脇道寄り道回り道
■腐れ縁な二人へ10の御題[帝王院]
気付けばいつも隣に君がいた

「あー、腹減ったっしょ(´`)」

隣を無意識に見やって、何ともなく近場の草むらを蹴る。今日は彼女の誕生日だ、と。今までの彼女には何にもしなかった癖に、いきなり宣った相棒は朝から無断外出中だ。
一月くらいで別れると思っていたのに。案外長い。もう二ヶ月だ。

「あーあ、俺も街行こっかな(`´) カフェのピラフも食い飽きたし…料理なんかカップ麺すら作った事ねーよ、っきしょーヽ(´▽`)/」

呟きながらザクザク庭園を横切って、果てのフェンスを飛び越える。ビルの三階分くらいの高さだ。この程度、カルマの人間ならば何の障害にもならない。
とんっ、と降り立てば車道の脇。バスは外泊届けを出さなければやって来ないし、迷う必要はない。

「隠しといたバイク、…あったあった。総長にバレなきゃ良いんだよ、要は(´∀`)」

雑木林に踏み込んで、集会へ足を運ぶ為に用意しているバイクに跨った。いつもは後ろに座っているだけなので何か変な気分だ、と、眉を寄せて、


「ユーヤの癖に生意気。一生帰って来んなバーカ!(*´∀`)」


後はもう、風になるだけ。




以心伝心

腹減った、と。眠りから覚めた途端、隣から響いたのは余りに潔い腹の音だった。
何ともなく見れば、半ば全裸に近い相棒が乳首と腹を丸出しにしてゴロリと寝返りしている。あれだけの腹の音を響かせて尚、むにゃむにゃ寝言を言える単細胞さには感心した。

「ケンゴ」
「んー…、リサよりカオルの方が気に入ってるって」
「寝言がハヤト並みに最低だぜ」

全く以て甲斐甲斐しさに欠ける健吾の交際は長続きしない。自分は長続きしない癖に、人の交際にはイチイチ口を出ししてくるのだから益々最低だ。ああしろこうしろ、面倒臭いとか言ってたら振られるぞ、などと。言う本人が振られていたら救われない。

「むー…ムフフ(´∀`)」

寝言まで顔文字が見える…気がする。眠気の訪れを待っても冴えた目はもう起き上がれと言っていた。溜め息一つ、起き上がれば空はオレンジ色だ。
昼から寝ていた筈なので、午後はほぼ全滅らしい。と言っても八時までは授業があるので、二時間分くらいは間に合うだろうか。

「単位足んねーっつってたな、先公が」

またレポートの山か、と。再び溜め息を零し、ラーメンが食べたいと何ともなく考えながら欠伸を発てれば。


「味噌ラーメン」

がばり、と起き上がった健吾の嫌に真剣な目が見つめてくる。

「やべ、もやし食いてぇ(`・ω・´)」
「起き抜けにそれかよ」
「うぉっ、もう夕方じゃん!やべ、もやし食いてぇ(`・ω・´)」
「味噌ラーメンかよ」
「ユーヤはアレな、チャーシュー麺」
「塩」
「チャーシュー俺が食ってやっからよ(`・ω・´)d」

まぁ、意味もなくキリッとしている健吾の尻を蹴りつつ、夕飯に異存はない。


「夜食はお好み焼きっしょ(´Д`*) 豚玉は外せないぞぇw」

夜食はたこ焼きだ。




普段は言えない本当のこと

「愛してるぜケンゴ」
「おー、俺も愛してんぜユーヤ└|∵|┐そこのソース取って」
「抱かれても良いぜ」
「おー、死にそうになったら抱いてやんよ。良し、焼けたっしょ(=・ω・)/」
「お前の焼きそばは泣きたいくらい美味いぜ」
「愛情と豚肉たっぷりだかんなw」

焼きそばの中身はレタスと牛肉ともやしだ。カフェのテーブル全てにはホットプレート、あっちこっちからジュージュー良い音がしていた。
これくらい焼かなければ総長の胃袋は満たせない。

