脇道寄り道回り道
飼育日誌DEカラオケ編[帝王院]
飼育日誌
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ペットは飼い主に似る
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そんな言葉があります
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はてさて、
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カルマはどうでしょう
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飼育∞日目
カラオケに行きました



50人近い団体、それも見目麗しい少年ばかりやってきた区内某カラオケ店では、従業員も客もこぞって俄かに騒めいていた。

「此処であってるのか?」
「この辺じゃ一番広ぇのが此処っスよ。ジャンクもそこそこ食えるレベルだと」
「流石に飲食物の持ち込みは禁止だろう。此処のオムライスとどっちが美味ェか賭けてみっかァ?」
「どっちに賭けるんスか」
「愚問だ。イチの唐揚げに賭ける」
「…っとに適当っスね」

先陣を切るサングラス姿の銀髪に見ていた皆が目を見開き、その隣で一々周囲を睨み付けている赤毛の美形に、見ていた女性らの騒めきは益々加速する。

「あれ、カルマじゃない?!」
「うっそ!本物ー?」

フード付きのスウェットを素肌に羽織りレザージーンズを履いただけの長身が、しなやかな筋肉を纏う胸元と肉付きの薄い腹をちらつかせ、フードの端からその美貌を覗かせれば、騒ぎは最早留まる所を知らない。

「ハヤト?!」
「嘘っ、何処?!ええっ、本物…?!」

黄色い悲鳴を一身に浴びた張本人と言えば、

「何かうっさいなあ、だからゲーセンにしよーってゆったのにい」
「フレイムバトロワの新作やりてぇだけっしょ、お前の場合はよ(´Д`)」
「仕方ねーよ、腕相撲で負けたオレらに決定権はねーぜ」

パシッと腹を殴ってくる健吾を蹴り飛ばし、その弾みで剥がれたフードを被り直しながらムッとした表情を作る隼人へ、いつもならまず有り得ないくらい上機嫌の要が近寄った。

「ふ、弱い犬ほど良く吠える」
「勝った気になってんのはどっちかなあ、ねえ?か弱いカナメちゃん。腕力じゃ負けても握力じゃ負けてないからねえ、隼人君は」
「何とでも」
「まだ痛むんじゃない?その右手」
「どう足掻いても腕ごと引き抜かれたいらしい。…左利きになってみるか、ハヤト?」

睨み合うヒップホップ系VSホスト系青年実業家。
株主総会に出席した帰りである錦織要のスーツ姿でうら若いお姉様方が騒ぎ、フロントの端で腕相撲ラウンド2を始めた阿呆二匹に声援を送っていた。

「餓鬼の頃から武術仕込まれたカナメとじゃ、分が悪ぃぜ」
「さーせん、40人くらい居るんだけど入れる?(´Д`*)」

どっちが勝つか、と言う腕相撲トトを始めた他のカルマを余所にルームナンバーを聞いた健吾と裕也は、

「VIPルームだとよ。とりあえずフリータイムのフリードリンクにしとくぜ」
「おーい、ファーストオーダー終わってねぇ奴!フロントのお姉さんが困ってっしょ(`´)」

大人数を必死で手招くが、開始から1分、未だに腕相撲の決着が着かない要達に夢中で、健吾に気付く者は居なかった。
面倒臭げにVIPルームへ歩いていこうとする裕也を横目に、オーダー表を持ったまま痙き攣っているカウンターの女性へ乾いた笑みを滲ませたオレンジ頭は、

「コラァ、隼人!要!」

般若の形相で要と隼人の頭を鷲掴んだ赤毛、早い話がカルマ副総長のお陰で益々痙き攣ったらしい。

「痛っ、痛い痛い、いーたーいー。頭もげちゃうー」
「いっ、ユ、ユウさん…っ」
「テメーら何曝してやがる、ああ?テメーらの力なんざ俺に言わせりゃ園児以下だボケが!」
「いやー、頭が割れちゃうにょー」
「すみませんでした…!」
「まァまァ」

サングラスを押し上げた銀髪の男が、余りに目立ち過ぎるレザーコートを翻し佑壱の背中に張り付いた。
何故かコーラフロート片手に。

「母さん、息子達をそんなに怒ってくれるな。地味で平凡で足が臭い不運な俺が、商店街の福引きでカラオケギフト券10万円分当てためでたい日だ」
「うえーん、パパー、ママが苛めるー」
「総長…!」
「お父さん、甘やかすから図に乗るんスよこのクソガキ共は。とりあえずその靴脱いで下さい、さっき踏んでたなウンコ」

