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もういっそ壊してくれ
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 復縁した翌日から生野の生活態度がガラリと変わった。遅刻や早退などを一切しなくなり、授業も欠かさず出席するようになったのだ。

 相変わらず教科書を出さなかったり、肘をつき校庭を眺めていたり、堂々と寝ていたりする。しかし端から見れば、ようやくクラスや環境に馴染んだように映るだろう。

 捕らえどころの無い生野の、その突然すぎる変化に、違和感を感じているのは勿論俺だけではなかった。


『生野、急激にマジメになってね?俺としては嬉しい限りですが!』

『イケメンがいるだけで授業が楽しくなるのは必然』
 
『同意!!』

『ようやく溶けこんで下さったのか…あの生野と同じ空間を共有できること、すなわち奇跡!』

『無遅刻無欠席の生野を祝して、ばんざーいばんざーいばんざーい』 


 歓喜の声が教室中に轟き、まるで祭騒ぎだ。だが生野本人は案の定、我関せずの態度で一人超然としている。


 男子生徒によって囲まれ万歳三唱が行われている最中、椅子に反り返りイヤホンから音漏れするほどの大音量で音楽を聴いている。


 例の気まぐれか、誰かに諌まれたのか、単位の心配か真相は分からない。俺は生野がすぐ近くにいる、それだけで心強く思えた。


 しかし万事順風満帆で、すべてが元通りという訳ではなく−−。


 休み時間ともなればアキ目当てに男が群がる。以前に生野と付き合っていた、ということは同性愛も範疇になるという意味合いだ。その為、生徒は意気揚々だ。アキを気遣う声、自分をアピールする声、様々だがすべてが好意的だった。


 そしてアキ自身も、彼らを蔑ろにすることはなく、愛嬌たっぷりの可愛らしい笑顔を振りまく。


 体育館内で起こった事件は、誰も知らないのだろう。親友に裏切られた不憫で可哀想なアキが傷心を抱えつつ、それでも登校する健気さが、加護欲をそそっている。


 アキは、悲劇のヒロインのような存在を、確実なまでに物にしていた。






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