報は匂い、嗅覚からだ



「(木・・・花の匂い?私の下?)」



手に触れた花に首を傾げるが自分が横になっているらしい事が分かり回りを確認するため



「(何でこんなに暗いの?)ぁ、動いた・・・」



手を伸ばすと直ぐ上に手が触れた押してみれば少々重量は有るものの簡単に動いた



「よっ」



自分の上に有った壁を動かすと差し込んでくる光に目を細めゆっくりと身を起こした目の前に広がる森林



「ここ、十年後・・・?未来の自分と入れ替わったって事は、十年後の私が此処にいたんだ・・・何処・・・此処?」



自分が先程まで横たわっていたベットを確認する・・・毛布の代わりに敷き詰められている花

其の横に自分が先程動かした壁にはボンゴレのエンブレム

]の文字が装飾されていたどう見ても蓋そして其れが被せられていた黒塗りの棺



「これって、棺桶?って・・・・・・え―――!!?何で私棺桶にィ!!?」

「誰だ!!」

「っ!?」



鋭い男の怒声に肩が震え身を縮める新奈、草木を踏み分け近寄ってくる音に恐る恐る目を向ける



「あっ!貴女は・・・!?」



新奈の前にスーツ姿の銀髪男が現れた

新奈は目を見開いて自身を見つめる其の男を見て凄く近しい人物の面影を見た



「あれ・・・?まさか――・・・ごっ獄寺く―――・・・」

「十代目!」

「っ!?」



新奈が名を呼ぶ前に両の肩を其の大きな手で掴まれ聞きなれた名称で新奈を呼ぶ



「(やっぱり、十年後の獄寺君・・・凄い背が伸びてる流石半分イタリア人・・・)」

「スイマセン!スイマセン!」

「っえ!?・・・獄寺君?・・・・・・痛っ!痛いよ獄寺君」

「ぁっスイマセン・・・」

「ううん、あの・・・」



獄寺の口から出て来るのは謝罪の言葉ばかり新奈の肩から手を離して多少落ち着いたようにまた謝罪



「えっと・・・あの、私・・・間違ってランボの十年バズーカに当たっちゃって・・・・・・」

「そうですね・・・五分しかない」



新奈の顔を悲しげに見つめる獄寺に新奈もまた眉を下げ其れを見つめる

決意したように獄寺は新奈を見下ろし口を開く



「いいですか十代目、過去へ戻ったら、今から俺の言う事を必ず実行して下さい」

「え?」

「詳しく説明している時間はないんです」

「(十年後の獄寺君すっかり大人だ・・・)」

「過去へ戻ったらまず、この男を消して下さい」

「消・・・・・・はっ!!?」



深刻な表情をする獄寺は一枚の写真を新奈へと差し出した

告げられた言葉に新奈は思わず目を見開き獄寺を凝視し写真を渡され其れを受け取る



「この時代の写真ですが、貴方は奴と中ニの時に接触してる筈なんです」

「え?誰、これ・・・?っていうか消すって!」

「躊躇する必要は、ありません!」



獄寺の袖を掴み不安げに見上げる新奈に獄寺は強くしかし言い聞かせるように告げ



「っ!待って!消すって殺すって事でしょ!?」



袖を掴む小さな手を握り締め悔しげに呟く



「奴さえいなければ、白蘭もこれ程には―――・・・」

「びゃく・・・・・・らん・・・?」



新奈は苦しげなその呟きに困惑し痛いくらいに握られた自分の手を見ながら一つ呟いてしまう



「(っ・・・さっきから何でこんな深刻な空気なの・・・?一体十年後のこの世界で何が起こってるの?それに・・・)」

「次に・・・念の為にですが―――・・・」

「あの、一つだけ・・・凄く気になるんですけど・・・
十年後の私・・・何で此処に居たんですか・・・・・・十年後の私・・・何で棺桶に?」



新奈の言葉に獄寺の肩は大きく震え歯を食いしばっている