「イチ、愛してないぞ。唐揚げも食べたくないからな」
「はいはい、エイプリルフールだからって泣きそうな顔で言わなくても唐揚げありますよ」

つるつる焼きそばを頬張りながら、唐揚げを前に親指を立てる総長を何ともなく見やる。
ハロウィンにしろエイプリルフールにしろ、カルマは年中お祭り騒ぎだ。

「総長ーっ!俺の焼きそば如何っスか!(//∀//)」
「ケンゴ」
「あん?」
「愛してるぜ」
「おー、だから知ってるっつーの」

笑う幼馴染みから揶揄めいた目を向けられた。




いつまでこいつと一緒なんだ

「五歳になるくらいからだよな」
「そうだっけ?(´∀`*)」
「腐れ縁だぜ」
「十年か、倦怠期だなぁ(´`)」
「去年も言ってなかったかよ、それ」
「カナメがっしょ(`´)」
「あー…」
「ま、来年も言ってそうだけどw 高等部に上がりゃ、カナメとはおさらばっしょ(´;ω;`)」
「清々したとか言いそうだぜ」
「orz」




空気みたいな存在とか

「ちっ、袋綴じの癖に水着かよ(`皿´)」

エロ本を投げ付けた背中を横目に、マヨネーズだらけの胡瓜を齧る。舌打ちご法度は副総長の前だけだ。何せ副会長の得意技。

「ちきしょー、期待した俺が馬鹿だったorz」
「抜くつもりだったろ、テメー」

ルームメートと言うのは都合が悪い事もある。

「ボッキーニ失敗(//∀//)」
「いっぺん死んどけ」

抱き付いてきた相棒をとりあえず殴り飛ばした。



朝まで本音トーク

「デケェ方が良い」
「そこは賛成(`・ω・´)d」
「小せぇ方が良いぜ」
「馬っ鹿、これもデケェ方が良いって!(`・ω・´)」
「あ?乳なんざ要んねぇだろ」
「尻も乳もデケェ方が良いに決まってんだろ!(οдО;)」
「じゃ、コイツかよ」
「いや、アリサちゃんよりミズキ派(*´∀`)」
「アリサのが乳デケェぜ」
「アリサのがケツがしょべぇ(´`) 後はアレだ、喘ぎ声が煩くねぇ方が良いっしょ(´Д`*)」
「デケェ方が燃えるだろ」
「萎えるし(`´)」
「グラビアじゃ確かめ様がねぇぜ」
「AV見っか?(・ω・) 疾風トリオからブン盗ってくるからよb(・∇・●)」
「あー、…つかもう朝だぜ」
「マジかよ!Σ( ̄□ ̄;)」



やっぱり最後に頼りになるのは、お前

「なーに、そのいつも以上に不細工な顔ー」
「ハヤトなんか足攣って死ね(´;ω;`)」
「また振られたんですか。綺麗な手形ですね」

冷めた要の眼差しに、左頬へアイスノンを当てたまま痙き攣った。返す返す言葉が無い。

「べ、別に付き合ってねーし」
「ヤってないのお?情けな」
「寸前だったっつーの!(`´)」

何せ今回は事の最中に振られたのだ。つまりまだ付き合っていない。
ああ、もう少しおっぱいが大きかったらする気になったのに。パットだったとは不覚だ。

「俺は被害者なんだ…(ノД`)゚。女の悪知恵に騙された被害者っしょ!(ノД`)゚。」
「パイか」
「乳ですか」

噎び泣けば興味を無くしたらしい二人は、それぞれ目を反らした。要は課題の続きを、隼人は要らなくなったセフレのアドレス消去だ。
隼人はともかく、一見近寄り難い要までそれなりに遊んでいると言うのに。何だこの敗北感は。

