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nvl・L
深夜の来客

キンコーン―キンコーン―




最後の客が出ていく。




深夜3時。

レジに立ち、ふと昨日のことを思い出していた。


(デイもさすがに今は寝ているだろうな…。)



バイトに入る5時間前、アパートの端の部屋を見ると部屋に灯りが灯っておらず、住人が不在であることを告げていた。

寝るには早い、出掛けているのか?

ずっとそんなことを考えていた。













キンコーン―キンコーン―





再び客の来店を知らせるアラームが鳴る。


蠍『…いらっしゃ『デーラって人いますか!?』

店の扉が勢い良く開き
深夜静けを消し去るようにヒールの高い音が鳴り響いたと思えば
サソリの挨拶も終えずに女が問いてきた。



蠍『デーラ…?』


突然の出来事に固まるサソリ。

(つか、この女失礼じゃね?)

目を強調させたメイクにパーマをあてた茶髪。肌の露出も半端ない、胸も頑張って盛ってるようだ。

まぁ今どきの子だなーとは思うが、さっきの態度に常識を持ち合わせているようには見えなかった。





女『デーラっているはずですよ!?ここでバイトしてるって…今日は来てないの!?』


女の言葉に少々考える。
この店にはデーラという名前の人物はいない。
もちろん勤務時間帯が異なり、2年経った今も顔を見たこともない昼クルーもいるが
名前くらいなら知っている。
それには自信があった。

だが、この女を見るに探し人はここにいることは確信を持っているのだろう。

では一体誰なのか……

ふと思ったことを口にする。





蠍『…デーラ……。

もしかしてデイダラのことか?』


口にした言葉に女は戸惑っているようだった。

女『……デイ…ダラ?』

女はしばらく考えた後、写真を取り出した。



女『この人なんだけど…。』



おずおずと女は写真を見せた。

写真を見て驚く。金の長髪に髷を結った青い瞳を持った男が写っている。

紛れもなくデイダラだ。



それより驚いたのは、その雰囲気であった。

どうでも良さそうな冷たい瞳、カメラ目線というより睨み付けているようにも思えた。

写真の中のデイは、今までに見たことがないくらい冷たい表情だった。



女は俺の様子を見て、探し人はここにいると分かったみたいだ。



女『デーラ…デイダラはここにいるのね?
今日はいるの!?いない?
バイト先なら連絡先分かるわよね?ねぇ?
家はどこなの?』



蠍『ちょ…いや…』



質問に戸惑う。まだ頭の整理がつかない。



鼬『デイダラ君は今日休みですよ。それにプライベートな情報をお客様にお教えすることはできません。』


突然発せられた声にサソリは少し安堵する。
売場の異常に気付き駆け付けたのか、イタチが現れた。





女『客じゃないわ!あたし、デイダラの彼女なの!だから…』



鼬『彼女さんでしたか、それは失礼しました。
しかし…本当のことをいうと、デイダラ君はここに勤めて日が浅い。
仕事内でしか話しをしたことがないので、プライベートのことは分かりません。』


取り乱した様子の女に構わずイタチは冷静にかつ的確に返答する。


女『連絡先も分からないの?』



鼬『ええ。基本のやり取りは店長が行っていますし、履歴書も店長の管理下ですからね。本人から聞くしかないです。』


探し人がここにもおらず、また連絡先も分からないと言われたらどうしようもない。
女は諦めたのか急に大人しくなった。


女『本人がいたら苦労しないわよ…。
いいわ、邪魔したわね。』


そう言うと女は足早に店を出ていった。



鼬『サソリ、大丈夫か?』


女の出ていった扉を見つめ固まっていたサソリにイタチは声をかけた。
『あぁ。何だったんだ、あれ。』
と、未だに固まるサソリに、イタチは笑う。


鼬『んー、デイダラの彼女?』


蠍『お前信じたのかよ。』


イタチの言葉にあり得ないと、漸く扉から視線を移す。


鼬『んな訳あるか。本名も連絡先も知らない彼女なんてナンセンス。
だが、あぁでもしないと女はずっと居座るだろう。』


蠍『そうだな。今日はお前がいてくれて助かった。』


鼬『だが、まだ終わってないぞ。あの女また来るだろう。
しかも明日デイダラがシフトに入っている。…どうする?』


蠍『…終わったら、デイの家に行く。』


鼬『そうだな、一度話してこい。』


蠍『あぁ。あと聞きたいこともある……。』


鼬『聞きたいこと?』


蠍『あの女、デイの写真持ってた。たぶんちょっと前のだと思うけど……。』


鼬『……。』


蠍『…冷たい目にしていた。』


鼬『デイダラの過去に触れるかも知れないってことか。』


蠍『あぁ…。』


鼬『むやみに聞き出そうとはするなよ。
デイダラが話そうとすることだけ、受け入れてやれ。』


蠍『…分かった。』


なんとなく感じるのは、デイダラの過去はあまり良いものではないということ。

勿論、それを受け入れる覚悟はある。

だが、そのことを再び掘り起こさせることで、デイが傷付くのではないか。
それが一番怖かった。


正直、余計なことをしようとしているのかも知れない。


でも、あの女とデイダラに過去に何があったのかは知らないが、接触することでデイが傷付くならば、俺も一緒に……。


俺がお前を支えてやるよ。



あきゅろす。
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