「・・・それは―――・・・」



突然目の前の獄寺を包むように立ち篭めたピンクの煙強くつかまれていた手の力が一気に緩んだ



「っえ!?」

「十代目・・・?」

「ご、獄寺君!!?」



晴れた煙の中から現れたのは自分のよく見知った十年前の獄寺だった



「(何で元の獄寺君が!!?真相聞きそびれたァ!!)」



自分の生死について聞きそびれた新奈は、ショックを隠せない



「?・・・っ―――!!?スイマセン十代目!!」

「え?」



先程まで十年後の獄寺が握っていた手を素早く離し

頭を下げる獄寺新奈は苦笑いを浮かべ窘めると平常心を取り戻した獄寺は



「あれ・・・いつもの十代目だ!!俺、てっきり十年後に来たかと思いましたよ!」

「いやっ、ここは十年後であってるよ、獄寺君・・・私もさっき十年前から来たの」

「なんだ!やっぱりそうスか・・・リボーンさんの事で大人ランボを呼ぼうとして十代目の家に行ったら――・・・」



上空から放たれた十年バズーカに当たり現在に至るという経緯を話し怒りを十年前のランボに向ける



「ったくアホ牛のヤツ・・・五分経って帰ったら締めて――・・・ん?これ、なんスか?棺桶みたいスけど」



低い位置に自分と新奈を隔てる黒い箱に、獄寺の目が止まる



「みたいじゃなくて、そのものズバリよ・・・」

「は?・・・って、ことは・・・・・・十年後の十代目は此処に・・・」



膝を抱え重く沈んだ空気を放つ獄寺に新奈は棺桶から足を踏み出し獄寺に手を差し伸べる



「あの・・・獄寺君?獄寺君、大丈夫?」

「十年後の俺は何やってたんだ!!何故十代目が棺桶に!!
ちくしょー!!十代目を死なせるなんて、俺は右腕失格です!!」



勢いよく立ち上がったと思うと今度は地面に膝を付き拳を何度も落とし悔しさを露にする獄寺



「誰もまだ死んだとは言ってないでしょ!(現実から目を背けてるんだから――・・・!)
それに、多分こうならない為の方法も教えてもらったから」

「っ!!」



新奈の言葉に顔を上げ食いついてきた獄寺に十年後の獄寺から渡された写真を獄寺に差し出す



「・・・―――この写真のヤツを・・・十年後のオレがそう言ったんですか?」

「・・・うん」

「よし!五分経って過去に戻ったら、直ぐにその写真のヤツを葬りましょう!」

「っちょ!それはマズイから、五分して戻ったらまず・・・あ、れ?」



"五分"という言葉に新奈は自分が此処に来てから経った時間の違和感に気づいた



「どーしたんスか?」



立ち上がりながら、辺りを見回す新奈



「私・・・もう此処に来て、五分くらい経ってるんじゃ・・・」

「っな!?そういやぁ、オレもこっち来てから五分は経った気がします」



新奈の言葉に獄寺も慌てて立ち上がり周囲を見回す



「そう、よね・・・」

「えぇ」

「じゃあ、何で過去に戻らないの?」



焦る新奈に獄寺は顎に手を添え冷静に分析する



「考えられるのは・・・十年バズーカの故障じゃ――・・・」

「故障って・・・私達どうなるの!?」

「詳しくは解りませんが、二度と過去に戻れないとか・・・」

「っ!!?」

「あ、イヤまだ決まったわけでは!」



獄寺の言葉に泣きそうになる新奈を慌てて宥める



「うぅ・・・どうすれば――・・・!!」



涙目で訴える新奈の腹から可愛らしい悲鳴が鳴り新奈はわずかに頬を染める



「とりあえず八っ橋、食べましょうか」



獄寺は笑みを浮かべ通販で買って、そのまま持っていた八っ橋を掲げる



「(美味しい・・・)」

「しかしここ、何処なんスかね?日本じゃないって事も考えられますね・・・」



