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もういっそ壊してくれ
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 俺は一人、化学実験室へと向かった。担当教師に遅刻の詫びを入れ、ドアから1番近いグループに混じる。それぞれ6グループに別れ実験台を取り囲んでいた。そして“今日の授業テーマ”の確認のためホワイトボードを見やると、アキの姿が自然と目に入った。

 ひとつの班を挟んだAグループは、その横顔しか見えないが、酷く落ち込んでいるように思えた。


 アキの表情は
 生野との過去や
 つい先程まで一緒にいたことのすべてにおいて、口外しない決意を
 より一層強固にさせた。


 人一倍繊細なアキに、余計な不安を煽りたくはない。


 実験に使用する液体洗剤の蓋を空けたと同時にガラッとドアが開く。

 反射的にそちらに目を向ければ、入口付近に生野が立っていた。遅れてきたことに何の躊躇も感じてない、憮然とした顔つきにドキリとする。


 実験に取り掛かっていた、ほとんどの生徒が手元を止め生野を眺めた。だが、皆の視線がまったく気にならないのか、教室全体をゆっくり見渡すと俺の班を通り過ぎた。


 俺は息を呑んだ−−。


 生野はA班を選びアキの隣に立ったのだ。そこにいるのが当然かのように−−−。



≡≡≡≡≡≡

「滝沢ぁ、加水分解の“かい”って漢字これで合ってるよなぁ?ってお前何トリップしてんの」


 実験報告書に記入しながらの指摘に、俺はようやく我に返る。

「いちいち聞かねぇで、携帯で調べろよ」

 冷たい反応をすれば少しだけムッとされるがどうでもよかった。


 気になるのは
 何度も目で追う
 あの二人。





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