脇道寄り道回り道
 ├後編┤
猛獣の飼い方10の基本
「後編」



なつくとたのもしいそんざいです
日向×佑壱


「好きです。ずっと、お慕いしてました!」
「っつってもよ」
「一度だけで良いんですっ、抱いて下さい…!」
「ハ、ハグ?」
「メイクラブの方で!」
「ですよねぇ…」
「好きなんですっ愛しているんですっセフレでも構わない!お願いしますっ、紅蓮の君っ」
「いや、だからな、無理っつーか嫌っつーか、」
「でも!紅蓮の君は光王子とそう言う関係なんですよねっ?ずるいです!僕も紅蓮の君に抱いて欲しいのに…っ、親衛隊にも入れなくて…!ずっと我慢してたのにっ」
「いや、あの、だからな」
「…巫山戯けんなボケ、テメェ程度でコイツを満足させられると思ってやがるのか、あ?」
「ひ、光王子閣下…!僕だってテクならきっと負けません!」
「ちょ、」
「んだと?」
「第一っ、閣下は抱く方だったでしょう?!上手に抱かれられるんですかっ?」
「「はい?」」
「え?」
「「…」」
「え?も、もしかして…まさか…」
「ちょっと俺は旅に出る、探すな」
「落ち着け嵯峨崎」
「そうだったん、です、か…?
  僕っ、すみませんでした!とんだ勘違いをっ、あのっ、この事は誰にも言いませんからっ!」
「いや、いっそ言い触らせ。コイツは俺様のモンだってな」
「もう嫌だ風になりたい誰か俺を殺してくれ」
「でもそれだと抱きたいランキングに入ってる紅蓮の君が益々狙われてしまいますよ、光王子閣下」
「む。一理あるな」
「ですから、お二人は突いて突かれる関係だと広めれば、閣下に寄り付く親衛隊も減るでしょうし、紅蓮の君も男の沽券が守られますよ」
「あー…俺はホモ違うし…男の尻に突っ込むなんてとんでもない。いや高坂ならまぁ、イケねぇ事もなくはないかも知れなくもないけども…」
「お前がその気なら良いぜ、どっちでも」
「え」
「見直しました光王子閣下!それでこそ真の愛!我が身を捧げ捧げられて究極の愛へ!」
「そ、そうなん?」
「俺様はお前と一緒に居られんなら何でも良い」
「好き過ぎて死ねる」





いがいときずつきやすいいきものです
日向×佑壱



「ふん、そんな図体で佑壱に釣り合うと思ってんの?」

副会長の様子が可笑しい。先週の土曜日は気持ち悪いくらい機嫌が良かった筈だ、と。中央委員会執務室は俄かに混乱していた。

「何ですかあの排気ガスを撒き散らす粗大ゴミは」
「白百合様…」

はぁ、ふぅ、ラマーズ法ではないのは間違いない。心此処に在らずの日向が、窓辺でずっと溜め息を零していた。
燃え尽きた煙草を指で挟んでいる事にも気付いていないらしい。かれこれ三時間以上アレだ。朝から学園中を見回ってきた二葉は今初めて知った為、フレンチトースト片手に眉を寄せている。

「ノーサ」
「はいよ〜、お呼び系?」
「あれは?」
「嵯峨崎の元カノから宣戦布告された系っつーか、嵯峨崎のマンションに居たっつーか」

報道手帳を素早く開いた川南北斗に、執務室中の役員がどうやって調べたのか不安になりつつ。眼鏡を押し上げた二葉は珍しく笑みを控えた。

「経緯は?土日は集会がてら嵯峨崎君のマンションにお泊まりすると、あれほど機嫌が良かったのに」
「カルマの集会の方が長引いた系だったでしょ、土曜の夜」
「ええ、確か来週イベントがあると何とかで必死に何かを書いていましたね。ああ、即売会がどうとか」
「だからサブマジェスティが嵯峨崎のマンションに行ったんです。合い鍵は交換済み系」
「そこに間女が居た、と」
「で、サブマジェスティが逃げた系」
「…情けない」
「間女は嵯峨崎に追い出されてたらしいです。管理人に姉っつって無断で入ったらしくって」
「何を言われたかは知りませんが、呆れて物が言えません」
「確かにヘタレ過ぎる系っつーか、」
「今から嵯峨崎君の命を頂いてきます
「えええ?!」
「ピュアな高坂君と言う旦那がありながら浮気など52596000分早い」
「百年だよね閏年も入れて」
「彼はとても純粋な人間なんです」

