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標的23 最後の死ぬ気弾
「フゥ太ー!どこー!?やっぱ、さっきの所右だったかな・・・」



フゥ太を追いかけ皆と離れた新奈はフゥ太を見失い眉間に皺を寄せる

木々の多い茂る中、茂みを手で避けながら薄暗い森の中を進むと



背後からの茂みの揺れる音に新奈は振り返った



「フゥ太?」



しかし、其処に立っていたのは小さな少年ではなく

新奈より長身の深緑の制服を身に纏った少年であった



「!黒曜生!?」



新奈は相手を見据え構えるが、相手は然程警戒した様子を見せず歩み寄ってくる



「助けに来てくれたんですね・・・」



優しい笑みを浮かべた藍色の髪を持った少年に新奈は驚き声を失う



「(六道君・・・!どうして・・・・・・)」

「ありがとうございます、ここから一生出られないかと思いましたよ」

「貴方・・・・・・人質なの?」

「フッ・・・こんな所にまで助けに来てくださるなんて・・・
きっと、選りすぐりの強いお仲間と一緒なんですね」



新奈の言葉を肯定するでもなく落ち着いた様子で微笑む骸に新奈は激しく違和感を覚えた



「(今まで人質にされていた人間が、ここまで落ち着いていられるかしら・・・
六道君の性格からして大人しく捕まってるような人ではないけど・・・これは、やっぱり)」



構えは解いたものの骸を見据える敵意を孕んだ新奈の目に骸もまた目を細めた



「(警戒心が強いのか?流石は女の身でありながらマフィアのボス候補に挙がるだけある)」

「・・・捕まっていたのなら、敵情を少しは把握してますか?」

「え?」

「雲雀恭弥という並中生知りませんか?学ランを着た人・・・
あと十歳くらいで大きな本を持ってマフラーをしてる少年・・・」

「今、質問してるのは僕ですよ?」

「答える道理はないわ、私の質問には答えられない?」

「僕が知りたいのは貴女の仲間の構成と―――・・・貴女の力なんですが?」



今まで前髪で隠れていた赤い瞳が新奈を捉える

左の青とは違う“六”と刻まれたその瞳に

新奈は直感的に確信したこの男が自分達の今回の標的だと・・・



「じゃあ今度はその仲間と会いましょう、六道骸さん」

「!!?」



言葉という名の爆弾を投下して新奈はその場から走り去った

その後姿に目を見開いていた骸は不適な笑みを浮かべる

新奈は皆と合流するべく来た道を全力で引き返していた



「(六道君・・・いいえ、六道骸・・・彼がフゥ太に何かしたのは明らかだわ・・・
早く皆と合流してこの事を伝えないと・・・・・・
彼が今回の首謀者の六道骸なら写真の男は恐らく影武者!)・・・っ!」



