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標的31 おいでませマフィア島
「まぁ素敵ね、流石最高級リゾート!」



人々で賑わうテーマパークを前に全員の顔に笑顔が浮かぶ当然遊園地を前にした子供は大興奮



「わーい!遊園地!!ランボさん遊ぶんだもんね!!!」

「イーピン楽シミ!」

「二人とも待って、迷子になっちゃうでしょ、離れないで!」



テーマパークへと駆け出そうとするランボとイーピンを新奈は慌てて捕まえる



「ニーナさん!どれに乗りたいですか!?
ハルはスリリングなジェットコースターに乗りたいです!!」



興奮しているのは幼児達だけでは無かった

新奈の横に力強く踏み出し人々が声高々に叫ぶ

レールの上を走っているコースターを指差すハル

新奈は圧倒されつつハルの指し示した先を見る



「ここのコースターは『気絶するほど怖いアトラクションランキング』
8,452カ所中三位だからスリルは保証するよ」

「え"、そんなに怖いの・・・?ちょっと乗る勇気が――・・・って、待ちなさい!」



フゥ太のランキングに新奈は顔を青くする其の間に

ハル、ランボ、イーピン、フゥ太の四人がテーマパークへと駆け出し

新奈の声の届かないところまで行ってしまい新奈は苦虫を噛み潰すように眉を寄せる



「もぉ・・・」

「イイじゃねーかニーナ!こんな楽しそうな所なんだ、はしゃぐのも解るぜ!」

「うん、まぁね・・・
(とてもマフィアが作ったリゾートに見えないものね、普通のリゾート地みたい)」



山本に宥められ苦笑いを浮かべ新奈は軽く辺りを見回した



「マフィアが真っ白な気持ちで休めるようにドス黒い金を大量に注ぎ込んだんだ」

「うわぁ、嫌な感じ・・・」



足元のリボーンの言葉に新奈は重い空気を背に纏う

そんな空気を払うように大量の人間がリボーンの元へと駆け寄ってきた



「あ!リボーンさんが居たぞ!!」

「リボーンさん!」

「リボーンさん、今回記者会見は?」

「断るぞ、オレは休暇で来ているんだ」

「皆がリボーンさんがどのように休暇を過ごされるか――・・・」

「また今度な」



紳士的に記者一同を交わすリボーンに新奈は目を瞬かせた



「記者・・・リボーン、貴方ってそんなに有名なの?」

「まーな、アソコを見ろ」

「ん?・・・っ!!?」


リボーンは新奈に振り返り其の後ろを指差し、新奈は小さな指で示された方に振り返ると

リボーンの顔を模したアドバルーンがリボーンを歓迎する垂幕を下げ

宙に浮いていたのだ、其の事実に新奈は唖然とした



「オレのコネが無かったら此処には来られなかったんだぞ
人気があっていつも予約でいっぱいだからな」

「そうなの?」

「わー・・・スゲーな、招待してくれてサンキュウな、小僧!」

「たまには遊びも必要だからな・・・フッ」

「オレ達も行こうぜニーナ!」

「うん!あ、そういえば獄寺君は?」



新奈は普段自分の右側に居る獄寺が居ない事に気づき疑問を声に出せば

後ろで膝を付き俯いてる獄寺の声が耳に届き山本共に振り返る



「・・・――ぅぅつ・・・!」

「大丈夫?獄寺君」

「十代目、オレの事はお気になさらずに・・・楽しんで、来て、ください・・・」

「でも・・・」

「イヤ、本当に――・・・」



例の腹痛に苦しむ獄寺は辛そうに顔を上げるが

新奈の心配顔を見て引き攣った笑みを見せると其の背に彼の天敵が並び立つ



「仕方ないわね、隼人は私が看ているわ」

「アネ、キ・・・ぐうぁぁ!」

「隼人は昔からはしゃぎ過ぎると、すぐ熱を出していたわ、まだ子供ね」

「いや、それは違うと思うわ・・・」



ビアンキの顔を見て再び倒れた獄寺に

悟ったようなビアンキの言葉・・・新奈は其れに強く突っ込んだ



「ニーナさーん!」