座ってリスの様に頬を膨らませて食べる新奈と違い食べながら周囲を見回し歩く獄寺



「えっ!外国!?」



獄寺の言葉に新奈は驚きの声を上げる



「これ、十年後のオレが置いてったんスよね?」

「う、うん・・・」



獄寺は足元に落ちていたアタッシュケースを拾い新奈に訊ね其れに頷く



「どれ」

「ちょっ、獄寺君!!勝手に開けたらマズイんじゃ――・・・」

「構いませんよ、どーせオレのなんスから!」



止め具を外し中身を地面に全て落とすと新奈も獄寺の横に歩み寄り其れを一緒に確認する



「何だ?このコケむした・・・箱?汚ねー・・・ってか十年経っても紙の手紙かよ・・・」

「(未来の品物・・・ちょっと気になる――・・・)」



獄寺が目ぼしいものを手にとって確認している横で目を輝かせる新奈、獄寺に寄り一緒に手紙を除き見る

手紙の封を切り中を確認する獄寺の表情は呆れたものから一転真剣なものへと変わった



「っ!!」

「何、これ・・・?絵みたいだけど・・・・・・」

「これはG文字だ!!」

「G文字?(何処の民族の文字?)」



新奈には、記号や絵の羅列にしか見えないが獄寺が文字だと言い首を傾げる



「っ!!?(十代目、近い)」

「G文字って?」

「あ、はい・・・ゴクデラ文字と言って中一の時にオレが考え出した暗号です!」



やや頬を染め新奈の問いに答えた獄寺は手紙に視線を移し真剣に眺め解読する



「(授業中何やってんのこの人!っていうか、そんな人に私っていつも点数負けてるの!?)」



新奈は獄寺の授業の不真面目さに心中で激しく突っ込んだ



「えーと・・・シュ、ゴ、シャ、ハ・・・シュウゴウ――・・・」



獄寺が文字を解読し読み上げていく中二人の背後から影が歩み寄ってくる



「やはりな…」



聞き覚えのない声に二人は同時に振り返る



「誰だ!!」



全身をマントで覆い紅いゴーグルで目元を隠す藍色の髪を持った人物に二人は警戒すると其の人物が口を開く



「はじめまして、そして・・・さようなら」

「っ!!?」

「敵!!」



右手の指輪から細い鎖を外し、左腕を包む銀の装置を二人に向ける、二人は其れを武器だと悟り身構える



「十代目!!さがって下さい!ここはオレが!!果てろ!」



獄寺は素早く新奈の前に出てダイナマイトを謎の人物へと放つ



「逃がすかよ!」



高く飛びダイナマイトを回避すると獄寺は休むことなくロケットボムを放つ

同時に相手の指輪に炎が灯ったのを見た新奈は眉を寄せる



「っ!?」



左腕の装置に右手を添えた構えると光線のようなモノがボムに向け放たれ

其れを真っ二つにしそのまま獄寺を襲い大きな爆音が響く



「っ!!獄寺君!?」



吹き飛ばされる新奈は直ぐに体勢を立て直し獄寺の安否を確認するが・・・



「!!?」

「何だ・・・!あぢっっ!!」

「っリボー・・・ぁ(リボーンは・・・いないんだ・・・・・・)」



光の糸で作られた様な三角錐型の檻に閉じ込められた獄寺に咄嗟に師の名前を口にしていた



「やはりリングを使いこなせないのか・・・宝の持ち腐れだな」

「リングを使いこなす?」

「何を言ってるの・・・?」



木の上から自分達を見下す敵の言葉に、眉を寄せる獄寺と新奈



「俺を恨むな、死ね」

「十代目!!こいつ何かヤバいっス!!に、逃げて下さい!」



再び武器を向けてくる敵に獄寺は新奈に逃げるように告げる



「獄寺君・・・(リボーンが居なくちゃ死ぬ気弾は・・・ぁ、死ぬ気丸)」



身動きがとれない獄寺を助ける術を思案すると自身のポケットに入っていた物を思い出し其れを取り出す