急ぎすぎた新奈は急勾配の下り坂に足を取られ滑り落ちた



「・・・危なかった、低くて助かっ・・・!?」



目の前は開け、新奈の視界には倒れ傷ついた仲間と

戦闘体勢のビアンキそして大きな鋼球を持った黒曜の制服を着た強面の男



「―――・・・写真で見た、六道骸!」



新奈は迷うことなく茂みから飛び出しビアンキの前に出た

突然の少女の登場に臨戦状態の二人は目を見開く



「!」

「ニーナ!」

「ボンゴレ、か・・・暴蛇烈覇 ぼうじゃれっぱ !」



新奈とビアンキへ鋼球が放たれるとその妙な気流に新奈は反応が遅れた



「っ何!?」

「ニーナ!」



ビアンキは咄嗟に新奈を庇おうと動き新奈は大きく彼女の名を呼んだ



「死ぬ気になるのは今しかねーぞニーナ、レオン・・・暴れてこい、ラスト一発だ」



スライム状になったレオンは銃へと姿を変えリボーンは新奈に最後の死ぬ気弾を放った

額に其れを受けた新奈はビアンキを押しのけ前へと出て、鋼球を止めてた



「ニーナ!!」

「暴蛇烈覇を止めただと・・・!」



小柄少女が素手で鋼球を止めたことに男は目を見開く



「復活!!!」



額の炎が一気に燃え上がり新奈の服は破れいつもの黒のウエアのみとなる



「・・・・・・死ぬ気で、貴方を倒す!!」

「最後の切り札だぞ、しっかり骸とケリ着けて来い」

「半端な強さでは、オレは倒せんぞ」

「来なさいっ!」

「剛蛇烈覇 ごうじゃれっぱ !!!」



体勢を低くし、鋼球を避け男との間合いを一気に詰め顎に拳を打ち込み男は宙を舞う



「あの子、あんなに・・・」

「此処に来て急激に成長してるぞ」



男は空中で体制を建て直し宙から鋼球を放つ



「飛蛇烈覇 ひじゃれっぱ !!!」



「っく!―――・・・こ、のォォォ!!!」



上空から迫ってくる鋼球を受け止める新奈、足元が崩れつつも其れをそのまま相手へと返す



「!?ぐはっ」



空中では身動きも取れず、男は返って来た鋼球をまともに受け、地面に叩きつけられる



「はぁ はぁ・・・」

「これで並盛に帰れそーだな」



瓦礫の中から男は立ち上がる



「球遊びなど、余興に過ぎん・・・」

「あの攻撃を受けて平気だなんて・・・信じられないわ」

「貴様になら全力を出せそうだ」



黒曜中の制服は破れ肌を露にする男

鋼球を宙へと放り、其方に視線を向けた新奈に向かって駆け出す



「オレが真に得意としているのは―――・・・」

「!」

「肉弾戦!」



咄嗟のことに新奈はもろに男の攻撃をくらい後ろへ飛ばされ

男は素早く新奈の背後をとり前へと蹴り飛ばす



「まだだ」

「っう!!」



前方に飛んだ新奈の頭を鷲掴みにし地面へと叩きつける



「あ”ァ”・・・!」

「フィニッシュだ」

「!?」



男は目を閉じ呟き、新奈は上空からの音に目を見開く

先程男が上空に放った鋼球が新奈に直撃した



「あっ、ぁあ・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「貴様等の希望は潰えた・・・次は誰だ・・・?」



男は新奈からビアンキとリボーンへと顔を向け言葉を投げつける

鋼球の動く音に男は再び新奈に視線を戻す



「なに!?」

「まだよ・・・」

「バカな!」



上空から相当の重量であろう鋼球を受けて起き上がる新奈に男は顔色を徐々に変えていく



「貴方は、悪人じゃない・・・私は分かる」

「!!貴様・・・何を言っている!」



新奈の呟きに男は動揺を露にした



「そんな弱い心では、死ぬ気の私は倒せない!」

「心だと!俺のことを分かったような口を聞くな!!
敵を倒し地獄の底に叩き落す・・・それが俺の本心だ!!」

「嘘だ!!」



二人は互いに向かいあい己の拳を打ち込む



「黙れ小娘!!」

「死ぬ気で倒す!!」



男の拳は新奈には届かず新奈の拳は男の腹へと入った



「うぅ・・・こ、この俺が負けただと・・・?」



地面に手を付く男に新奈は静かに言葉を紡ぐ



「攻撃した後、目を閉じていた・・・
相手が倒れるのを見たくないかのように、トドメをさすのに自分の拳ではなく鋼球を使った・・・
それは、貴方の心の中に罪悪感・・・迷いがあるから」

「なっ!」

「おかしいと思ったの・・・貴方からは恐い感じがしなかったから
ウチに居る子供みたいに、めちゃくちゃな事するけど・・・
何だか憎めないってそんな感じが、根は温かくてイイ子なの」



