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標的6 ニーハオ ギョウザ拳!
「ふぁ・・・ちょっとのんびりし過ぎたな、ギリギリ」



洗面所で顔を洗おうと蛇口に手を伸ばす新奈の目に

洗濯籠に明らかに自分や母の物とは違う衣類が目に入り風呂場へ目を向けると



「タオルとって・・・」

「・・・はい」



シャワーを浴びていたビアンキが顔を出し

新奈は其れを渡し、顔を洗うと洗面所を後にした



「(使用中の札とか作ったほうがイイわね・・・)ん?」



お手洗いを済まそうとトイレの戸に手を掛けると開かない、ノックをしてみると



「ガーガーガー・・・ランボさんね、まだ出ないよぉ」



その声に新奈は本日二度目の溜息が漏れる



「自然と人数が増えて行ったわね・・・
(時間がないときに限って・・・辛いなァ)おはよう母さん、ご飯お願い」



学校の準備を全て済ませ食卓に着き母に声を掛けると

用意されていたパンの横におかずが出される



「いただきま・・・ちょっ!」



横からおかずの乗った皿が攫われ

小さな赤ん坊は其れを飲み込むように口の中へ入れた



「おかず・・・何するのよリボーン」

「マフィアの世界は弱肉強食、早いもの勝ちだ」



そして素早くレオンを使い新奈の手元のパンを奪い口に放るリボーン



「オレはお前を鍛えてやってるんだ、現実の厳しさを知って
少しずつ変わる努力をしろ・・・でないといつまでも弱虫のままだぞ」

「変わる努力とご飯は関係ないわよね?イジメに感じられるんだけど・・・」

「すぐにまた作るから」

「・・・もう時間無いからご飯いいわ、のんびりしてたのも悪いし、いってきます」



母の言葉をやんわりと断り新奈は鞄を手にそのまま学校へと向かった

しかし、育ち盛りの中学生が朝食を抜くのは辛いもの・・・新奈の腹は小さな悲鳴を上げる

空腹の中なんとも美味しそうな匂いに新奈は其方に目を向けると『点心』の看板を掲げた屋台



「珍しい・・・こんな住宅地に屋台なんて・・・点心・・・一個買って行こう」



赤いチャイナ服を着た髪を高い位置で三つ編みに纏めている子供の向こうに見えた

饅頭を見て新奈はサングラスを掛けダボダボの中華服を着た妖しげな男に声を掛ける



「美味しそう・・・すみません、一つください」



買った饅頭を一口食べると今まで食べたことがないような美味しさが口に広がる



「おいしい・・・餃子饅よねこれ・・・美味しい、後で歯、磨かないとな・・・ん?」



通り過ぎようとした家の門が開かれ中から犬・・・ドーベルマンが出てきた



「え”なんで繋がれてないの!?」



新奈が一歩下がると先程の屋台に居た赤チャイナの子供が新奈と犬の間に割って入ってきた



「危ない!」



新奈が手を出す前に子供は犬に向かって手を突き出す

すると犬は宙を舞い出てきた門の内側に下ろされた



「・・・どうなってるの?手も触れずに」



仕上げとばかりに門しっかり閉めた子供に新奈は声を掛けた



「ありがとう、助けてくれて・・・」



しかし、新奈が礼を言うと子供は眉間に皺を寄せ目を細める



「(あれ?怒ってるの?)あの・・・」



再度声を掛けるも、手を合わせお辞儀すると子供は何も言わず去っていった










「超能力?」

「うん・・・手も使わずに離れたもの浮かせたりしてたの」

「そんな事あるわけ・・・十代目何かを見間違えたんじゃないスかね」

「それはないと思うけど・・・」

「ニーナ!」

「っ!?何処から出てきてるのよ」



学校に来て山本と獄寺に今朝の出来事を話している中

自分の机から突如リボーンが競り上がってきて新奈は肩を震わす



「誰でもな・・・そーいうモノを信じる年頃ってのがあるもんだ・・・」

「人を痛い子みたいに言わないでくれる」



リボーンの言葉に青筋を立てリボーンの頬を引っ張った










掃除時間になり教室の床を掃く新奈の耳に京子の声が届いた



「ん?あ・・・あの子、なんで学校に・・・」



廊下に顔を出すと箒をもった京子とその横に立つ花の姿

そして今朝のチャイナっ子を見つけた新奈

聞くところによると昨日京子のお金を拾ってくれたらしい



「(へぇ、あの子・・・いい子だわ、ウチに居るのと比べたら月とスッポン)」



新奈の脳裏に馬鹿な仔牛と最強のヒットマンの姿が過ぎった



「(あれ?また顔、顰めてる・・・お礼言われてるのに、どうしてだろう)」



京子達と幾つかやり取りをしている中

子供は新奈に視線を向け手元の紙を見て何かに気がついたように

京子達に一礼すると新奈に近寄ってきた



「到屋頂来」(屋上に来てください)