テーマパークの方から先ほど走っていった四人が駆け足で戻ってくると

ハルが満面の笑みでビーチの存在と希望を主張する



「あっちにとっても綺麗なビーチがあるんですよ!遊園地の後で泳ぎに行きましょう!」

「へぇ、そうね、じゃあ――・・・」

「ニーナはまだ遊べないぞ」

「え?」



ハルの魅力的な誘いに乗ろうとした新奈にリボーンが釘を刺し、新奈は不思議そうに見返す



「入島手続きがあるからな」

「入島手続き?」

「受付にいって、着いたって報告するんだぞ、ニーナを代表者にしたからな」

「リボーンの招待なのに何で私が代表なのよ、勝手に代表にしないでよ」

「でも、このメンバーだとリーダーはニーナだと思うぜ」

「っな!?」



新奈の抗議も山本的まとめであっという間に代表にされる新奈



「この辺で遊んでるから早く行ってらっしゃい」

「早く行こう!ランボさんアレに乗りたい!!」

「はぁ・・・わかったわよ」



ランボとイーピンに手を引かれ奈々が新奈に手続きをして来る様促し新奈は泣く泣くそれを受けた



「リボーン、チケットかなにか必要ないの?」

「あぁ、受付でボンゴレファミリーの沢田って言うだけでいいんだぞ」

「分かったわ、じゃあ行ってくるわね」



新奈は教えられた受付へと一人で足を運んだ



「次の方、どうぞ」

「えっと、沢田です・・・ボ、ボンゴレファミリーの(くっ・・・一生言いたくなかった台詞だ)」

「ご推薦状かご招待状はお持ちでしょうか?」

「え?(リボーン・・・やっぱり必要なものあったんじゃない、覚えてなさいよ)・・・ありません」

「招待状なしと・・・そうしますと、マフィア審査が必要となりますね」



受付の女性にプライドを投げ捨てて言った言葉だけではなく必要なものがあったらしく

新奈は数度目を瞬かせると拳を握り閉め怒りを抑え

女性の言葉に答えると女性は手元のパソコンに何かを入力する



「え・・・?マフィア、審査?」

「こちらへどうぞ」



女性の口から出た妖しげな審査名に新奈の頬が引き攣るが

お構い無しに女性は新奈を鉄の扉の前へと案内した

扉を開き中へと一歩踏み入ると、葉巻を銜えた男の人が

装飾の施された椅子に偉そうに足を組んで腰掛、新奈へと視線を送っている



「誰よ・・・」

「彼は政府にコネクションのある人物です、ここに百万ユーロありますので」

「ひゃくまん、ユーロ・・・・・・(一億三千万円!!?)なっ・・・これを・・・どうしろと・・・」



女性に一般庶民の女子中学生が持つ事さえない札束を渡され手を震わせ冷汗を流す新奈

発狂寸前の新奈を気に留めることも無く女性は笑顔で説明を続ける



「彼に正しいやり方でワイロをわたしてください」

「ワイロに正しいなんてあるか―――っ!!!いいや、それより何の関係が!!」



新奈は怒りを露にまくし立てるが暖簾に腕押し、柳のような女性は笑顔で続ける



「お客様が、ボンゴレ十代目の沢田様であるかどうか、実技審査で証明していただく形となります」

「何それ・・・知らないわよマフィア間の正しいワイロの渡し方なんて・・・」



頭痛を覚えた新奈は片手で額を押さえた



「審査を放棄なさると、お連れの方共々海に放り出されますよ」

「笑顔でさらりと恐ろしい事いわないでよ!」

「では、始めて下さーい」



恐ろしい事を宣言した時と何ら変わらぬ笑顔で告げる女性に新奈は悪寒を感じた



「(何で皆が楽しんでる時に私だけこんな事を・・・
恨むわよリボーン・・・兎に角、やるだけやらないと皆一緒に魚の餌!!)」



新奈は微動だにしない男に向き直り手に溢れる紙幣へと視線を落とす



「(とは言うものの・・・ワイロって、どうやって渡すものなの・・・
時代劇みたいに『山吹色の菓子でございます』とか言って渡すの?
いいえ、彼はどう見ても外国人、時代劇の黄金のお菓子が通じるとは思えない)」