「(本当は・・・こんなの絶対飲みたくなかったけど、使うよバジル君)」



小瓶からニ粒出し一気に飲見込むと額に橙色の炎が灯り指貫グローブは

]グローブへと形を変え、いつもと色の違う鋭い目を見開き新奈は動いた

身動きが取れない獄寺に撃たれたのは実弾、其れを炎で周囲に拡散させ木に足を付き新奈は敵を見据える



「十代目!!」

「弾丸をものともしない高密度エネルギー・・・待ってたぜ、超死ぬ気モードのお前をな」

「何故私達を狙うの」



その言葉に目を細め問いかけるが新奈の問いは流された



「今は非常時だ、手っ取り早くが最優先なのさ」



新奈は真っ直ぐと敵に向き直る



「次のは鉛玉とは違う・・・その炎でも消せはしないぜ!」



再び左腕を構え、今度は右手を添えた

六つの穴から放たれる其の光に新奈は炎で宙を舞い交わすが、それらは新奈の後を追う



「追尾 ホーミング !!」

「あっ!!」

「十代目――!!」



獄寺が焦りの声を上げ、追う其の光を炎の壁を作り防ぐも爆破に巻き込まれ上空から落ちる新奈



「(今の弾は・・・まさか!)」

「休憩なんてやらないぜ・・・ここで死ぬようなら、足手纏いになるだけだからな、生きたきゃ生きろ」



落下する新奈に再び武器を向ける敵、其の言葉はの真意が解らず

新奈は苦虫を噛み潰し向かってくる攻撃に新奈は咄嗟に構えた



「じゅ、十代目!!!」

「リボーンの指導を受けながらこんなものか、これでよくザンザスを倒せたな・・・
リボーンが隣にいて、初めて一人前だったってワケか・・・・・・」



爆煙により完全に姿が見えなくなった新奈を呼ぶ獄寺

爆風にマントや風を靡かせ爆煙を見据える敵そんな余裕の敵に新奈は言葉を投げる



「何故リボーンのことを知っているの・・・」

「っ!零地点突破・・・改か!!」

「何故・・・」



不規則に大小を繰り返す炎に敵は呟く、自身も小さく呟き今までよりも速く、相手の背後へ移動する



「・・・何故死ぬ気の炎を使えるの」

「くっ、」



一瞬見失うものの、背後からの声を素早く察知し右拳を避ける



「う”っ!」



かろうじて避けバランスを崩した相手の腹に、すかさず左拳を入れ其処で新奈はある事に気づいた



「!(女?)」



相手は新奈を即座に距離を置き離れた木の枝に着地離れた際に剥がれたマントは静かに地面に落ちる



「なるほどな・・・・・・」

「女!?」



荒い息を整えながら言う相手の容姿はに獄寺は驚きの声を上げるが新奈は女を静かに見据える



「なかなかどうして見所はありそうだな、沢田新奈・・・
俺が全力を出してもお前の戦闘能力には及ばないだろうぜ、最も・・・旧時代的意味においてな」



其の言葉に新奈は眉を寄せる、女は右手の指輪の一つから鎖を取り外し炎を灯した



「それだけではこの時代、生きてはいけないぜ!」



腰に身に着けている箱の穴に指輪を差し込むと同時に跳躍し同時に武器を構えた

其れから発射される実弾を交わすと女の腰から勢いよく新奈の横をすり抜けて行き

目を向ければ巨大な百足



「っ!!?」

「なんだ!?」



新奈が動きを止めると新奈に勢いよく巻きついてくる両手で其れを掴み炎で焼き切ろうと試みるが・・・



「っこれは・・・」



炎は百足の全身へと広り森の一部を輝かせる程の巨大な炎を放つ



「す、すげぇ!!さすが十代目っ!!」

「逆効果だ、気付いたようだが・・・」

「何!?」



獄寺は新奈の力だと歓喜するが女は余裕の笑みで静かに告げ獄寺は目を見開く



