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無色ノ噺
臨時休暇

いつものように会社へ出勤したが、何か変な感じがした。
体がふわふわして、頭が起きない。
睡眠不足はありえないし、かといって、栄養失調もないだろう…たぶん。

体が落ち着かないまま、仕事をこなし、昼休みになると、社内で最近人気の同僚に呼び出された。



「オレ、お前のことが好きなんだ。」

「…あの、ですね?お互い男同士ですよね?」

「性別なんか関係ない!」



ガシッ!と掴まれた肩が気持ち悪い。
それより、ぐらぐら、す…る……。

相手の肩にぽふっと倒れかかってしまった。



「ちょ、風間…って、おい!大丈夫か!?」

「…るせぇ。掴んでる手ぇ離せ。」

「か、風間?」



口調が素であっても、気づかないくらい、頭が回らない。
こりゃ…



「風邪、移ンぞ…?」

「いや、それは寧ろ大歓迎…じゃなくて、本当に熱いぞ!」

「…帰るか。」

「あ、じゃあオレが」

「いい。」



同僚から離れると、支えがない分ふらふらしたが、いつまでもよっ掛かっている訳にはいかない。

なんとか独りで歩けるが、途中倒れるかもしれないな…。

弱ると誰しも、淋しくなって自分が一番求めてる人を呼び出したくなる。
そんな気持ちをぐっと堪えて、オレは退社した。

お姉様方からマスクやら、ホカロンやら貰ってしまった。



――――――――――――――



「ただいま…」



無事帰宅出来たものの、スーツを脱ぎ、スウェットに着替えるのが億劫で仕方がなかった。
何か食べて、薬を飲まなきゃいけないが、ベッドへ沈み込むとあまりの怠さに起き上がれず、そのまま寝てしまった。

風邪による寒気と、怠さ、それから寂しさに…



「海那…」



無意識にあいつの名を呼んでいた。



――――――――――――――



額に冷たい指の感触。
ほてった体には丁度いい温度だ。
離れていくその温度が、優しい指が嫌で、思わずガキみたいにその手を掴んでしまった。

…………は?
何で、手が…?

うっすら目を開けると…



「あ、おはよぉ、お兄さん。」

「!」



慌てて手を離し、起き上がろうとするが、くらりとして無理だった。



「ごめんねぇ…。朝、気づけてたら休ませたのに。」

「…ぁ……」



すっかり声が嗄れて出ない。
仕方ないから首を横に振る。

無性に嬉しかった。
誰かが…、望んでやまない海那が側にいてくれることが。



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あきゅろす。
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