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もういっそ壊してくれ
3


 しかしクラス全員の眺望を集めている当人は、躊躇することも動揺することもなくまるで無反応だった。


 そして無表情を維持したまま視線だけを少し下方へ落とした。もう慣れた、といわんばかりの動じない態度が魅力を倍増させている。


 とにかく胸の高鳴りが止みそうにない。


 今までこんなことあっただろうか。


−−思い出せねぇ


 俺の眠気は完全に吹き飛んでいた。



≡≡≡≡≡≡


 1時限目数学の授業が始まった。生徒は一旦通常通りに授業を受けているかに見える。しかしある場所が気になって、その方向をチラチラ見ては隣同士でニヤニヤ話したり、身体をできるだけ小さく丸め何やら机下でモゾモゾと肩を揺らす輩もいた。


『おい、こんなとこでヌかねぇよな。手動かすなよ』


 口に出さない代わりに軽い溜め息を吐いた。


 生野 真崎は窓側の後ろから2番目の好位置に座っている。だが、転校初日にも関わらず教科書も出さず肘を机上に置き、掌に顎を乗せ窓の外をただ眺めていた。


 教室の真ん中に位置したこの席からは、そんな生野の横顔しか垣間見ることが出来なかった。


−−アイツ絶対気づいてる、みんなが盗み見てること。俺のチラ見もバレバレかもな…


 俺は二度程振り返り存在を確認していた。だがもういい加減、黒板に書いてある数式をノートに書き移さなけばならない。そう思ってせめて最後にもう一度だけと振り返ってみた。


 数分前と同じく生野は頬杖をついたまま、まだ外を見つめていた。伏せられがちの目元が綺麗だった−−。


 視線を送って2秒、3秒と経過したとき、また俺の左胸あたりがドクン、ドクンと強く脈を打ち始めた。


 生野と目が合ったから。

 伏し目がちの生野の瞳が一度瞬きをして

 ゆっくりと

 本当にゆっくりと

 こちらを見つめてきた。


「!!」




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