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もういっそ壊してくれ
3 河合アキside


 祈りは天に通じた。進級により、僕はあの生野くんとクラスメイトになれたのだ。

 しかし、これは単なるきっかけに過ぎない、チャンスを活かさなければ。他力本願によって与えられた機会に僕自身が独行する番だった。

 放課後、留亜に先に帰ってもらい一人教室に留まった。


 今朝一度だけ見たが、どこかに雲隠れしていた生野くんが現れたのは夕日が沈む頃−−。


「生野くん…っ」


 バッグを肩にかけつつ、無言のまま此方へと視線を寄越す。目が合う、そのごく自然なことさえ感激し僕は俯いた。


「つ、つ、付き合ってる人って、いますか…?」


 そして吃りながら尋ねれば一瞬間苦々しい顔をされたが、目線を下降させている僕には分からない。


「僕…あの、ですね」


 生野くんは取りだした携帯を弄り、興味を全く示さなかった。もし急いでいるのならば、ここで引き止めるのは申し訳ない。


「つ、き合って下さい…」

「…」

「ダ、メですよね…やっぱり……わ忘れて下さい…僕は男だし。すみませんでした」


 勇気を持って視線を上げても、顔の表情が変わらないので真意を汲み取ることは不可能だった。いてもたってもいられなくなった僕は、その場から逃げるように廊下へと走り出す。すると


「ちょっと待って」

「ぇ」

「付き合うんだろ」


「!!!します…あ、よろしく、よろしくお願いします…」


 そして、彼は僕とは反対側の扉を開け教室を後にした。


−−良かった、すごく嬉しい

−−だけど本当に無表情なんだ…全然動揺してなかったし…

−−笑ってもカッコイイのかな、どんなことで笑うんだろう。怒った顔も見てみたいな…

 
 居なくなった生野くんの面影を思い出してみる。
 

 ほんの少しだけ、疲れているように見えたのは気のせいだろうか−−。感情を示さないということは既に承知済みだが、どこか覇気を失っているようだ。そして、以前に比べると若干痩せたように思えた。






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