怖い話
窓に張りついていた化け物
私は前日友人の家に泊まり騒ぎ散らし一睡もしないでいたせいでその日は疲労がピークにきていた。幸い明日は休日、予定もない。疲れた体を癒せるとまずは風呂に入った。
浴槽に浸かっていると強烈な眠気が襲い掛かってきて少しだけ意識が遠退いた。その時私はすぐに飛び起きた。寝て浴槽で溺れることを恐れたわけではない。心地よく薄れゆく意識の中で大きな眼球が私をギョロリと睨み付けたからだ。もちろん風呂場にはそんなものは存在していなかった。しかし睨み付けられた感覚が鮮明に思い出せてお湯に浸かりながら鳥肌がたった。悪寒が消えないので早々に風呂からあがり寝ることにした。
寝室に入ると音楽をかけた。たかが風呂で見ただけの夢に怯え、音楽で気を紛らわせようとしている自分が笑えた。寝る前の一服を終えて電気を消した。かなり疲れていただけあって溶け込むように意識がなくなった。多分夢は見ていなかったと思う。
夜中に『キキィ〜キィ…キ…キキィ〜…』という金属を金属で引っ掻いたような不気味な音で目が覚めた。誰だこんな夜中に!迷惑な野郎だ!と腹が立って窓を見た。その瞬間私の体は金縛りにあい窓から目を離せなくなってしまった。
えっなんだこれ!金縛りなんて初めてのことで冷や汗が出てくる。混乱している私に追い打ちをかけるように『キキィ…』という音は大きくなってきた。その度に私の心臓の音も大きくなっていく。…急に音が消えた。しかし私の心臓は嫌な予感を感じていたのか鼓動を止めていなかった。部屋の中に心臓の音しか聞こえなくなった時。窓の端に何かがゆっくり現れた…
長い髪の毛が外の風に振り乱されているのが見えた。少しずつそいつは姿を現してきた…
充血し大きく見開いて私を睨んでいる目。生気のない色をした肌。顎が胸元までに垂れ下がり途中で切られている舌が見える。そして異常なまでに長い指…
明らかにこの世のものではないモノが窓越しに動けない私を見ていた。目を閉じたくても部屋から逃げ出したくても体が言うことをきかない。窓に貼りついている化け物が口を動かし始めたその時、再びあの『キキィ〜キキィ〜』という音が鳴り響いた。その音はさっきまでとは違い、頭に激痛と共に大きく響いた。間違いなく殺される!そう思った…
あの時なぜ助かったかはわからない。意識が飛びそうになり視界がぼやけた時、あの化け物が急に後ろを振り向き何かから逃げるようにしてどこかへ行ったのだ。その途端、体が動くようになり頭の痛みも消えた。大量の汗が流れていて、服を通り越し布団にしみる程だった。助かったと思い気持ちが和らいだ。神様が助けてくれたのだと思った。
しかし同時にあの化け物が恐れたモノは何だったのか気になり始めた。本当に神様が助けてくれたのか、それともあの化け物も恐れる程の化け物が存在するのか…



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