脇道寄り道回り道
とある二人の深夜[帝王院]
蒼い蒼い月が嗤う。
偽りにしては甘いその妖しい煌めきが、確かに心臓を貫いたのだ。



「─────今晩は。」


銀に靡びく糸の様な髪が。
全てを従わせるその声が。

(跪かせてやりたいほどに)
(狂わせてやりたいほどに)
(憎らしく愛しい、などと)



「何だ、無反応だねィ。…残念だ」
「………」
「裸の王様、ご機嫌麗しいか?」


そう、それはまるで支配者の威厳を秘めた(絶対なる勝者のそれに酷似した)囁き。

誰かが言った。
似ているのだと。(馬鹿らしい)



「見てごらん、今日は満月だ」




ならば自分と同じくらい強く(狂った様に熱く)、激しく(貪り尽くした様に脆く)、求めているのだろうか。

(人間の藻掻きなど)
(素知らぬ顔で嘲笑う)
(王たる生き物は、等しく全て)






「…お前の瞳に良く似ているなァ、





  ─────憎たらしいくらい。」



所詮、人間である自分は。


「お前は、誰だ」
「…さァ、誰だろうなァ」
「答えろ」
「何故?」
「興味がある」
「ほう、この俺如きに神帝陛下がか?」
「ああ、…この私如きが神皇帝に、だ」
「変な事を言うなァ、色男」


(惨めな感情を持て余しながら)
(未だ、その名前を知らない)



「人間は、ミステリアスなものに惹かれるのだろう?」
「…人間、か」
「王様は、人間の癖に人間じゃないと謳いながら歩いてる様だな。…流石、裸の王様だ」


随分、哲学的な皮肉は甘美な響きを秘めて。





「憎たらしいくらい、可愛いなァ」


(それは恐らく)
(彼もまた人間であるのだと)



「知りたければ、…捕まえてごらん。次の満月までに」
「………」
「ばいばい、裸の王様。」





甘く甘く、─────囁く様に。



鷹Z様へ、シュンカイみたいなカイシュンorz

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あきゅろす。
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