それはもう。
眩しいくらいに、哀れなくらいに。


「…俺が護り抜いてきたんだぞ、腐れファースト」



きちんとききかんりをしましょう
上の続き


「嵯峨崎君は万死に値します」
「高坂日向ァ!うちのイチ先輩を泣かしたド腐れ野郎出て来いやァ!!!」
「「「─────は?」」」
「副会長同士話し合おうじゃないかい。ああ、日が暮れるまでたぁっぷりねー…」
「山田太陽君どうなさいましたかそんなに凛々しいお顔で…!」
「局長、ツッコミはそこ系?」
「部外者は引っ込んでろ!あんなにお泊まりデート楽しみにしてたイチ先輩の約束を破った外道!出てこい!」
「…何の用だ平凡、消えろ。目障りだ」
「ざけんな!もう見てらんねーんだよ!ご飯作って待ってたイチ先輩をよくも…!お前さん、昨日はセフレと宜しくやってたんだって?」
「…はぁ?何ほざいてんだテメェ」
「はっ、わざわざイチ先輩を呼び出させてセフレ伝いでさよならなんて虫が良い話だよ」
「何の話だ、殺すぞテメェ!」
「だったら何で泣かせてんだよアンタは!」
「何だと」
「『光王子様には僕みたいな可愛い子の方が似合う』だなんて、言われたイチ先輩の気持ち考えろ!ほんの少しでも好きだったなら!ひっく」
「止めるなノーサ殺す高坂抹殺するアキを泣かせた殺す高坂虐殺する」
「さっきと言ってる事が違う系ーっ、あっ、何処行くんですかサブマジェスティっ!どうにかしてから行って欲しい系なんですけどぉおおおっ」

廊下で壮絶なラブシーンが見られたのは直後だ。
何処かの女性がバイクで引き摺り回されただとか、何処かの親衛隊の生徒が国外追放されたとか言う話は余り知られていない。





スキンシップがすこしはげしいです
日向×佑壱


「ぉわ」
「危ねぇ!」

デジカメ片手に涎を垂らしながら駆け抜けた総長を追い掛けていた副総長が、涎で濡れた階段で足を滑らせた。バナナで滑るより有り得ない話だ。
たまたま通り掛かった日向が素早く佑壱を抱き寄せ、凄まじい音を発てながら転がり落ちる。

「痛っ、…ん?痛くねぇ」

むくり、と起き上がった佑壱が腰に巻き付いた腕に気付きしゅばっと起き上がれば、クタリと倒れたまま微動だにしない日向が見えた。

「悪いな高坂、大丈夫か?」
「…」
「おい?…高坂?高坂っ、起きろ高坂!」

一瞬にして青冷めた佑壱がお姫様抱っこで日向を運んだと言う話は、俊のダッシュ並みに光の速さで広まった。



「…ひっく、えぐ、ぐすっ、ずび」
「好い加減泣き止めよ」
「だ、だっで、お、俺の所為でしん、死んだみたいに動かなくなっちまったからぁ゙」
「ただの脳震盪だっつってたろ、シリウスが」
「あんなヤブジジイ宛てになるかぁ゙!ずびっ」
「洟垂れてんぞ。ほら、顔上げろ」
「ぐすっ、ずびっ、ちーん!あ、悪い。ブレザーで噛んだ」
「良いから、顔上げろ」
「駄目だ、今の俺はばっちい。ばっちい顔してるから嫌だ」
「良いから。…俺を心配する余りばっちくなった泣き虫の顔、見せろ」
「泣き虫じゃねぇっ」
「キスさせろ」
「なっ、こここ此処を何処だと!」
「あー、意識が朦朧として来た。死ぬかも知んねぇな、俺様」
「ぎゃふ!駄目だ生きろ!」
「あー、最後にキスしたかった…。18歳の若さで恋人に拒絶されたまま逝くのか。…世知辛い世の中だ」
「駄目だっ、キスして良いから!生きろ…っ、ぐすっ、死ぬなぁ!ぶっ殺すぞテメー!」
「もう駄目だ、目が霞んできた。キスしたくてもお前の顔が見えねぇ」
「!」

医務室で光王子に襲い掛かる紅蓮の君、と言う見出しの新聞に、濃厚過ぎるキス写真が載った。

「流石だぜシュンシュン。ナイスアングルだ」

カメラマン遠野俊の記述に、妙に感心している日向を投げ飛ばした佑壱が引き籠もったのは言うまでもない。





ときどきあまえんぼうになります
日向×佑壱


「高坂」
「何だ」
「抱っこ」
「…は?」
「抱っこしてうさちゃん林檎剥いて食わせろ」
「熱でもあんのか?」
「お姫様抱っこにしろ。うさちゃん林檎に旗が付いた爪楊枝刺せ。あーんして食わせろ」
「マジで熱があんじゃねぇか。ほら、熱計るぞ」
「抱っこ。抱っこしろ!」
「お前な、俺様と同じガタイしてんの忘れてんだろ。ちっ、39度かよ」
「抱っこ!俺この間したのに!お姫様抱っこしたのに…っ」
「おい、泣くな!」
「俺の事嫌いなんだ!愛してないんだ!ひっく」
「お前な…。仕方ねぇ、こっち来て屈め」
「うん」
「ちっ。やっぱ重ぇな、…長くは無理だぞ」
「日向、好き」
「…」
「えへへ。チューしちゃえ」
「…」
「お姫様抱っこ、ふわふわするー。わーい、楽しいなー。ふんふんふん、くしゅん!なんか寒い」
「とっととベッドに運ぶぞ」
「やだ、抱っこ。うさちゃん林檎っ」
「食わせてやっから、寝るぞ。幼児返りが」
「やだっ、抱っこじゃなきゃネンネしないっ」
「ああ、だから抱っこしてやるよお姫様。…但し子供扱いしねぇからな、覚悟しとけ」


翌日。
40度の熱で倒れた副会長と、ナース服を着たカルマ副総長が元気に走り回る光景が見られた。



これにて一件落着。


提供:リライト

←*#→
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!