帝王院高等学校
ちらし寿司にはポテチと副総長
サボタージュは悪い事ではない、と。登山家が写真を展示しているブログの一説にあった。
目標に向かう心意気は不可欠なものだが、時には休憩も不可欠なのだと。目から鱗が落ちた気分になったのは、いつ。

毎日毎日考えていた。
何かに急き立てられている様な強迫観念は絶えず、何かしなければいけないのだと毎日、使命感と言うよりは切迫した気分。

何かしなければいけないのだと。
何かしたいのだ、と。
考えていたけれど、結局。すぐ近くの夜空で煌めくスピカの様に、届きそうで一生届かない距離に気付いていたのだ。

「青い青い地球も」
「己では決して輝けない暗い星」
「覗いてみようコスモスコープ」
「煌めく天体のカレイドスコープ」
「太陽が爆発したら、十分後には消えてしまう星から」
「260光年を越え、ヒッパルコスへ愛を込めて」
「スピカは何処で輝くの」
「スピカはまだ生きているの」



「「ヴァルゴの片隅で」」





●miku1192
  P.S.がポストスクリプトの略って初めて知ったw すんすんア⌒d(´ワ`) @junkpotdrive
23時間前

●GOLDwing
  ブログ更新お疲れ様です(´ω`)ヾ モテキングH君の特集続編期待☆ @junkpotdrive
22時間前

●taiyo801
  今日のtaiyoきゅんの寝顔も可愛いかったでつか?ハァハァハァハァ @junkpotdrive
2時間前

●pinalove0818
  モ-ニング息子☆すんすん(-: 昨日ゎ寝落ち平謝; )-; 今回の新作SSもTB良かッたZe<3 @junkpotdrive
10分前

○junkpotdrive
  いえいえ!みく姐の「ピーはシークレットにしなさい」が超正解だと思ってますにょ!これからも選り良い汚タク語録宜しくお願いしますなり(◎∇◎*)ぺこり @miku1192
10分前

○junkpotdrive
  やはりモテキングに反応なされましたか!流石お眼鏡が高うございます!然しF先生も眼鏡が離せませんにょ!(◎ヮ◎)ゝ @GOLDwing
9分前

○junkpotdrive
  今朝の生は拝んでおりません。不甲斐ないオタクでございます。…でもっデートで必ず色々拝んで来ます!待ってて下さいにょ!(◎人◎) @taiyo801
8分前

○junkpotdrive
  ぴなパパおはにょーございます!(◎∀◎)ノ いつも感想大謝☆こっちこそピヨリーヌたんに癒されてますにょ!(◎Д◎)ハァハァ @pinalove0818
6分前

●pinalove0818
  おォ!早起き偉ス(-: 実はぅち4区なんだZe<3 近く寄ッたらオフらん?<3 話したぃ事もぁるからSa(-: @junkpotdrive
3分前

○junkpotdrive
  マジっスかァアアア!幸せの4区?!テラ近ス!ギガ短距離恋愛!是非とも宜しくお願いしますにょ(*◎∀◎*)ハァハァ @pinalove0818
2分前





伊勢海老とイクラに雲丹、果ては金箔までふんだんに盛り合わせた煌びやかな散らし寿司。
白子とオクラのお浸し、魚の粗身を炊いた煮付け、季節の野菜が彩り豊かな天麩羅、鍋一杯の吸い物には鱶の白身と白葱が漂っている。

「うわぁ、今朝は何か一段と凄ぇな」
「じゅるっ。おっといけねぇや、涎が出ちまう。姐さん、何か良い事でもあったんか?」

ごくりと唾を飲み込んだ男達は、その上に茶碗蒸しだろう蒸し器が追加され興奮気味だ。

「やった!鰤の粗煮、こいつぁ俺の好物だ」
「兄貴、わしの故郷じゃ粗炊きって呼んでまさぁ。にしても姐さん、料亭顔負けの腕前だ」
「茶碗蒸しに餅入ってっかなー!銀杏は時期外れだろ?」
「姐さんの散らし寿司じゃねぇか!よっしゃ、酒出せ酒っ!」

厳しい男達がぞろぞろと顔を覗かせる。下っ端らしい若者がせっせとテーブルに料理を並べていきながら、続々と席に付く男達と朝の挨拶を交わしていた。

「おい関根、茶ぁ淹れてこい。親父は風呂か?」
「あっ、うす!姐さんが朝方戻られるまで起きてらしたんで、さっきまでお休みだったんす。麦茶っす、どぞ」
「そう言や姐さん、昨日の晩飯作ってから出掛けになってたなぁ。関根ー、箸取ってこい」
「箸くらい自分で取れ、松岡」

