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もういっそ壊してくれ
7


「もう何だよ、これ」


 俺は一人屋上にいた。授業をサボり落ちつく場所を探していたが、他に思い当たらなかったからだ。ガシャンと音を立て背中をフェンスに預け空を仰いだ。


 生野 真崎が転校してきたのは昨日。
あんな綺麗な男を初めて見た。大きな漆黒の瞳に目を奪われた。
あのルックス。
低いテノールの甘い声。
雰囲気。
匂い。


 生野の全部が魅力的で、もうどうしようもない。ー口では言い表せない程の動揺に俺は戸惑い、溜息を吐く。


 そして生野のことを考える度に早鳴りする箇所に手を宛てた。


「だから、何だよこれ。なんで俺が、んなドキドキしなきゃなんねーの」


 トイレの場所を聞かれて以来、それからは何の進展も展開も接触すらなかった。あの後の休み時間は全て、生野目当ての欲目集団に奪われたからだ。授業が終わると同時に、腕を痛いくらいに掴まれ教室から連れ出される。


 それは生野と俺を近づかせない為−−。大層な理由もないのに引っ張られていたら馬鹿でも察しがつく。連れションしようだとか、英語担当教師に呼ばれてるから一緒に行こう、あ、お前じゃなくて井野だった悪ぃ悪ぃとか、どうせ三浦の陰謀だろう。


 昼休みになっても幼稚な“嫌がらせ”は続いた。


「お前誰?同級?どこ行くんだよ、つか手離せ。地味に痛い」


 見覚えのない男子に右手首をガッチリ握られ、そこは踊り場だった。通りすぎる奴らの奇怪な視線が煩わしくてたまらない。


「森下 カズヤ。A組。同じ1年ね。行き先は滝沢決めていーよ!
手離したら逃げちゃうでしょ?だからダメ」


 ニカッと白い歯を見せつけるように笑い、俺は嫌悪を剥き出しにした。

 だが−−−。

「言っとくけど、5時限予鈴鳴るまで教室には帰さないから。だからさ、俺とご飯食べに行こう?」


 人を拉致しておきながら一緒に飯?まるで悪びれもない飄々とした態度に我慢が効かない。


「断る。お前から三浦に言っとけよ。
俺は女好きで男なんか興味ねぇ。だから…生野、も絶対に好きになんねーよ…」


 不快感を隠さずに言い放ちながら、何故か虚しくなっていく。


「そ?それって生野は滝沢の範囲外ってことだよね?ん安心した。
三浦にはちゃんと伝えとくから、も戻ってもいーよ。滝沢またね」


 あっさり手を解放すると森下カズヤは踵を返した。


−−三浦、三浦は完全なノンケで女好きだろ?お前、ホモバイじゃねーのにな…。なのになんで生野に固執してんだよ…







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