どうやら犬の糞を踏んでいたらしい男の靴を奪い、抜け目なく隣の靴屋で買っていたらしい新しいスニーカーを取り出した。
抜け目がないオカンはともかく、ある意味『運がある』男と言えば、

「はいはい、初めて皆でカラオケに来たんだからカリカリしない。欲求不満かィ、ハニー」
「育児ノイローゼじゃね?」
「ギャハハ!俺らユウさんの子供かよ!」
「子供以下だろ!」
「「「ギャハハ!」」」
「良し一人ずつ殴ってやる。尻出せテメーらぁあああ!!!」

素早くVIPルームへ逃げていくカルマ達を魔王の形相で追い掛けた佑壱に、未だ痛む頭を押さえながら要と隼人もついていく。

「お騒がせしましたレディ、コーラフロートのお代わりを頂く前に貴方の笑顔を頂けますか?」
「え」
「美しい貴方に出会い、こうも容易くこの心を奪われようとしている哀れな男に、僅かな慈悲を願えるなら…」
「え、えっ?」

空になったグラスをフロントのお姉さんに渡し、部屋に着く前に二杯目のお代わりを貰っていたフェミニストは然し、

「おい、てめぇ」

何処ぞの部屋から出てきたと思われる、明らかに素行が悪そうな男から肩を掴まれた様だ。

「あ、あのっ、アイス多めに乗せときましたっ」
「うまい」

真っ赤な従業員からコーラフロートを渡され、ずずっと啜った男はきょとりと振り返り、肩を引っ張られている状況にサングラスを押し上げる。

「何かご用かィ?」
「てめぇ、カルマだろ」

ぞろぞろと隼人と同じ様な服装の少年らに囲まれ、辺りの女性達が俄かに青冷めていくのを見た。

「ちっ。ケンゴじゃねぇな、アイツだったらブッ殺してやったのによぉ!」
「ひょろい緑頭はどうした」
「女みてぇな面した鳥野郎も居ねぇのかっ、くそ!あの青頭っ、絶対ぇ潰してやる…!」
「ヘラヘラした芸能人被れも居ねぇ。ちっ、誰だよカルマがぞろぞろ居たっつった奴は」

どうやらカルマに何らかの恨みがある様だ。実名が出たのは健吾だけだが、裕也も要も隼人も十中八九恨まれている。

「内弁慶の逆…何だっけなァ」

どうしたものかとアイスクリームを一口で頬張り、ストローを啜った。

「まぁ良い。てめぇがカルマの下っ端っつーなら、自称王様の馬鹿野郎を連れてこい」
「てめぇンとこの総長一人だけ連れ出せば、半殺しで許してやらぁ」
「命が惜しけりゃ言う事聞けよ、ナンパ野郎」

チャラチャラ従業員をナンパしているから雑魚と間違われるんだ、と言う佑壱の怒鳴り声が聞こえた様な気がする。
久し振りにこんな怖そうな奴らに絡まれてしまった・どうしよう怖過ぎて動けない、などとサングラスの下で生まれたての子羊宜しく震えていた男は、

「あらん」

不意に天井を仰ぎ、二階の廊下からズラリと顔を覗かせている『息子達』にズレたサングラスをもう一度押し上げた。

「パパのピンチだっつーのに、犬共め…」

渡り廊下の手摺りで頬杖を付いた隼人がニヤニヤ笑い、裕也はくわっと欠伸一つ、今にも飛び降りそうな要の腕を引っ張っている健吾と、眉間を押さえた佑壱。ピースサインをしている他のメンバーも、自分らの総長が絡まれている場面を高見の見物中だ。
なんて奴らだろう、その優しさに涙も出ない。

「パパは物っ凄ちびりそうなんだけどねィ」
「何ガタガタ抜かしてやがる!」
「カイザー連れてこいっつってんだろーが!」
「良いかっ、ロン毛には気付かれるなよ!」
「あの腐れケルベロスが…!カイザーをヤった暁にゃ、アイツも丸坊主にしてやらぁ!」

いやもうバッチリ見られてるんですけど、などと二階を指差せば、怒り狂った不良達が何をしでかすか判ったものではない。
EXILEにされてしまうらしい張本人と言えば、口元を押さえ爆笑を耐えている四重奏四人に満面の笑みを浮かべている。ボキボキ拳の骨を鳴らす光景を眺め、ヒィと悲鳴を飲み込んだ『ナンパ野郎』はとうとう胸ぐらを捕まれてしまった。

