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もういっそ壊してくれ
9


 カッと頭に血が上り、腕を上げさせられたままの状態で相手を睨みつける。すると耳元から離れた生野の表情からは、さっきまでの喧騒が消えていて、俺は途端に屈辱感に包まれた。


−−何なんだよ、こいつ


「本気にしてんじゃねぇよ、バカだろ」

「、のクソ野郎…」

 そんな強がりにフッとすり笑った生野は手首を解放させると、そのまま背を向け降りてきた階段を戻っていく。


「生野……!」

「あいつに告られた。
だから付き合ってんだよ」


 振り向かない相手にアキとの経緯を吐露されれば『告られたら、誰でもいいのかよ』と意見したい気持ちすら抱く。


「ア、アキには言うなよ…俺と、付き合ってたこと。
絶対言うな」

「…」


 何も言わないことを肯定と解釈した俺の手首が、今頃になりジンとした痛みを伝えた。生野が壁へと消え足元の教科書を拾おうと腰を下ろす。


 目には見えない疲労を感じる。ほんの少しの生野との会話は、体力を消耗し怠さを生んでいた。

 そして、しゃがんだまま辺りを見渡すと−−あの頃の自分を思い出さずにはいられなくなってしまった。



−−1ヶ月前、俺は生野に告白した。この場所で−−−


 キスをした。


 セックスをした。


 背中を強く抱きしめた。


 好きだと、思ったんだ。


 いつかまた、あの恋慕を抱くような人間と出会えるのか。

 出会わずに死んでいくのか。

 初めて生野を見た、あの瞬間を忘れるんだろうか。

 一生忘れられないんだろうか。



『生野くんってどんな人?』


−−アキごめん、俺にもわからない

 俺も聞きたいんだ。


−−生野



−−俺を好きだった?





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