[携帯モード] [URL送信]

もういっそ壊してくれ
6 河合アキside


 綿埃がまんべんなく広がる床、そこに横たわる留亜の意識は既になくピクリともしない。生野くんは一見すると動揺など微塵も見せずに近づいた。

−−!

 そして、その場にしゃがみ留亜の脇に腕を回し、胸に引き寄せ身体を座らせる。さらに片膝をついた体勢で顔を覗き、額に張り付いた塵を指で何度も払った。


 それはまるで僕の存在を無視するかのようで、はらわたが煮えくり返る。


『しょ、生野−−!!』

『なんでバレたっ!なんで、ここが…』

『知るか!!滝沢は連れていくな!!まだ用事は終わってねえ』


 おろおろと狼狽え萎縮しながらも、大声だけで威嚇しようとする三人。僕の手前、どうしても格好をつけておきたいらしい男たちを、冷静に止めた。


「あの先輩方…すみませんが、僕らだけにしてもらえますか?
いい機会、ですし生野くんと少し話したいです…」


 親衛隊−−その存在価値を心中では嘲笑いながらも利用しない理由が見当たらない。


 そして体格がいいだけで、見かけ倒しの男たちが立ち去った。薬物を使用するなど、アピールにしては低俗でお粗末すぎると嫌気がさす。
 

−−レイプするほどの勇気もないくせに、ほんと意味不だよ

−−これだから低脳は


 しかし、このような危機的状況には慣れているのだろうか、生野くんからは動じる気配が一切伺えない。ただ一度だけ、男たちが御丁寧に閉めた扉を眺めた。


 留亜をゆっくりと床へと戻し、背後の壁に気怠そうに寄りかかると、感情を消し去った双眼で僕を見据える。


 別れて以来に見る、かつての恋人は誰もが崇める 生野 真崎だ。先ほどの輩など歯牙にも掛けない神々しさを備え、他者を一蹴する。何だかゾクゾクするような興奮や緊張に肌が粟立った。


「ねえ覚えてるよね…?放課後、僕たち一緒に帰る約束してて。
けど、携帯の充電がちょうど切れて留亜が白状したでしょ?
『生野くんと付き合ってた』って。

あのあと僕、気持ちの整理がしたくて屋上に一人でいたんだよ…。

…戻るまで、生野くん僕を待っててくれたよね…?」


 すると返ってきた第一声は、相変わらずの平静たる声だった。


「それがなに」






[*back][next#]

6/22ページ

[戻る]


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!