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もういっそ壊してくれ
8 河合アキside
 

 僕には怒りや憤りを押さえ込む術が見つからなかった。


「抱き合ってたくせに嘘つくな!!ずっと騙してたくせに…!!」

「だから裏切ってたのは俺。

こいつは何もしてない」


 顔色ひとつ変えない生野くんが冷静に言い置き、転がっている留亜を眺める。締めきった密室、留亜の額には湿り気を含んだ小粒の汗が浮かんでいた。

 
「どうして、かばうんだよ…!いっつも留亜ばっかりじゃないか!!僕は、僕はいつも」

「どこが。あんたにはいんだろ。あんたに注目されたいがために、陰湿でネチネチ虐めまくるゴキブリ以下が山ほど。さっきの、あんな汚ねーのどっから集めてきた」

「!!」

「ドブみたいなの使わねえで、一人で俺にケンカ売るくらいの根性持てば?

憎いなら堂々とやり返しにこいよ」


 時間が気になるのか、つまらないのか、ついに生野くんは携帯電話をタップし始めた。


「ど、うして僕と、付き合ったりしたの…」


「そんな性悪って知らなかったからじゃねぇの?



ボコられてるとこ見て気持ち良かっただろ…?」


 そのシニカルな疑問符を、否定できない自分が存在している。


「お、怒ってる…?」

「…」

「…留亜をこ、んなふうにして…」

「関係ある?」

「…」


 僕には無関係だということ−−彼の一言に痛打を浴びたようなショックを受ける。


 そして話は終わったと言わんばかりに留亜の傍へと戻り、スムーズに横抱きにすると一度も視線を寄こすことなく体育館を後にした。


 あの魅惑的な瞳は留亜だけを映し、長くしなやかな腕で留亜を抱き上げる。僕は、それを、ただ呆然と見ているだけだった−−。






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