新奈は頭を振り混乱している為か目に薄っすらと涙を溜め男を見つめる



「(他に何がある?マフィア間ではワイロは潤滑油の様な物・・・
暗示するだけで、十分伝わるはず・・・あの人も人間よ、普通に考えればいいわ
そう『つまらないものですが』って、これは奥ゆかしい日本人にしか通じないんだった
じゃあ、えっと、えーと〜〜っ)Solamente a te in particolare」(あなただけに、特別に・・・)



新奈は頬を染め拙い知識から引き出したイタリア語で男性へと札束を差し出した

すると男は椅子から立ち上がり一直線に新奈の前へと歩み寄ってきた

そして札束ごと新奈の両手を包み込み口を開く



「Io sono contento.Io ricevei il tuo sentimento」(うれしいです。貴女の気持ち、受け取りました)

「?(もしかして、ちゃんとワイロ・・・渡せた!?)」

「はい、そこまで」



伝わったのかと感動する新奈であったが女性の終了の言葉の後に付いた言葉に新奈は目を見張った



「誘惑しても意味はありません、ワイロを渡せていないので失格です」

「え?ゆうわく・・・?何でそうなるんですか!?」

「アレは誰が聞いても立派な口説き文句です」

「ウソ!!?他にどうやって渡せって言うんですか!?」

「まず『このお金はワイロです』っと言わないと何のお金か分かりませんよ」

「そんな露骨に言っていい訳ないでしょ!?って言うか、趣旨は違えど一応受け取ったじゃない!!」

「あなたの身体目当てに決まってるじゃありませんか、若いからって調子に乗るなよクソビッチ」

「っ!?」

「残念ですが、失格です」



女性が手元のリモコンのスイッチを押すと新奈達が入って来た扉とは別の鉄の扉から

二人の警備員らしき男が両脇を掴まれ其のまま引っ立てて行かれる新奈



「あなたは不法侵入とみなされました」

「待ッテクダサイ!Oh Una cara persona!」(あぁ、愛しい人!)

