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もういっそ壊してくれ
2 河合アキside


 一人の生徒の叫び声をきっかけに、皆が一斉に廊下へと飛び出した。その廊下では唸り声や、黄色い声援などがあちこちで飛行する。


「ほんとだ!河合、彼だよ!俺が言ってたのっ」


 窓枠にしがみついた委員長に近づき、少しだけ背伸びをする。

 そして委員長のプルプルと震える人差し指を辿れば、生徒達によって膨らんだ塊がこちらへと近付いてくる光景に驚た。

 その群衆はまさにヌーの大移動、よく見ればA組の三浦くんも混ざっていた。


「あれだよ!中心の男、

あれが、



生野 真崎!!!」


−−!!!!!!


 群がるクラスメイトの隙間から彼を一見した瞬間−−ぎゃあぎゃあ、と煩かったはずの大歓声が一斉に止んだ気がした。

 自分の魂が喧騒から抜け出したかのようで、彼以外はぼやけてさえ見える。


≡≡≡≡≡≡


 その日を境に、学校中が彼の話題で持ち切りとなった。男子校で女性に疎い人たちは勿論のこと、いわゆる異性愛者までがざわめき立ち、至るところで喘いでいる。


『これはヤバス!俺ホモじゃねーのに…女子大好きなのに…男が生野が頭から離れていかない、うぅ』

『おい誰か告ってこいよ。生野が男もイけるのか聞いてこい。生野見ると股間が疼いて仕方ねぇっ。勇者はいねぇか勇者はーーっ』

『100無理。話しかけても全部シカトするらしいよ…全員無視、華麗にスルー、誰もイケメン生野の目に映ってない。あきらめて死ぬがいいよ。お前も…俺も』

『おぉ…なんというお方だ。人間スキルを越えておられる。生野は神だ。俺様の後光を放つイケメン神。神が降臨された。このようなゴキブリ男子校に舞い降りるとは奇跡ほかならない』


 皆が巻き込まれている。


 生野 真崎という、たった一人の人間に−−−。


 僕は同性愛者ではない。だから初めて知った恋という感覚に戸惑ったが、皆の反応を見れば自分は異常ではないと安堵することが出来た。

 授業の内容も把握できないほどに、僕の心は持っていかれてしまった。

 そして用もないのに1-A近辺へと何度も足を運ぶ。もう一度会いたい、また会いたい−−その気持ちだけが僕をつき動かした。

 帰宅してもそわそわと落ち着かず、いつからか僕は夜空に向かい祈るようになっていた。


−−どうかチャンスを下さい

−−僕に、勇気を下さい








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