厳しい男達が下ろしていた腰を上げた。一見した所、ホストか芸能人めいた美形が細身の眼鏡を押し上げ、舎弟を扱き使っていた男を睨み付ける。

「お、おはようございます、脇坂の兄貴」
「若いの苛めて喜んでんじゃねぇ。その内そのドタマ弾かれんぞてめぇ」
「す、スんません兄貴」

怯んだ男はそれまでの偉そうな表情を消し、背を正してペコペコ頭を下げた。

「で、田村はどうした。昨日から見ねぇな」
「この間の件で昨夜から神奈川に向かわれましたや。夜までには戻られるそうでさぁ」
「あの餓鬼ぁ、頭のワシに黙ってまた」

呆れ混じりの短い息を零した男は、その恵まれた容姿で台所を覗き込む。
確かに美形だが体格も良く、目尻に刻まれた皺やきつい目付きがそれを悟らせない彼には、居間に集まった皆の畏怖と憧憬の眼差しが注がれていた。

「おはようございますぁ、姐さん。いつもすいません」
「ああ、脇坂か。ひまはどうしている?」
「はい、入浴なされてます。もう出られる頃合いだと、」

手早く片付けたらしい金髪が、無愛想甚だしい美貌で恐らく最後となるだろう大皿を抱え振り返る。暖簾を押し上げ彼女の通り道を作った男は、大皿に並んだチョコレートやポテトチップスを見やり痙き攣った。
慣れたとは言え、テーブルの上には純和食が並んでいるのだ。やはり違和感が拭えない。

「あー、さっぱりしたー」

と、漸く主役の登場らしい。
各々、姐であるアリアドネに挨拶をしていた男達が素早く立ち上がり、タオルで頭を拭いながら素っ裸で入って来た男へ深く頭を下げる。

「おはようございます親父!」
「組長、うっす!」
「会長、東北連から連絡がありました!」
「お着替えをお持ちしました親父!」
「組長っ、コーヒー牛乳ですぁ!」

部下が持って来た黒地の浴衣を羽織り、濡れたタオルを押し付けてコーヒー牛乳の瓶を一気に飲み干す。ぴんっ、と背筋を伸ばして立っている男らは、ふぅと満足げに息を吐いた高坂を見つめたままじっとしている。

「お!アレク、何か今日はいつもより豪勢だな。何か良い事でもあったのか?」
「ひま、今から暫く出掛けてくる。一応、多めに傷まないものを拵えたつもりだが、昼の用意は頼んだ」
「あ?またどっかの道場から誘われたのかよ?それとも婦人会のバスツアーか?今日、雨降るかもっつってたろ。止めとけ」
「シェリーが冬臣に攫われた」
「ぶっ」

黙々と料理を盛り付けている妻と会話しながら、漸く上座に腰を下ろした高坂に男達も腰を下ろした。が、二本目のコーヒー牛乳を吹き出した高坂に皆の視線が注がれる。

「ちょ、待て、何でそこでトシの名前が出るんだよ?!冬臣の奴、文仁にせっつかれて帰ったんじゃなかったのか?!」
「冬臣の雇用主がシェリーに用があるらしい。詳しい所までは判らんが、総合病院に軟禁されている」
「総合病院って、おい、それこそトシの家じゃねぇか…。アイツ、40過ぎてまだ問題事巻き起こしてんのかよ…」

箸を掴んだまま頂きますとも言えず固まっている男達の中に、青冷めた男達が見えた。
その中でも中堅役である男が薄くなってきた頭をひっきりなしに掻きながら、ひくひくと唇を痙き攣せる。

「お、親父…、トシさんっつったら、若ぇ頃に俺ん所ぶっ潰したあの『トシさん』でっか?」
「あ?…あ、ああ、そうだったな、お前ぇ昔は族なんざやってやがったか」
「はい。若気の至りとは言え、結構名が知れてた俺らをたった一人で潰したお方ですぁ」

武闘派として組まで持つ男の青冷めっ振りを見た男達が、みるみる青冷めていく。吹き出したコーヒー牛乳を拭う若い衆を横目に、瓶から手を離した高坂が妻の差し出す茶碗を受け取りながら顎を掻いた。

「おい脇坂ぁ、冬臣か文仁から何か聞いてっか?」
「そんな訳ゃないでしょーが、あっちはSの陛下でこちとらF上がりですぜ。幾ら後輩だろうが、あっちはワシなんざ鼻にも掛けてないでしょ」
「性格はともかく、文仁は他人を見下してる様な態度を控えねぇからな…。冬臣よりナンボかマシには違いねぇが」

