帝王院高等学校
導標を知らぬ日の鼓動
例えば、考える訳だ。
俺と言う人間が如何に脆弱で可哀想な人間だったかを、今にして。


生きる目的、意味、理由。
幾ら人間が考える生き物だからと言え、齢12にして派手に親不孝へ走るのは、…やはり甚だ遺憾な事だろう。

などと哲学者的な戯れ言をほざいている場合ではない。
俺は生まれ変わったのだ。寧ろ奇跡的な出会いだったと言えるだろう。



俺と言う人間は本当にどうしようもなくつまらない人間だ。いや、つまらない人間だった。
12歳にして170cmを記録した体格、やや目付きの悪い老け顔。とにかく世間一般に言う『不良』になるのは至極必然的な事だ。

然しそれを選んだのは紛れもなく自分自身であり、父母が幼い息子を虐待していただとか失恋したからだとかヤンキー漫画に憧れただとか…、とにかくそんな思春期にありがちな可愛らしい理由ではない事を先に述べておく。
…訳あり変装受けを期待していた皆さん、大変申し訳ない。



俺の人生は甚だ平凡だ。
と言うにはやや心許ない。中々にアレがアレした人生だった。

ひとえに、俺は可愛くない人間なのだ。いや、然しながらやはり平凡な生き物なのだ。
15歳にして初恋すら知らない時点で、一介の雄にもなれない馬鹿だとも言えるかも知れない。だが運命の恋愛と言うものは、そうそうやって来ないものではないか?

俺にだって告白された経験くらいならあるが、相手が化粧バッチリ・ミニスカバッチリな婦女子だったら何よりもまず先に、


『あ、揶揄われてるのか』


と考えるだろう?
だから平凡な俺は涙を飲んでお断わりするのだ。必死で涙を我慢して、



何故か婦女子達は青冷めて。



…はてさて、中学生に本気で戦いを挑んでくる大人気ない高校生らを相手に毎日必死で正当防衛をしている内に、元来面倒臭がりな俺は閃いた。

敵が多すぎるなら、『全て味方にしてやろう』。

つまり、…そう言う事である。
デカイものは頭を潰せば良い。地域一番の極悪不良を命からがら倒した俺は、13歳にして地域一番の平凡不良に転身だ。
親や学校に知れたらマズイ事この上ない。

だから不良勤務時には銀髪のウィッグ+サングラス、学生勤務時には素顔に眼鏡と言う何とも平凡な二重変装生活を謳歌した。
目付きの悪さを隠してしまえば、易々と喧嘩を売られる事が無いと学んだからだ。



そして月日は流れ…。

大切な仲間と出会い、高校受験を前に奇跡的な出会いを果たすまで、満たされているながら何処か満たされない日々を送りながら、




ああ、
本当に何とつまらない人生だったのだろうか。然しそれは有難い事に過去形である。

もう一度言おう。




俺は生まれ変わったのだ。









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