帝王院高等学校
撮影裏話3
肆章
ツナマヨベーグルは如何っスかーより



撮影後。


「けほっ、こほっ」
「大丈夫か日向君!悪い、役に没頭する余り力が入り過ぎたみたいだ」
「だ、だぃじょうぶ、で…けほっ、こほっ」

ベーグルが未だに口の中に入っている日向の背中を慌てて撫でる爽やかイケメンの姿がある。
役では世間知らずな我儘さが際立つ不良所だが、実際は人気実力共に太鼓判捺しの誠実な青年だ。

「落ち着いたか?本当にごめんな」
「だ、大丈夫です。すみませんでした」
「ジュースお代わりするか?」
「いえ。でもこのベーグル、嵯峨崎さんの手作りなんて凄いです!とっても美味しかったし!」

これ誰だと言う突っ込みは重々受け止めたい所だが、若手アイドルである高坂日向の純粋な憧憬の眼差しに、ポリポリ頬を掻いた佑壱が苦笑する。

「そうか?有難う、料理が趣味なんて男の癖に可笑しいよな…」
「そんな事ないですよ!健吾リーダーも隼人君も僕も一応寮生活だから料理するし、でもこんな手の込んだ料理なんかとても!」
「はは。そんなに誉められたらむず痒いな。でも、」

佑壱より僅かばかり目線が高い日向の頬に手を伸ばし、爽やかとはとても言えない雄の笑みを滲ませ、


「日向君の口に入るんだって思って、…頑張ったから」
「ひゃ!」
「美味しかったなら良かった」
「さささ嵯峨崎さんっ」
「へぇ、日向君は耳が弱いのか。良い事知ったなー」
「かかか揶揄かわないで下さいよぅ!」

耳元で囁かれた日向が後退り、先程の妖しい笑みを消した佑壱が快活に笑う。





「何っつーかさぁ」
「どうかしましたか帝王院さん?」
「嵯峨崎さんのが、風紀委員長役に合ってる気がしねぇ?」
「えっ」

青冷める二葉の背後で、大御所童顔俳優がじっと凝視している事に気付いたのは神威だけだ。



「太陽、そんなに二葉君が気になるなら早くプロポーズして来なさい。二葉君なら父さんも大賛成だ。美人だし」
「は、はぁ?馬鹿じゃねぇの?何で俺があんな餓鬼に!」
「シャイな太陽も父さんは大好物だ」

無表情で宣う超大御所俳優を蹴り飛ばすチビっこが見られた。

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あきゅろす。
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