怖い話
壁の染み
Tさんはマンションに住んでいたが、そこは古くドアや水道などあらゆる場所にガタがきていた。雨漏りなどは日常茶飯事で、幼い娘の体のことを思うといい環境ではなかった。そこに大学時代の友人が格安の一戸建の新しい住宅を紹介してきた。Tさんは願ってもいない条件ですぐに移ることにした。その住宅は新しいだけあって外装も内装もキレイだった。しかし友人の紹介とはいえこんなキレイな物件が格安なのは何か理由があるはずだと思い、友人に聞こうと電話をしたがつながらなかった。しかし経済的にも今更変えることもできないし、その点以外は文句のない条件の物件なのでTさんは気にしないようにしてそのまま暮らすことにした。暮らしてみるとやはり住心地がよく妻も娘も喜んでいた。しばらくすると引っ越しの時の荷物が片付いて部屋が一つ空いたので臨時の寝室だった居間からその部屋に寝室を移ることにした。真っ白なキレイな部屋で親子3人で寝るのにも十分な広さだった。しかしそれからしばらく経った夜に娘が天井に染みがあると言い、指差す方を見ると確かに部屋の天井の隅に一点の染みができていた。ここに来てもまた雨漏りか…Tさんは思った。しかし雨漏り一つでこの家は悪くしたくないと思い、すぐに屋根裏を見に行ったが雨漏りするような箇所はどこにも見当たらず、ただの染みだということで放っておいた。しかしそれからというもの一家は原因不明の高熱や体のだるさや頭痛に見舞われた。そしてまたしばらくすると娘が染みが大きくなってると言いだしたので見てみると最初に見た時よりも大きくなっていて手の平程までに成長していた。Tさんは不気味な印象を感じ、寝室を別の部屋に移してその部屋は使わないようにした。しかしそれからもTさん家族の異変は治らず、むしろくだらないことで喧嘩をして離婚しそうになるなど状況は悪化していった。さすがにTさんも異常だと思い始め、家を変えたいと思い紹介してきた友人に再び電話をかけたが電話は解約されていて連絡が取れなくなっていた。そしてその日にTさんは夜中にトイレに起きた。するとあの部屋から『ズリッズズズッ…あぁぁぁ〜〜…』という何かを引きずる音とうめき声が聞こえた。その声が聞こえたのか妻も起きてきて二人でその部屋のドアを開けた。
そこには天井どころではなく壁にまで染みが侵食していた。染みは大きな顔のようになり、口を大きく開けてうめき声を発して動いていた…Tさんたちは叫び声と共にドアを閉め、すぐに娘を起こして車に乗り込みTさんの実家へと逃げた。事情を話すとTさんの両親はTさんの動揺ぶりを見てただ事ではないと思い、すぐに部屋を用意してくれた。その日はTさんは寝れずニュースを見ていると、あの物件を紹介してきた友人が行方不明になっていて今朝、原因不明で田んぼに死んで埋まっていたのが見つかったと報道されていた。Tさんは青ざめ、あの家には二度と近づかないと心に決めた。次の日、引っ越し屋に頼み荷物だけ持ってきてもらいしばらくは実家に住むことになった。そうすると今までの体調の異常や精神面の異常がなくなり、もとの状態に戻っていった。そしてまた新しい物件を探し始めた。するとあの物件が載っていたのでTさんはつい見てしまった。あの物件は安いせいか、もはや借り主が見つかっていた。
Tさんはただ死人がでないように祈るしかなかった…



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