「ぐっ・・・ぅ・・・はぁ、はぁ―――・・・」

「奴は死ぬ気の炎を自分の意志で出してるんじゃない
無理矢理大気に放出させられてるのさ・・・炎で動く、玩具によってな」



息切れしだした新奈を見やり、開いた箱を手に獄寺に新奈の状態を知らせてやった



「なん・・・で・・・」

「十代目!?」

「っ・・・・・・」



放たれる炎は徐々に小さくなり気力を失った新奈はゆっくりと地面に降り、最後は力尽きたように倒れる



「こんな初歩的な罠にかかるとは情けないな、ボンゴレ十代目」

「待ちやがれ――・・・熱っ!」



女は左腕の武器を倒れる新奈に向ける、未だ檻に閉じ込められる獄寺は手を伸ばそうとするが炎の檻に阻まれる



「っぅ・・・(リボーン・・・私・・・リボーンがいないと、ダメだ・・・きっとリボーンがいたらこんな事には・・・!)」



一度女を睨み付けるが歯を食いしばり強く目を閉じる新奈



「が・・・及第点だ、殺すのは見送ってやる」



女の言葉に新奈と獄寺は目を見開く、武器を下げゴーグルを取り素顔を晒す彼女は名を告げた



「俺の名はラル・ミルチ」

「!?・・・十代目!!お怪我は!」

「っ・・・うん、大丈夫、ありがとう」



同時に獄寺を囲んでいた檻が消え急いで新奈に駆け寄り支え起こす

ラル・ミルチは落ちていたマントを拾い羽織り直す



「派手に暴れ過ぎたな、このままでは
奴らに見つかるのも時間の問題だ・・・これをボンゴレリングに巻きつけろ」

「「?」」

「マモンチェーンと言って、指輪の力を封印する鎖だ」



ラルは二人の目の前に二つの細い鎖を放る其れを見た二人はラルに視線を向ける



「おい!ちょっと待て!!てめーいきなり襲っといて
ワケわかんねー事言ってんじゃねぇぞ!!それに何故ボンゴレリングの事を!!一体何者なんだ!?」

「急いでココを立ち去る、裸足じゃ無理だ、これを履け」

「(何故にサンダル常備?)」



獄寺の問いには一切答えず、背を向けたラルは新奈にサンダルを放り投げる



「(この人・・・味方なの?)あの!私達過去から来たんです!!
さっきから驚く事ばかりで何がなんだかさっぱり―――・・・!!」



質問しようと口を開けば武器を向けられ新奈の口は強制的に閉じられる



「ふざけんな!!何でてめーの言う事を!!」

「ついて来れない奴は死んでくれた方が助かる」



獄寺は瞬時に新奈を背に庇いラルに食って掛かり静かに告げるラル



「俺には、時間がないんだ」

「「っ!?」」



彼女の真剣な横顔に二人は押し黙りラルは二人に背を向け歩みだす



「知りたい事は、目的地に着いてから調べるんだな」

「目的地?」

「お前達のアジトだ」

「お・・・オレ達のアジト!?」

「まさか、この時代の・・・・・・って事は私・・・・・・ぁ、リボーンもそこにいるんですか!?」

「そうか!十年前のリボーンさんがまだこの時代にいるって事も・・・・・・・・・」

「知るか」

「いけ好かねーアマだぜ・・・」



無関心に答えられ怖い顔をする獄寺に新奈は苦笑い



「でも、赤ん坊リボーンがいなくても、この時代のリボーンがいるのかも・・・」

「そっスね!」



新奈と獄寺の小さな会話を聞き取ったのかラルの足は止まり口を開く



「コロネロ、バイパー、スカル・・・最強の赤ん坊
アルコバレーノ達は皆、死んでいった・・・・・・勿論、リボーンも・・・いない」



振り向き様に告げられた言葉に新奈は自身の全身の血の気が引くのを感じた其の顔色は青く目は見開かれた


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