「何とか言えよクソが!」
「ビビって声も出ねぇのかぁ?!」
「ちっ、コイツ人質にしてカルマの溜まり場に連れてくか!」
「ンな奴、人質になんのか?」
「最悪、ケンゴだけでも連れ出せりゃ良いだろ。レジストの平田なら高く買ってくれんだろ」
「何で俺だけ!Σ( ̄□ ̄;)」

うっかり声を出した健吾に皆の目が注がれた。
俊の胸ぐらを掴んだまま上を見上げた少年らは一瞬で沈黙し、

「失礼レディ、貴方の笑顔をお代わり」
「え」
「コーラフロートも頂けるとこの胸ははち切れんばかりに打ち震える事でしょう」

空になったグラスをまたカウンターに差し出している男は、凶悪な面々から胸ぐらを掴まれているとは思えない優雅さでサングラスを押し上げ、懲りずナンパしている。

「兄貴、早くして下さい。一曲目が閊えてるんスよ。つーか、いつもアイスばっか食ったら駄目だっつってんでしょうが」
「ボスー、隼人君が二曲目にエグるんだからねえ。一曲目からバラードは駄目だよー」
「ハヤトは三番目だぜ」
「副長とカナメは無駄に巧いからラストっしょ(´・ω・`)」
「俺は総長の歌声が聴ければ満足です」

徐々に青冷めていく少年らが、ギギギと言う錆付いた動きで目を落とし、コーラフロートを諦めコーラにして貰った男を痙き攣りながら見つめる。

「おのれイチめ、ケチと呼んでやる。この間もアイスは一時間に三個までって言った癖に…あ、もう三個食べてた。迂濶だった」
「あ、の」
「は、ははは」
「もしかして、もしかすると…」
「ハハハ…まさかカルマの総長様でございますか…?」

二階の連中はそれぞれ、揶揄めいた笑みを浮かべるなり、面倒臭いとばかりに欠伸を噛み殺すなり、カラオケ本を開きながら部屋に戻ろうとするなり、とりあえず最早下の騒ぎには興味がないらしい。

「ヤるなら加勢しましょーか、総長」

佑壱の言葉で、それまで意気込んでいた少年らが青冷めた。

「誰に似てこんなに狂暴になってしまったんだろう、うちの可愛いワンコ達は…」

オーダーメニューを開きフライドポテトにサングラスを押し上げた男は、サングラスを僅かばかり押し下げ、

「イチ、どうしてもアイスが食べたいから一時間だけ散歩に行ってくる」
「…はいはい、いってらっしゃい」
「とりあえず、ポテトとコーラを頼んでおいてくれ」

その日、カラオケボックスの裏手の路地で、数十人の少年が屍と化していたらしい。



「俺は総長の歌が聞きたかったのに!」
「総長が歌った瞬間、魂抜けた癖に(´∀`)」
「凄ぇ歌唱力だったぜ」
「ユーヤの演歌もある意味凄かったよねえ。何で時代劇モンしか歌わないのか意味不明ー」
「ユウさーん、獅楼がマイク離さないんっすけどー」
「ユウさーん、総長がフォーク離さないんっすけどー」
「ユウさーん、ポテト足りないんっすけどー」
「お母さーん、アイス食べたいんですけどー」
「総長、20個目でしょうが。いい加減にしろやコラァ」



ペットは飼い主に似る、と言うのはあながち間違えでもない様だが、何処の世界でも子育てに苦労するのは母親だけらしい。

全国の旦那と子供は、お母さんを大切にしよう。



To 俺の可愛いワンコ達
subject どうしよう大変だ


さて諸君、事件は現場ではなく公民館で起こった
町内会のビンゴで全国温泉旅館ギフト券5万円が当たったにょ☆

ついでに母ちゃんがこの間、商店街の福引きで別府温泉宿泊ペア券当たったの忘れてて、期限が明日までらしい

親父が出張先で行方不明になってそれ所じゃないそうなので、俺が代わりに行こうと思います。


つきましては、明日8時に南口ポチ像前に集合して下さい。
おやつは300円までですが、バナナと唐揚げはおやつに含まれません。


追伸

駅弁も食べたいけど仮面ダレダー弁当も食べたいにょ
不甲斐ないお父さんに代わって、ママに宜しくお伝え下さいなり




「何が宜しくだボケ!一斉送信じゃねぇか…!」
「ユウさん、もう零時回ってますけど…」

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