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もういっそ壊してくれ
5


 翌日になり、生野は現れた。


 顔を出した瞬時からクラスの男共が我先にと取り囲む。そして親鳥からの餌を待っていた雛のように、口をパクパクと揃え出した。


『生野っ風邪完治したんか?』
『俺っち心配したんだゾーー』
『顔、ほんのり赤ぇじゃん…そのツラも、たまんねぇ』


 生野は、そんな取り巻きには興味なさ気に、少しフラつきながら自分の席を目指し、ずっと凝視していた俺を横目で捕えた。

 その流し目の淵が僅かに濡れているように見え、具合の悪さを表現していた。


 すぐに俺への視線を解放させ自席へと辿り着く。そして趣ろに担いでいた軽そうなバッグを机上へと投げ出し、それを枕に平伏した。


「生野っボロボロじゃねーかよっ…!!」

 三浦が血相を変え駆け寄り、肩を軽く揺すり、相手の反応を待っている。

−−!!!


 俺は言いようのない胸苦しさで、少し開いた口端が僅かな痙攣を起こした。


『保健室、保健室行ったほうがいい』
『おぅ連れてこーぜ!生野とりあえず、まずは立て』
『ぅわっ。やっぱ熱あんじゃん』
『あっマジだ!あっちぃ』
『なんでこんな無理して…』


 三浦を中心に、かいがいしく世話を焼こうと騒ぐ連中、無反応を貫くもののベタベタと身体を触られているのにも関わらず、抵抗一つしない生野に嫌気がさした。


 そして堕ちそうな生野に対し、恋女房さながら立ち上がらせる三浦を止めた――。


「連れてく必要ねーだろ。
生野、お前すぐ帰れよ。自分の立場わかってねぇみたいだから言うけど。
なんでそんなんで出てきてんだよ。風邪酷いんだろ?誰かに伝染ったらどーすんだよ。
フツー治るまで出てこないのが常識だろ」


 すると――平伏していた生野が怠そうに半身を起こし、俺の台詞にだけ反応を示した。

 そして肩に置いてある手を無言で払いのけ、俺を睨み据えた。


「んな熱くなんなよ…滝沢」


 払われた手を淋しそうに撫でる三浦を、俺は雑に無視をする。


『なに気取りだよ…急に』
『留亜さんてば、反抗期?八つ当たり?どっちにしても醜いなー』
『部外者は口出し無用!』
『俺らは生野の介抱すんだから…したいんだよ、させろ、邪魔すんな』


−−くっだらねぇ…




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