「おっぱいいっぱいおっぱいいっぱい(ノД`)゚。」
「何ほざいてんだケンゴ、総長が凝視してんぜ」

ぴと、っと冷たい感触が頬に。見ればレモンスカッシュの冷えた缶を手にした裕也が覗き込んでいる。


「ほらよ、冷やせば治んだろ」
「ユーヤ…」
「あー、涙はお前には似合わないぜ。笑いな、オレの為に」
「ユーヤァアアア!!!(ノД`)゚。」

ぎょひーんっ、と飛び付けば、ちょろいなと言う台詞が背後で響いた。どうせ悪巫山戯大好きな仲間達の入れ知恵だろう。
畜生、賢い奴らだ。

「ぶー。馬鹿にしやがってどいつもこいつも(;´∩`) 後で全員潰す」
「また良い女が見付かるぜ」
「ふんっ(`´)」
「ケンゴ」

かさり、ビニール袋が目の前に。
相変わらず無愛想な相棒は不器用に笑って、


「たこ焼き奢ってやっから、食え」
「ユーヤ…」

やっぱり落ち込んだ時は相棒が優しい。普段からお笑い担当だと誰も本気で心配なんかしてくれないから、少しだけ。
嬉しかったのは秘密だ。


「俺………お好み焼きのが良かったんだけど(´;ω;`)」
「いっぺん死んどけ」




親友、家族、恋人、どれも違う


二人は付き合ってるんですか、と言う報道部にはにっこり笑って肩を組み、思わせ振りな対応をしたけれど。

「「相棒」」
「だろ」
「だな(*´Д`)」

本人達だけが判っていれば良いのだ。




何だかんだ言って


「なー(´・ω・`)」
「あ?」
「今の彼女と俺、どっちが大事?」

何を馬鹿な事を言ってんだ、と言う冷たい眼差しに心が折れた。情緒を知らない裕也に、良心的な答えを求めた方が負けだ。

「俺はユーヤの方が大事っつったのに(´Д`)」
「それで振られたのかよ」
「最初から付き合ってねーし。向こうが勝手に勘違いしただけっしょ(`´)」
「ヤってねーならな」
「おっぱいしょぼかったから、舐めさせただけ(´∀`)」
「最低だぜ」

スタスタ歩いていく背中に蹴る真似をして、そんなに最低だろうかと首を傾げた。付き合えないなら抱いて欲しい、と言ったから判ったと答えただけだ。
胸さえあったら完璧だったが、向こうから口淫してきた後、「今の彼女と私、どっちが大事?」などと聞いてきたから、彼女など居ないと言って期待させる事もなく「ユーヤのが大事」と言った。

一番はカルマだ。


「ちぇ、ユーヤなんか絶交してやるっしょ(∩∇`)」
「清々するぜ」
「心が折れた!(ノД`)゚。」
「まぁ、居なくなったら寂しいだろうけどな」

こんな時にちょっと心がほっこりする。周りに人が居なかったら素直になっていた癖に、意外と照れ屋な所が可愛いではないか。

「ユーヤ!俺の胸に飛び込んで来いやァ!\(^O^)/」
「いきなり飛び付いて来んな、脱げる」

腰の位置が高いムカつく幼馴染みのスラックスを脱がしてやった。
無駄にお洒落なボクサーパンツだった。黄色い悲鳴が響いたので、裕也の腹に肘鉄一つ。


殴られた。




これからも宜しく、なんて

「あけましておめでとう」
「「「おめでとうございまス!」」」

総長の一言で、カフェは深夜にも関わらず盛り上がった。因みに初詣には明日行く。このメンツで神社に行けば一般人に迷惑だからだ。

「おや山田太陽君、それはもしかしなくても御神酒では?」
「ふぇ?何ゆってんら、水だし」
「酔ってますね」
「あはは、二葉ちょー格好いいなぁ」
「誘ってますね」

さりとて、高校最後の正月だろう部外者が眼鏡を光らせた為に、総長のデジカメが光り、何だかいつも以上に慌ただしい。ABSOLUTELYと和解した後、カフェにはABSOLUTELYの客も増えて連日賑わっている。
益々狭苦しい、と佑壱が二号店オープンを画策しているとか、広い所に移転するつもりだとか何とか。神帝と言うスポンサーから巻き上げるつもりだろう。

佑壱の席であるカウンターの椅子を奪われた腹癒せに。俊の隣だ。


「今年も宜しくb(・∇・●)」
「おー」

とりあえず健全に烏龍茶で乾杯、死ぬまで繰り返していけたら良いななどと似合わない台詞、死ぬ間際もきっとキザったらしく言うのだろう。



『『来世も宜しく』』


なんて、な。



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