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無色ノ噺
出勤

目覚まし無しで起きれるやつっているだろうか?
いや、いつかは起きるけどさ。
自然に起きたい時間に起きれるってこと…。



「………、………さん、お兄さん!」

「………ん、ぁ…?」

「起きないとやばいんでない?」

「…てめぇ、どっからわいた。」

「やだなぁ、虫みたいに言わないでよぉ…。にしても、その掠れ声最高ぉ。」



オレは溜息を吐くと、ベッドから降りた。

何故かコイツはオレの家に上がり込んで、毎朝起こしてくれる。
有り難いが、若干の恐怖も感じる。
きっと、マンションの管理人にでも言ってスペアキーを作ってもらったんだろうけど。



「…海那、いつも思うんだが、夜遅いくせに毎朝来んの大変じゃねぇ?」

「ぜーんぜん!毎回お兄さんの寝顔見れるから役得だよぉ。」

「…凡人の何処がいいんだか。ま、たしかにてめぇみてぇな美形の方が大変そうだしな。」



黒のスウェットを脱ぎ、シャワーを浴びに行こうとすれば、やつは前屈みになって震えていた。

腹でも下したか?

構わず浴びて、スーツの上着以外を着、昨日のうちに準備しといた朝食を温めて食べる。
その間にソファで寝てしまったらしい海那に毛布をかける。



「ったく…こっちの気も知らねぇで。」



出勤の準備が出来ると、オレはいつものようにコーヒーを飲み干す。



「…行ってきます。」



ガチャ…パタン…カチャリ…―



施錠したのを確認して、会社へ向かった。
うっかり会社のIDカードを忘れたまま…。



――――――――――――――



オレはお兄さん…悠志さんが、出勤したのをこっそり見届けると、ソファから起き上がった。



「…知ってるよ。だって、悠志さんとオレの想いは…。」



クスリと笑う。

嗚呼、オレ今すっごい飢えた獣の目をしてんだろうな…。

悠志さんの部屋は、当たり前だけど悠志さんの香がして、うっかり理性を持って行かれそうになる。
今朝なんか、かなりやばかった。
いきなり脱ぐんだもん。

それでも、毎朝、理性を総動員して悠志さんの部屋に忍び込むのは、眠る前にその愛しい姿を見たいから。



「…あれ?これって会社の?」



悠志さんの忘れ物。



「ふふ!届けてあげよ。」



オレはそれを掴んで、一旦自分の部屋に戻り、身なりを整えてから会社へ向かった。



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あきゅろす。
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