「え?上に・・・?」



子供の話す縁のない外来語にジェスチャーでなんとか理解した新奈

其れを確認すると新奈の横を通り子供は駆け出した



「?」

「あの子もニーナちゃんの知り合い?」

「前の牛みたいな服の子とか・・・ニーナは変なガキに懐かれるな」

「好きで懐かれてないわ・・・(迷惑だもん)」



歩み寄ってきた京子と花に溜息混じり答える新奈

先程の子供が気になり早々に掃除を切り上げ屋上へと足を運んだ



「屋上・・・来てはみたけど・・・此処でイイのかな・・・って」



何故か構えながら点心を食べる子供



「ヨク来タ、熱烈歓迎・・・オ前、倒ス!」



片言の言葉だが意味は良く伝わった・・・新奈は頬を引き攣らせソレ関係かと内心毒づく



「今朝、ターゲットニ気ヅカズ助ケタ・・・一升、デモ・・・今度ハ、オ前・・・倒ス」

「やっぱりマフィア関係ですか」

「そうだ、そいつは凄腕と言われるヒットマンのイーピンだぞ、別名・・・人間爆弾と呼ばれている」

「物騒・・・」



屋上入り口上から現れたリボーンの言葉にポツリと呟き子供に目を向けた



「行ク!覚悟!!」

「!ぁ今朝の・・・超能力?」



今朝と同じ構えにちょっと胸を躍らせる新奈



「超能力じゃねーぞ、その技には秘密があるんだ」

「秘密?」



イーピンが新奈に嘗手を繰り出すと新奈は不思議な衝撃を受け宙に浮いた



「!!?・・・っ!・・・リボーン・・・っ!!秘密って痛っ!何っ!?」

「しかたねーな」



イーピンの手の動きに合わせるように地面やフェンスに叩きつけられる新奈

弄ばれる新奈に溜息混じりにリボーンは一発の銃弾を二人の間に打ち込むと煙のようなものがその場から晴れた



「・・・っ!何これ・・・ニンニク?」

「奴が放った気体の塊を砕いたんだ、これが奴の技の正体だぞ・・・技の名は、餃子拳」

「餃子拳・・・?気体って・・・そんなもので人を浮かせたりできるの?」

「イーピンはいつも食べている餃子饅のクサイ息を拳法で圧縮し
相手の鼻に送り込んで脳を麻痺させているんだ
それで筋肉が勝手に動き、まるで操られているかのように見える」