「離してェェ!」



新奈の嘆きなど届くはずもなく警備員の二人は新奈を乱暴に放り出した



「っぁ・・・痛っ」



尻餅をつき痛みに息を詰め涙目で周囲を見回せば地下鉄の中に放り込まれたらしい

電車は走り出し新奈は立ち上がり窓の外を流れるコンクリートの壁を見つめた



「地下鉄?何処に行くの・・・?」

「裏マフィアランドだぞ」



新奈の疑問に答えたのは座席にゆったりと腰掛けている赤ん坊であった



「リボーン!!」

「ちゃおっス」

「貴方よくも・・・!」



リボーンを掴み上げるが本人は何処吹く風



「まぁ少し落ち着け」

「落ち着けるか!こうなるって最初からわかってたんでしょ!?裏マフィアランドって何!!?」

「行けばわかるぞ」



不満の捌け口が現れたため新奈は力の限り怒りをぶつけるが

彼のマイペース差に新奈は力なく座席に座りリボーンを其のまま膝の上に乗せた

しばらく走り電車が暗い道を抜けると岩や森、崖などの野性的な地形が目に飛び込んで来た



「着いたぞ」

「此処が?」



電車は止まりドアが開かれるとリボーンに促されリボーンを抱えたまま電車を降りる



「ほーい」

「よっと」



少々高さのある電車から飛び降りリボーンと新奈



「ここって、島の裏側?」



整備されていない自然な岩場、崖の向こうからは綺麗な海の望む

何の変哲もない場所を眺め新奈は首を傾げる



「よく来たなコラ!名乗れコラ!」



その声に振り返ると頭に鳥を乗せ身の丈以上のライフルを手に

軍服で身を固めた目つきの鋭い金髪の赤ん坊が仁王立ちしていた



「赤ん坊?」

「ちゃおっス、コロネロ」

「リボーン!?コラ!!」



赤ん坊はカッと目を見開き声と同時にリボーンに狙いを定め引き金を引くと共に

新奈の足元から宙へと跳ねレオンの変形した銃で相手の頭を狙撃し

再び地に降り立ったリボーン、あっという間の出来事に新奈は声も出なかった



「こいつが裏マフィアランドの責任者、コロネロだ」

「・・・ってなんて事するのリボーン!!」



新奈は倒れたコロネロへ駆けより触れようとするとコロネロは何でもないように身を起こした



「鍛え方が違うぜ、コラ!」

「ええぇぇぇ!!」



ライフルを背に背負い、落ちていた潰れた弾丸を手にリボーンへと歩み寄るコロネロ



「この軟弱な弾丸は間違いなくリボーンだぜ、コラ!!」

「そのどでかいライフル相変わらず趣味悪ィなコロネロ」



新奈は二人に歩み寄り顔見知りの様子に声を掛けると二人は同時に新奈へと振り返る



「(あ、色違いのお揃いのおしゃぶり)リボーンの友達?」

「オイ、そんなイイもんじゃないぜ、コラ!コイツとは腐れ縁だ」

「オレ達は同じ所で生まれ育ったんだぞ」

「幼馴染なんだ」

「リボーン、お前何しに来た」

「見学に来ただけだぞ、オレの生徒のニーナがここで修行する事になっちまったからな」

「はぁ?修行って何!?」

「この島では審査で失格して不法侵入とみなされた者にも
一度だけチャンスが与えられるんだ
その為に鍛える場所がこの裏マフィアランドだぞ
そして、ココに送り込まれた者を鍛える教官が
元イタリア海軍潜水奇襲部隊COMSUBINのコロネロだ」