はぁ、と溜息を吐いてポテトチップスを一枚、箸で掴み上げた男は山盛りのご飯にそれを乗せ、ポリっと頬張った。それを合図に各々食事開始だ。

「脇坂ぁ、今日何かあったか?」
「関谷組のアポがあるくらいですかね。食事会が、20時に料亭川柳ですぁ」
「急ぐ用じゃねぇな。俺とアレクが出てる間、おめぇに屋敷の事は任せたぞ」

不似合いな割烹着を畳んでいた人がきょとりと首を傾げ、チョコレートソースに天麩羅を浸している亭主を見上げる。

「お前も来るのか、ひま」
「一人行かせられるか。冬臣だって男だからな、年も近いし…」
「キングダムの血に懸けて浮気はしない」
「お前よぉ、未だにトシに惚れてんだろぉがー?」

無表情で口籠もった妻に舌打ち一つ、遥か昔プロポーズを重ねた幼馴染み…いや喧嘩友達、か。を思い起こして息を吐く。確かにあれは、男女問わずタラシていた。

「あいつは駄目だ。諦めろって何回も言ったろ」
「シェリーは私の初恋だ。容易く忘れる事は出来ない」
「あいつの留学先がお前の母校ってのは知ってる。トシと出会ってなけりゃ、お前が来日する事もなかったんだろぉよ」
「何を拗ねているんだ?そう言うひまこそ、シェリーに求愛するつもりだろう?やめておけ、シェリーは侍だ」
「違ぇよ、俺ぁ去る者追わず主義だかんな。惚れた女房が違う女に取られるなんざ、背中の虎に懸けて我慢ならねぇ」
「ひま…」
「ふ、愛してんぜアレク。…だから浮気しないで下さいお願いします」
「にゃーん」

見つめあう二人の世界に、飯の香りに誘われてきた猫達が割り込んだ。普段の王子様染みた美貌を赤らめた人は割烹着を棚に仕舞い、出汁を取った後の鰹節やら魚の粗やらを皿に盛っている。
テレビ欄だけ抜き取った新聞の上に、猫でも食べれそうな天麩羅やらを転がした組長は密かに誓っていた。

「…トシぃ、アレクだけは譲らねぇぞ」

ああ、思い出される遥か昔の青春時代。当時からバイだった男は男女問わずタラシにタラシ、コマシにコマシしていた。
けれど女の大半を、喧嘩友達に奪われていたのだ。そう、遠野俊江と言う名の『悪魔』に、だ。

「あのオカマ、しっかり見張っとけや畜生」

彼女は結婚後、嵯峨崎の監視下にある。何せ亭主が亭主だ。実際の所、高坂ですら本人に会った事はない。高坂組直属の警護隊は叶文仁の元にあるが、あの文仁ですら一目置いていると言う『皇子』は遥かに年下だ。
十代の妻を孕ませた男は、幼い頃の愛息子の巨大ブロマイドを見上げ呟いた。

「ひなちゃん、弟か妹は要らないかな?」

近頃、著しい成長期を遂げた一人息子は高坂よりもデカい。喧嘩も強い上に冷静な判断も出来るインテリ武闘派だ。組合からも早く組を持たせろと良く言われている。
が、本人が嫌なら継がせる気はない。可愛い可愛い一人息子に、危険な道を歩ませるのは親として不安だからだ。

「ちょっとひなちゃんに電話しよう。おい、脇坂。携帯貸せ」
「どうぞ親父」

父親の番号を着信拒否にしている冷たい息子へ、ポテチを噛りながらコールした男はニマニマと頬を弛めた。

『ああ、俺だ。何か用か脇坂』
「もしもしひなちゃん、パパでちゅよー」
『…切るぞ』
「待て頼む切るな」
『ちっ。何の用だよ親父、とっとと終わらせ、』
『高坂ぁ、ビール買って来ーい!』
『巫山戯けんなクソ犬が!勝手に漁ってんじゃねぇぞボケ!』

賑やかな向こう側に父は口元を覆った。今の声はまさか、恋人だろうか?帝王院は男子校だが、そんなもの今更気にする事ではない。

「ひ、日向。カレシが出来たならパパにも紹介しなさい」
『あ?』
『高坂ー、このチーズ食ってい?あ、サラミもあった。食ってい?』
『判ったから黙ってろ嵯峨崎』
「………嵯峨崎?」

チラシ寿司にポテチを散らした男は痙き攣りながら、

『良い事考えた。腕相撲で負けた奴が肩揉むとかどーよ、テメー完敗決定ー』
『悪いな親父、掛け直す』

一方的に切れた通話に、茫然自失。

←いやん(*)(#)ばかん→
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