「・・・つまり、クサイ・・・拳法?私、ニンニクにやられたんだ・・・カッコ、悪い」



新奈はリボーンの説明に己の醜態を恥ずかしんだが

イーピンにはその言葉は己に向けられたモノだと感じたらしく

顔を俯かせ額から大量の汗を噴き出す、そして額に九つに印が表れた



「何?あの印?」

「筒子時限超爆のカウントダウンが始まっちまったな」

「ピンズって麻雀?」

「あぁ、イーピンは極度の恥ずかしがり屋でな
恥ずかしさが頂点に達すると頭にチューピンが現れるんだ」

「恥ずかしがり屋・・・?顔を顰めてたりって恥ずかしがってたの?」

「額の筒子は一つずつ減っていき
最後の一つになった時、全身から餃子ガスを一気に噴出に爆発するんだ
この破壊力は小さいクレーターが出来るほどなんだぞ」

「クレーターって本当に爆弾・・・」



冷や汗を浮かべイーピンに視線を戻すと出入り口から

小さな包みを持った京子がイーピンに駆け寄った



「あ、居たいた、コレ忘れて行ったよ」

「きょ、京子ちゃん危ない」

「ニーナちゃん?」

「え!!?」



イーピンの荷物を持った京子の登場に、離れるように言おうとするが

突如イーピンが京子の足にしがみ付いた



「イーピンはカウントダウン中、恥ずかしさのあまり人に擦り寄ってくるんだ」

「え?そんな状態じゃ吹き飛ぶじゃない!京子ちゃん、その子離して!」



京子まで駆け出しイーピンを引き剥がし放り投げる新奈

しかし思わぬ人物がそれを受け止めた



「十代目、此処でしたか・・・ん?」

「獄寺君!?危ないから早くその子を離して」



獄寺が受け止めた時にはもうウーピンまでカウントが進んでいた



「あ、はい・・・どうぞ!」

「えぇ!?私に投げないで!」



笑顔で投げられ受け止めてしまった新奈、再度投げると



「トース」

「戻さないでよ!リボーン!!」



リボーンのトスをさらにトスで上に放るこの時すでにサンピン、その向かう先に来たのは



「おーい新奈、先生が呼んでるぞー」

「山本君!?」

「ん?」



飛んで来たイーピンが野球ボールに見えたらしい山本の目つきが変わり



「キャッチャー・・・バックホーム!!」



っと新奈の方へ勢い良く飛んで来た



「えぇぇ!!?(駄目・・・此処で爆破させるワケには!)」

「お前がみんなを助けろ」



リボーンは新奈に死ぬ気弾を放った



「復活!死ぬ気で皆を護る!!」



イーピンを受け止め空高く投げると全員の頭上で大きく爆破した

そして新奈の手元にイーピンが落ちてきた



「はぁ・・・良かった」

「ほれ、新奈・・・制服だ」

「ありがとう・・・また一着駄目にしちゃった・・・もう」

「制服くらいボンゴレでいくらでも用意できるから平気だぞ」

「そういう問題じゃないわよ・・・」



獄寺の手で簀巻きにされたイーピンの懐から写真が出てきた



「?誰コレ・・・」

「恐そうなオジサンね・・・」



葉巻を咥えた不男の写真を新奈、京子、山本、獄寺でのぞき見る



「那个是?!イーピン倒ス」

「え・・・?私、って全然別人よ!?」



イーピンの言葉に目を見開く新奈

リボーンは状況を理解しイーピンに眼鏡を掛け写真を差し出し新奈と比べさせた



「別人!?イーピン間違イ・・・」

「どうやら超近眼らしいな」

「人違いで十代目狙ったのかこの野郎!許せん!!」

「なーに、ちょっとお使いの相手を間違えただけだよな、よくある事じゃないか」

「子供のお使いって・・・ふっ」



山本の言葉でその場は一気に和み新奈を含め全員声を上げて笑った










翌朝、休日の沢田家の朝食・・・



「(・・・どうして)」

「はいどうぞ、リボーンちゃんの新しいお友達も遠慮しないで食べてね」

「謝謝」



奈々から朝食を用意され一礼するイーピンに新奈が声を掛ける



「何でイーピンがウチに居るの?」

「イーピン、マダ未熟・・・日本デ修行スル事ニ決メタ・・・事情修行」

「そう、それでウチに下宿ってワケか・・・」

「ぎゃははは、ランボさん登場!ランボさんは朝ごはんを食べに来てやったもんね」

「いらっしゃいランボ君」



ランボの登場でイーピンが突然テーブルの上に乗り

その拍子に新奈の味噌汁がひっくり返った

被らないように避けたがお椀はテーブルの下へと落ちた



「鈍いぞニーナ、自分の食い物は自分で守れ」

「・・・できる辺り流石としか言えないわね・・・イーピンどうしたの?」



しっかり自分の食事を死守しているリボーンとビアンキに呆れつつ

イーピンに視線を戻す新奈



「――・・・ブロッコリーノオ化ケ、居ル!」

「(近眼にはブロッコリーに見えるんだ・・・)」



ランボはイーピンの言葉に乗りお化けの様にイーピンを追い掛け回したテーブルの上で・・・

新奈は残った食事を死守しつつも食べる気が失せた

そんな中チャイムが鳴り新奈は玄関の戸を開けた



「はい・・・あれ?」

「よー来たぜニーナ、獄寺も暇そうなんで声掛けてみた」

「山本だけじゃ不安スからね・・・むしろオレ一人で十分だっつーの」

「まーまー皆でやった方が宿題も楽しいだろ」

「そっか、ゴタゴタしてて忘れてた、宿題あったね・・・二人とも上がって」



山本と獄寺の登場に新奈は自分の部屋へと招きいれた