「赤ん坊で元軍人!?(どんな経歴・・・)」

「そーか、お前がボンゴレ十代目かコラ!
リボーンが家庭教師では審査不合格は当然だぜ
だが安心しろ、オレがびっしり鍛えて再審査に受からせてやる」

「お手並み拝見だぞコロネロ」

「見てろよ、コラ!」

「くっ・・・嵌めたわね、リボーン」



新奈はここにきてリボーンの作為的な行為に感づいたがもう遅い

コロネロが早速はじめようと言わんばかりに視線を崖下へと向ける

荒々しく波打つ海崖のすぐ下では渦巻く海流



「あそこに渦巻きが見えるかアソコに飛び込めコラ!」

「無茶言うな!!そういった自由奔放的な所リボーンにそっくりね・・・」

「オレはリボーンより凄いぜコラ!
生徒が言うことをきかない場合はどうしてるんだ?リボーン」

「こーだぞ」



リボーンは新奈の腕に触れそのまま後ろへと捻り上げた



「痛っ!」

「だからお前は甘いんだぜコラ!オレならこうする!」

「っ!?」



すぐにリボーンの手が離されるとコロネロは新奈へと蹴りを見舞うが

新奈は顔の前に手を動かし辛うじて其の蹴りを防ぐ



「!?」

「甘いのはコロネロだぞ、そう簡単にオレの生徒を攻撃できると思うなよ」



互いに睨み合い二人の間に火花が散る



「・・・二人とも――・・・」

「やるかコラ!」

「臨むところだ」



二人の目が妖しく光るその目は新奈に向けられている

一歩後退する新奈に向かって駆けだすリボーン、同時にレオンがハンマーへと変化した



「え!?」



新奈は重心を後ろに掛け横に大振りされた其れを避けると今度はコロネロが駆けて来た



「アレがオレの実力と思うなよ!」

「わっ!!?」



投げ飛ばされた新奈は受け身を取り素早く立ち上がる



「当然オレも――・・・!」

「待ちなさい!人を使って張り合うな!!」

「オイ、リボーン」

「ん?」

「お前は黙って見学してろココはオレの仕事場だぜコラ!」

「オレも手伝うぞ、やっぱニーナはオレの玩具――・・・イヤ、生徒だからな」

「おもちゃ・・・とうとう玩具扱い・・・」



顔を手で覆い首を左右に振り意気消沈新奈にスパルタ教師達は甘くはなかった



「「お前はとっとと飛び込んでろ!」」

「っざけんな!だったらテメーで手本を見せなさい!!」



理不尽な教師達に切れた新奈は同時に飛んできた蹴りを交わすと

全力でリボーンとコロネロを蹴り飛ばし二人を崖下へと叩き落とした



「はぁ、はぁ・・・・・・・・・や、やりすぎた?」



肩で息をし我に返った新奈は顔面蒼白である

二人の声が聞こえず頬に汗が伝い崖へと駆けよる



「リボーン!コロネロ!!」

「「なんだ」コラ!」



相棒たる鳥の足に捕まるコロネロ、さらにその足にぶら下がるリボーン

海に落ちることなく浮上してきた二人に新奈は派手に転んだ



「・・・手本を見せる気ゼロかァ!!?」

「いたいけな赤ん坊を海に落とすなんて飛んでもない生徒だな」

「イタイケナ少女に手を上げるのはイイわけ!?」

「休んでる暇はないぜコラ!」

「いっ!?」



転んだ新奈の上から次々と岩が落とされる

慌てて起き上がり其れを避ける新奈に赤ん坊二人は楽しげに岩を放り投げる



「まだまだ行くぞコラ!」

「っ・・・きゃうっ!?〜〜ん?ヘビ!!!?」



慌てて駆けだすと落とし穴に足を取られ縁に手を置き落下を免れる

下から蠢く音に下に視線を向けると蛇の大群、新奈は青ざめ素早く穴から這い出る

次々繰り出される二人の赤ん坊の特訓

もはやイジメだと感じ、息絶え絶えに膝を着く新奈にやっと二人の手が止まる



「うむ、これだけやればだいぶ鍛えられたはずだぞ、「オレ達が!!」」



拳を突き合わせ笑みを向けるリボーンとコロネロに新奈の頬は引き攣る



「お前達がかい・・・こんなことして面白い?」

「何言ってんだニーナにはリゾートでのイイ思い出が出来ただろ?」

「イヤな思い出よ!!」

「!電車?」

「また新しい修行者が来たか」



再び線路に電車が止まり三人は其方に視線を向ける、開かれた扉からは



「十代目!」

「ニーナ!」



笑顔で電車から飛び降りる獄寺と山本の姿に新奈は目を瞬いた



「獄寺君、山本君・・・どうして」

「お前が中々戻ってこないから受付に行ったんだ、そしたら――・・・」

「アレに乗れば十代目のトコに行けるって言われたんで、お会いできてよかったッス!」