男は勢いよく顔を上げ新奈を見やる、額の炎が消え新奈は男を優しげな表情で見つめる



「!(こいつ、一見して俺を見抜いたというのか・・・成程、これがボンゴレの血)
完敗だ、おまえを六道骸が警戒するのも頷ける・・・」

「やはり貴方は・・・」

「ソレさえも気づいていたか・・・あぁ、俺は影武者だ」

「ニセモノ!?」



二人のやり取りにビアンキが驚きの声を上げた



「刑務所の写真に移っていたのは貴方だったけれどアレも?」

「あぁ、本物の骸は自分の姿を記録に残すようなヘマはしない
そして、六道骸・・・アイツは、俺の全てを奪った男だ!!」

「全てを奪った・・・?」

「何があったか言え」



新奈の訳が分からないと顔を歪め男に歩み寄ったリボーンが男に話しを促す

五年前の北イタリアでの出来事・・・北イタリア最強と呼ばれた男を残して壊滅したファミリーの話



「有名な事件だな・・・しかも犯人は今だに分かっていない・・・」

「俺だ・・・」

「え?」

「オレがやったんだ・・・この手で・・・!」

「どういうことですか?」



自身の手を見つめる男に新奈は尋ねる



「急に意識が遠のいて、気が付くと俺はいつも見に覚えのない屍の前に立っていた・・・一度や二度じゃない」

「そんな!・・・自分がやった記憶も無いんでしょ!?」



新奈が否定するように言っても男は自分がやったのだと拳を握る



「俺は・・・操られていたんだ!
あのガキに・・・!六道骸に!!操られていたんだ!!
いつしかオレは名も心も奪われ、ニセの六道骸となっていた・・・」

「それで全てに絶望し、戦うだけのモンスターとなったのね・・・」

「六道骸・・・それが人間のすること・・・?」



ビアンキの言葉に新奈は苦しげな表情を浮かべ夢で逢瀬を繰り返した少年の顔を思い出す



「ぶっ倒しましょう、十代目!」

「獄寺君!」

「心配かけてスイマセンでした・・・」

「大丈夫なの!?」

「はい、問題ないッス!」



獄寺の姿にビアンキは胸を撫で下ろす



「・・・ボンゴレ、お前なら出来るかもしれない・・・奴を倒す事が・・・
いいか、よく聞けボンゴレ、骸の本当の目的は―――・・・っ!!退けっ!」

「!・・・・・・っ!!?」



男は背後の気配に気づき、新奈を突き飛ばし庇うように、其れを受けた



「メガネヤローだ!何処に居る!?」

「もう消えたぞ、一撃離脱だ」



自分も受けた針の攻撃に獄寺は周囲を見回すがリボーンの言葉に苦虫を噛んだ

新奈は自分を庇い倒れた男に駆け寄る



「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

「口封じだな」

「そんな・・・目を開けてください!」

「散々な人生だったぜ―――・・・っぐぅ」

「気をしっかり持ってください!あっ・・・貴方の本当の名前は?
六道骸じゃない、ちゃんとした名前があるでしょ!?」

「・・・俺は・・・・・・ランチア」



と、途切れ途切れに自分の名前を言った



「しっかりしてください、ランチアさん!」

「その名で呼ばれると・・・思い出すぜ・・・・・・
昔の・・・オレの・・・・ファミリーをよ・・・これでやっと、皆の元に逝ける・・・な」

「そんな・・・ランチアさん!!!」



目に涙を浮かべランチアの名を呼ぶ新奈



「散々利用しといて不要になった途端・・・クソッこれがアイツらのやり口かよ!」

「人を何だと思ってるの?・・・六道骸」



獄寺とビアンキは眉間に皺を寄せ其れを見つめる、新奈は涙を拭いゆっくりと立ち上がった



「行きましょう、骸の所へ・・・」

「レオンはこの通りだ、もう死ぬ気弾は使えねーぞ」

「分かってる・・・だけど、六道骸は何とかしないと!!」

「フッ、そうか・・・ランチアはまだ死んでねーぞ」

「!」

「問題は針の毒だ、1時間以内に解毒剤を与えれば助かるかもしんねーぞ」

「本当?」

「解毒剤はきっとヨーヨー使いが持ってるわ」

「十代目、メガネヤローはオレが倒しますよ!」

「獄寺君、ありがと・・・」



木陰下にランチアと山本寝かせ



「ごめんね山本君・・・すぐ戻ってくるから待っててね」

「大丈夫、此処なら安全よ」

「ったく・・・これからってときに」

「行くぞ、奴はあそこだ」



突然聞こえた声の方向を見ると、一羽の黄色い鳥が飛びまわっていた



『バーズヤラレタ!カゲモヤラレタ!ミンナヤラレタ!ムクロ!ムクロ!』

「なるほどね・・・」

「あん中に奴が!」

「六道骸・・・」

「いよいよだな」


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