部屋の戸を開けると同時にイーピンとランボが新奈の部屋へと入っていった

先程からの追いかけっこはまだ続いているらしい



「!?コイツは・・・お前十代目の家で何してる!?」

「おぉ、コイツらも遊びに来てるのか」



新奈は苦笑いしか出ない、獄寺は二人に歩み寄り手を伸ばしランボを捕獲した



「このヤロー」

「ランボさんの邪魔すんな!」



とランボのオナラが獄寺の顔面に吹きかけられ獄寺はその手を離す



「このクソ牛!・・・待ちやがれ!!」



二人の追いかけっこに獄寺も加わる形になってしまった



「あはは、追いかけっこか懐かしいな、オレも子供の頃よくやったけ」

「完全に遊ばれてるわね・・・獄寺君」



獄寺がランボを捕まえ絞めていると



「何してるんですか、獄寺さん!」

「ぁん?」

「子供イジメなんて最低です!」

「またうるせーのが・・・」



ハルの登場で気が削がれたらしい獄寺はランボを捨てた



「ハル、どうしたの?」

「遊びに来ちゃいました、あ、また可愛い子が増えてる!」

「・・・焼売ノ、オ化ケ」

「はひ?」

「(もはや、近視って言えるレベルじゃないわね・・・)」



ランボは獄寺から開放されて尚追いかけっこを続けたいのかイーピンを煽るが

いつまでもやられてばかりではないとイーピンは攻撃を繰り出しランボは新奈のベットの上に倒れた



「が・ま・ん・・・ランボさんは・・・
もじゃもじゃ頭のランボさんは、お前みたいな変てこ頭には負けないもんね!」

「ランボ止めなさい!」

「お前なんか尻尾頭!しっぽ頭!」



危機を感じた新奈の静止の言葉も聞かず

イーピンを貶すランボイーピンの額から滝汗そして・・・



「カウントダウンが始まった・・・!」

「げっ」

「またあの危ねー遊びか?」



恥ずかしさが頂点に来ているイーピンは目の前にある新奈の足にしがみ付き

新奈と獄寺は慌てて其れを剥がそうとする



「!?イーピン離れて!!」

「離せコラ!!」

「小さい子に乱暴しちゃ駄目です!」



新奈の足からイーピンを引き剥がす行為がそう見えたのか

ハルは止めるが二人はそれ所ではなかった



「そんな事言ってる場合じゃねー・・・!!」

「っどうしたら・・・ん?ランボ何してるの!?」

十年バズーカを取り出すランボに新奈は思わず聞き返してしまうが

イーピンの額はリャンピンまで進み焦る



「ちょっもうリャンピン!どうしよう!!」

「こうしろ」



何処からともなく現れたリボーンはランボを蹴り

イーピンに十年バズーカを向けたピンクの煙が辺りを包む



「イーピンに十年バズーカを・・・」

「これで、爆発は未来に持ち越されたぞ」

「そうなると、未来のイーピンの周囲が心配ね・・・」



煙が晴れると其処には出前箱をもった可愛らしい少女が立っていた



「なんで・・・?出前の途中だったのにこんな所に居るのかな?」

「え?イーピンって女の子だったの!?」

「し・・・信じらんねー」

「誰だ?知り合いか?」

「可愛い子です・・・」



子供の姿のイーピンでは性別が判別できなかったが

すっかり成長したイーピンに目を白黒させる面々



「イケナイ、ラーメン伸びちゃうわ、川平のおじさんうるさいのよね」

「日本語・・・ちゃんと綺麗に喋ってる・・・」

「あ、沢田さんだ!こんにちわ」



時計から目の前の新奈へ顔を向けるイーピン



「イーピン・・・女の子らしく成ったね」

「なに言ってるんですか藪から棒に、褒めても何にも出ませんよ!」

「(恥ずかしがり方も普通・・・)イーピン、筒子時限超爆や拳法は・・・?」

「やだ沢田さん、もうとっくに辞めたじゃないですか!
今は大学に行く学費を貯めなくちゃいけない時だからバイト三昧です!」

「そうなの・・・」

「筒子時限超爆は拳法やめる時に師匠に封印してもらいました・・・キーワードと共に」



出前がある焦るイーピンを取り合えず玄関まで送る一行



「(本当に普通の女の子なんだ・・・人は、変われるのね)」

「じゃあ、私、出前に行かなきゃイケナイんで」

「ねぇ!しっぽ頭は!?」

「ランボ、泣き止んだの?」

「!!?・・・・・・・・・ブロッコリーのお化け・・・っあ!?頭が――!!」

「イーピン!?如何したの?」



ランボを見て頭を抱えて苦しむイーピン

次に顔が上がると額にはチューピンの印・・・即ち筒子時限超爆



「っ!?まさか封印のキーワードって『ブロッコリーのお化け』!?皆、逃げっ!!?」



イーピンは目の前に居た新奈に飛びついたことで全員逃げそびれる



「ニーナさんに何するんですか!?ニーナさんにはハルというものが!!」

「十代目から離れろ!」

「モテるなニーナ」

「モテ男が言うな!」

「はぁい」

「げっ、アネキ・・・ぐぁ!」



目の前をビアンキが横切りその場に倒れた獄寺



「獄寺の姉さんこんちわ」

「ねぇしっぽ頭どこ行ったの!?」

「離れて!離れて!!」

「ねーしっぽ頭は!!?」

「あはは、面白そーだな」



そしてイーピンの額の筒子はイーピンになり

沢田家の玄関前で大きな爆発が起こりその場に数人が倒れていた



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