「心配してくれたのは嬉しいけど、来ない方が良かったかも・・・」

「「ん?」」



肩を並べ新奈に向かい合っていた二人は新奈の視線をたどり二人の赤ん坊を視界に入れる



「ついでにコイツらも鍛えてイイぞ、コロネロ」

「鍛え甲斐がありそうだなコラ」

「!?」

「「?」」

「コロネロ、リボーン!いい加減に――・・・」



鳴り響く警報に新奈は言葉を止めた



『敵襲!敵襲!皆さんは速やかに避難所へ避難してください!』

「敵襲?」

「なにかイベントでも始まるのか?」

「・・・リボーンさん、此処を襲って来るとしたら・・・」

「カルカッサファミリーだろうな」

「(骨組み家族?マフィアのネーミングセンスって・・・)
なんでマフィアがマフィアランドを襲撃するの?
此処はファミリーで資金を出し合って建設した所なんでしょ?」

「ココを造ったのはボンゴレを中心とした
同盟に参加してるファミリーだけだカルカッサは敵対勢力なんだぞ」

「っちょ・・・母さん達も居るのにこんな所で抗争なんて・・・ん?」



眉を寄せる新奈だが

リボーン達が首から下げているおしゃぶりが輝き始め其れに視線を向けた



「リボーン見ろ、おしゃぶりが光ってる・・・近づいてくるカルカッサに知り合いがいるぜ」

「ああ、こんなくだらねー事すんのはスカルしかいねーな」



二人は敵に知人がいるらしいが関係なしに島の表側に砲撃があった



「っ遊園地の方・・・」



煙が上がった場所に新奈の脳裏に表に残している母達の顔が過る



「しかもまずいぜコラ!
今日島の警護をするはずだったファミリーがボスの命日で本土に返ってる
この島には戦える奴はほとんどいない」

「そんなっ」

「シフト考えて組みなさいよ!命日なら前もって分かってるでしょ!?」

「もちろん大丈夫だ、オレがいる限り奴の好きにはさせん!
だが・・・お昼寝の時間だぜ・・・スピー」



とコロネロは鼻から鼻提灯を造り目を開けたまま眠ってしまた、頭の鳥も一緒に



「寝るの!?この状況で!!?」

「コロネロは放っとおけ
ママン達が心配だ、地下鉄でマフィアランドに、戻・・・スピー」

「・・・赤ん坊だから?赤ん坊だからなの!?」



リボーンの言葉は続かずリボーンまでも眠ってしまい新奈は溜め息を溢すと直ぐに線路をたどって駆けだした



「十代目!?」

「ニーナ!?」



獄寺と山本も新奈に続き線路道を走りだした



「線路を走るなんてめったにできない経験だよなコレもイベントなのか?」

「何を暢気な事言ってやがる、野球バカ!」



走りながら言葉を交わす二人に新奈は僅かに口角を上げると視界に光が見えてきた



「あ、出口?」

「急ぎましょう、十代目!」

「うん!」



トンネルから出ると新奈達の目の前に大きな城が聳えたった



「なるほど、此処に出るのか!」

「お城・・・?」

「マフィアランドのシンボル、マフィア城です」

「うぉ!デケー城だな!!」

「「「ん?」」」

「あれは・・・」

「避難者でしょう」

「ぁ、此処避難所なのね」



獄寺の言葉に納得しごった返す人々を流し見ると見慣れた人達が視界を掠める



「母さん!」

「あら、にーちゃん!」

「っ、アネキ・・・」



獄寺は素早く新奈の背に隠れビアンキの姿を視界から消した



「ニーナさん、ご無事だったんですね!」

「ニーナ姉、遅いから心配してたんだよ!」



新奈は特に気にする事も無く全員の無事な姿に胸を撫で下ろした



「みんな無事でよかったわ」

「ランボさんはもっと泳ぎたかったぞ!」

「イーピンモ!」



子供達も無事でホッとする。



「あら、これからもっと楽しい事があるわよ!」

「楽しい事?」

「ねェにーちゃん!このお城で敵マフィアを迎え撃つんでしょ?」

「え″!?」

「面白いイベントね」

「(山本君的・・・っていうかどうやったら
母さんみたいな純粋な大人に成れるのかしら・・・)そうね」



自分の母の純粋な乙女のような頬笑みに新奈は頷く他なかった



「母さん女性達は後方でご飯作るんですって!さぁ、行きましょ」

「え・・・」

「ママン、ニーナは別にやる事があるから料理は私達でやりましょう」

「あら、そうなの?じゃあ、行きましょう!」

「任せておいて」

「っ!!?ビアンキ!母さん達を守っててね!?ご飯作らなくてイイから!!」



