脇道寄り道回り道
パラレル帝王院お礼1(社会見学編)
帝王院高等学校、社会見学に行く日がやってきた。


「おやつは300円までにょ!ポテチとポッキーと駄菓子でぴったり300円ですっ!」

などとはしゃぎまくっていた某オタクは、学園から飛び立ったプライベートジェット機の中で既に貪り尽くした菓子のゴミを片手に、膝を抱えていた。


「どしたのー、ダサ眼鏡くん」
「モテキングさんには判らない悲しさにょ…」
「おやつ無くなったんだろ、俊。俺の煎餅食べていーよ」
「タイヨー!好き好き好き好き好き大好きですっ!」
「はいはい、いきなり告白頂きましたー」

隼人の目前で太陽に張り付いたオタクは、凄まじい嫉妬の目を注ぐ煌びやかな集団には気付いていない。
とっくに気付いている太陽は涙目だ。



「遠野、俺の手作りケーキを食え。まさか先輩の手作りケーキが食えないなんて言わねぇよなぁ?」
「遠野君、俺が株主に名を連ねている製菓会社の新製品があります。召し上がりますか?」
「サツマイモチップがあるぜ(∀) ノンフライが良いっしょ、やっぱ健康にはノンフライっしょ(´Д`*)」
「ジジ臭いぜケンゴ」

わらわらわらわら寄って来るイケメン集団に周囲の生徒や観光客から黄色い悲鳴。

不良からはカルマコールと忙しい。



「今年は近場過ぎてイマイチ盛り上がりに欠ける社会見学ですねぇ」
「何で俺様まで付き合わないけねぇんだ。行きたきゃテメェ一人で行け」
「おや、高坂君。奥ゆかしい日本情緒、この京都がどうしようもなく似合う私がうっかりナンパされてしまったら誰が助けるんですか」
「…ナンパ相手は助けるがな」

さて、京都。
こんなに京都が似合う日本人は居ないだろう、と言うくらい京都が似合う叶二葉の隣、京都には不似合いな金髪を掻き上げる高坂日向のまだ隣、





「俊、二条城が近い」
「あらん?カイちゃん、新撰組に転職したみたい?」

黒髪黒縁眼鏡の長身が、青い法被を翻し近付いてきた。
その素顔を知っている太陽が天を仰ぎ、総長に近付くオタク(大)を警戒しているカルマ一同は臨戦態勢だ。

「清水寺で抹茶アイス食べて、平安神宮でポスカ買って、湯豆腐食べて、新撰組入隊するにょ?」
「ならば局長は任せよう」
「カイちゃんが沖田役?じゃ、タイヨーは土方!」
「アハハ、無理、絶対役不足だからねー」

冷めた笑みを滲ませた太陽が不意に振り返り、





吐血した。



「な、何で…全員新撰組コス…」

カルマだけならず副会長や風紀長までが真っ青ではないか。



「シュンシュン〜、じゃあ俺は何役〜?土方は俺がやった方が良いよね〜♪ シュンシュンだけの副長になるよ〜」
「総長っ、土方はやっぱ俺っスよね!総長の副長は俺だけっスよね!」
「ユーヤ、カナメ、記念撮影しよーぜ!(´Д`*)」
「つかさあ、ぶっさいくはボスに近付かないでくれないかなー」
「おや山田太陽君、私の美しさに言葉もありませんか?まぁ、致し方ない事ですが」



もう好きにしてくれ。
寂れた背中で二条城をパパラッチする太陽は死んだ魚の目をしていた。



「はっ、あそこに見えるのは舞妓さんかしら?!きゃ、きゃーっ!美人さんばかりにょ!


  そこのお姉さァん、お茶しましょーっ!」


「「「「「「「あ」」」」」」」




眼鏡をちゃっかりサングラスに代えた俊が舞妓さん集団に囲まれ、うりうり可愛がられていた。
帝王院が誇るイケメン集団に近寄りたくても近寄れない舞妓さん集団は、まずはオタクから知り合っていくつもりだろうが、




「貴方達の様な美しい芸術に、俺は未だ出会った事がない…」
「「「まぁ、お上手どすねぇ」」」
「この高鳴る鼓動が貴女に届くのならば、今此処で胸を切り開くのに…」

タラシ総長に舞妓さんの頬が染まった。






「シュンシュン…」
「そーちょー」
「「「………」」」
「流石総長だぜ、手が早い」
「ふふふ、カイザーに落ちない女性は居ませんからねぇ」


不穏なオーラを発しているオタク(大)がカツラと眼鏡を投げ捨て、有り得ないほど格好良く舞妓集団に近付いていく。




「俊、…二条城は飽きた。奈良公園に行くぞ」
「ふぇ?でもまだ舞妓さんのお写真撮って、」
「後で俺が芸妓装束を着てやる。それで我慢しろ」

太陽が再び吐血した。
舞妓姿の会長など見たくもない。

「でも…」
「鹿煎餅を買うか。鹿が腹を空かせているぞ」
「きゃ、きゃーっ!鹿ちゃんに会えるにょ?可愛いバンビちゃんとお写真撮りたいですっ」



結果。
帝王院が誇るイケメン集団、京都が誇る舞妓集団、敗北。


勝者、鹿。





「可愛いにょ、お煎餅美味しいにょ?パリパリ、ちょっと塩気が足りないにょ!ゲフ」
「俊、鹿煎餅は美味しくないよー」
「ハァハァ、一匹連れて帰りたいにょ。鹿ちゃん可愛いですっ」
「俊、あっちでカイ君が…つか神帝が舞妓姿で睨んでるよー」
「カイちゃん、待て」


「俊、俺は犬じゃないどすえー」



その日一日、えらい美人な舞妓さんが奈良公園に見られた。
らしい。



終わっとけ

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あきゅろす。
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