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無色ノ噺
私と大切な御主人様

玄関を開け、メイドに壱魅様の居場所を聞くと真っ直ぐ、そこへ向かった。
ドアを開けると、泣いている壱魅様を抱きしめた次期当主がいた。



「よぉ、早かったじゃねぇか。」

「壱魅様を離せ。」

「秋江さ」

「嫌だね。」

「…私がキレないうちに離せ。」



一瞬、私を見た壱魅様だったが、次期当主に阻まれた。

あぁ、苛立つ。
波立つ。
感情を抑える自信がない。



「壱魅は、オレがもらう。いいだろ?次期当主だし。」

「…返せ。」

「別にいいじゃねぇか。主人を探してんだったら、他にもいんだろ?」



壱魅様、壱魅様…申し訳ありません。
感情が抑えられない。



「壱魅様だけが、私の主人。誰にも渡さない。俺のものだ!」



泣いて赤くなった目を見開く、壱魅様を俺の腕に閉じ込める。
すると、次期当主は肩を竦めて言った。



「だとよ、壱魅。どうする?」

「あ、ぅ…あの」



………まさかとは思うが、嵌められた?



「壱魅、様?」



真っ赤な顔の壱魅様に、これが劇だったことを知る。



「あの、今の言葉、ホント?僕は秋江さんのもの?」

「っ!」

「違うの?」



壱魅様の目がうるっとした。
仕方ない。
暴走した私が悪い。



「違いません。私…、いえ、俺は壱魅様が欲しい。俺のものにしたい。だけど、壱魅様の幸福を最優先にしたいんです。」

「なら問題ねぇな。なぁ、壱魅?」

「ふえ!?」



一瞬、次期当主と目の合った壱魅が私に目を戻すと、耳まで赤くなった。

そうか…。

私は気づいた。
だから、ニコリと微笑むと、その体を姫抱きした。



「さぁ、帰りましょう?」

「えぇ!ちょ…」



しだばたする壱魅様をそのままに、私は踵を返したが、止まって次期当主に言った。



「本当に手を出していたら、殺すつもりでしたから。」

「あ〜…はい。」



それだけ言うと、本家から帰路についた。



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あきゅろす。
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