中へと促されたがビアンキが新奈と奈々の間に入り流れで新奈は女性陣から外され

新奈は慌ててビアンキへと声を掛ける、後ろ手に手を振って奥へと姿を消した



「じゅ、十代目・・・おれ達はどうします?」



ビアンキが姿を消した事により獄寺はなんとか身を起こし新奈には二人へと振り返る



「・・・やれる事はやりましょ、目の前で争いが起きて
大切なものが危険にさらされてる・・・護る戦いだもの、負けられない」

「はい!」

「おうっ!」



新奈の強い眼差しに獄寺は胸の前で拳を握り、山本は歯を見せ笑う



「この抗争、アジアを仕切る我々ディフォンファミリーが指揮を執るぜ」

「待ちたまえ、連合軍の大将は我々伝統と格式あるこのベッチオファミリーこそふさわしい」

「おいおい、冗談じゃねーぞ、俺達ヌーボファミリーを差し置いて何を言ってるんだ」

「お前らは引っ込んでろ!」

「やんのかコラ!!」

「(大丈夫なのこんな纏まりの無い一団で・・・)」



髷の一団、細身の一団、ファンキーな一団の頭が

指揮権を巡り繰り広げる小競り合いに新奈は肩眉を上げる



「ボスなら!ウチの十代目こそ相応しい!!」

「獄寺君!!?(イヤッ!矛先向けられたくない!!私は兵士でイイから!!)」



耐えられなくなったのか獄寺が新奈の前に出て厳つい男達へと宣言すると



「「「あぁん!!」」」

「十代目だとぉ」

「どこの馬の骨のファミリーだ?」



一斉にその視線が向けられ新奈の顔は強張るが獄寺は自信に溢れていた



「ボンゴレで文句あるか!?」



ボンゴレの名を聞いてざわめくマフィア達



「あの小娘いやあのお方が・・・」

「アレが時期ボンゴレか!?」

「初めてみたぜ!」

「これはとんだご無礼を!」



全員が新奈に頭を下げた、あまりの光景に戸惑う新奈



「これで我々の大将は決まったな」

「え・・・」

「伝統・格式・規模・勢力!全てにおいてボンゴレは別格!!」

「(そういえば前にディーノさんもそんな事を・・・)」

「皆の者!!我らが大将ボンゴレ十代目につづけ――!!!」

「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」

「(はぁぁぁぁぁ!!?ボンゴレ権力ありすぎ・・・)」

「なっ言った通りだろ!ニーナはおれ達のリーダーなんだって!」

「当然!十代目ほどボスに相応しい人はいません!」

「もう言わないで・・・」



新奈は困惑し項垂れる






「来ましたね軽く片づけてやりましょう十代目!」



纏まった一団は活気づき、現れた黒のライダースーツ集団を迎え撃った



「果てろ!!!」



獄寺の投げたダイナマイトを合図にするように銃撃戦が始まった



「私の指示とかいらなくない?」

「あはは、で、このゲームどーいうルールなんだ?」



戦闘力の無い新奈は銃弾の届かない位置に素早く下がり

山本は浴びるほどの銃弾を軽く避けていた

勢いのあまりカルカッサファミリーは森の中に撤退するのを

連合軍は逃がさんとばかりに追いかける

新奈達も顔を見合わせ森へと踏み込むと

前を走っていた数人が吹き飛ばされ新奈達の前に投げ出される



「「「!!?」」」



木が大きな音を立て薙ぎ倒され全員足を止め身構える

目の前に現れたのは、ヘルメットを被った赤ん坊



「カルカッサファミリーの軍師スカル!!」

「え?(赤ん坊が軍師って・・・)」



連合軍の一人の言葉に新奈は目を見開き赤ん坊を監察した



「あ(リボーン達と色違いのおしゃぶり、じゃあリボーン達が言ってた知り合いって)」

「間違いない、あの紫のおしゃぶりはアルコバレーノの証」

「アルコバレーノ?」

「アルコバレーノとは虹の事
そしてマフィア界にいる七人の最強の赤ん坊を指すんだ」



男は親切に解説してくれたが新奈の疑問は晴れない



「・・・(骸もリボーンの事そう呼んでた、呪われた赤ん坊だとも・・・一体何なの?)」

「何者だろうが、オレが倒す!!」



まさに特攻隊長だと言わんばかりに前に出た獄寺は

ダイナマイトをスカルへと一気に投げるが

其れがスカルへ届くことなく撥ね退けられ爆破した



「弾かれた!?」

「!なに・・・後ろに何か・・・タコぉぉぉ!!?」

「スカルは巨大鎧ダコを操ると聞いた事がある」



爆煙の中からその姿を見せた小舟よりも遥かに大きな巨大蛸に新奈は声を上げると

最早解説者と化した男が蛸について付け加える

スカルが手を動かすと其れに呼応するように蛸は足を動かし連合軍を弾き飛ばす



「あの赤ん坊の指の動きにタコの動きが連動してる・・・すげー!どーなってるんだ!?」

「イヤっ感心してる場合じゃないと思う!」

「さあ、次は誰だ?」



いち早く気が付いた山本が感嘆の声を上げるのを新奈は思わずツッコム

スカルは両の手を前に翳し攻撃の構えをとり数人が怯み後退すると

新奈の耳に甲高い聞きなれた声が届く



「なんだ、そのタコまだ食ってなかったのか?」

「ん?」

「きっとうめーのに」



笑みを浮かべ木の上に現れ

新奈の前へと降り立つ小さなヒットマンに新奈は思わず安堵の息を漏らす


「リボーン!」

「何故ココにリボーン先輩が!?」

「(先輩?)」



年齢など変わらないだろう赤ん坊同士での序列に新奈は首を傾げた



「ちゃおっス、久しぶりだなスカル、おしゃぶりが光ったの気付かなかったのか?」

「ん・・・」

「せっかく会ったんだし一杯やるぞ、あのタコを刺身で」

「ばっ バカを言うな!



オレは今カルカッサファミリーのボスから命を受けている!!お前は倒すべき相手だ!!!」



「お前いつも誰かのパシリだな」

「お前だけだオレをパシリに使ったのは!!舐めやがって・・・」



この会話だけで二人の力関係は見えてきた

スカルは右手を動かすと蛸がリボーンを絡め捕り宙へと持ち上げる

連合軍から動揺の声が漏れ新奈もリボーンの名を呼ぶが

当の本人は平然とした顔でリボーンはレオンの銃でスカルへと銃弾を放つ

蛸の足で何とか防いだスカルだが左手に弾を受け撃たれた個所を抑える



「くっ・・・さすが早撃ちだな・・・だが片手あれば十分だ!」

「うっ・・・」

「っリボーン!」

「リボーンさん!くそっ」

「まずい!」



スカルが右手を翳した事で蛸の足に力が入りリボーンはレオンを取り落とし小さく呻く



「どうだ!オレはもう昔のスカルではないんだ!死ねリボーン」



スカルは其の小さな指で蛸に握りつぶす指示を送ったのだが

蛸は目を見開きスカルを見つめたまま動かない



「んしょっと」



蛸の力が弱まったのかリボーンは蛸の手からあっさり脱出



「何をしている!!どーして動かない!?」

「こいつ戸惑ってるよーだな、お前のそんな左手は見たことねーだろーからな」

「ん?・・・なんじゃいこりゃァァァ!?」



リボーンの言葉に己の左手に視線を落とすと

自分の頭並に大きく肥大化した拳にスカルは度肝を抜いた



「そっか、さっきリボーンが撃ったのは死ぬ気弾・・・ゲンコツ弾ね」

「オレの番だぞ」



命令の意味を解さず動かない蛸から素敵な笑みを浮かべスカルへと向かうリボーン

反撃開始と言わんばかりにリボーンは容赦無くスカル殴り飛ばした



「くそォ・・・こーなったら戦艦から城を砲撃しろ・・・」

「そいつは無理だぞ、コロネロも起きただろうーからな」

「なっ!?コロネロ先輩も此処に!!?」

『スカル様!全艦撃沈されました・・・』

「コロネロのライフルが火を噴いたな」



スカルは聞こえてきた無線に言葉を失い沈黙する



「ライフルで戦艦を沈めるってどんだけよ・・・
っていうかリボーン、寝てないで最初からやってよ!」



リボーンの華麗で無駄のない戦闘に直ぐに動いてくれればと抗議する新奈だが



「いーだろ、お前は戦ってねーんだから」

「!(そういえば、いつも馬車馬のごとくに
最前線に放り込まれるのに今日は守ってくれたの?)」



危険な目には遭ったが今回の戦闘を振り返り

リボーンの不敵な笑みに新奈は胸を高鳴らせる



「オレのパシリはオレがシメる」

「いやあぁぁぁ!やめてぇぇぇ!!」

「(でたっ リボーン美学!っていうか私の感動返せ!!)」



可愛らしい顔から一転鬼の形相でリボーンを睨む新奈だが無駄に終わるが

こうして大きな抗争は回避された



「さて、戦争も終わったことだし帰るぞ」

「えっ 私まだ遊んでない!?」

「ココに残りたいならコロネロに頼んでやるぞ、みっちり修業させてくれってな」

「それはいやァァァ!!」



結局、新奈はリゾートを満喫することなく帰路へとつく


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