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無色ノ噺
私と御主人様の涙

いつも通り、学校から帰った壱魅様。
今日も良いことがあったのか、うきうきしている。



「聞いて、聞いて!明日、神原生徒会長が帰国するんだって!」

「!!」

「どんな方だろう?僕の血縁関係の次期当主様なんでしょう?」

「え、えぇ。」

「お優しいのかな?」



うきうきした壱魅様に、私は何も言えなかった。

だから…、だから、壱魅様はあのような事になってしまった。



――――――――――――――



いつもなら学校から帰る時間に、本家から電話がかかってきた。



「はい、秋江です。」

『すまないが、壱魅は暫くうちで預かる。』

「は?あの、どういうことでしょうか?」

『…息子が、あ、ちょ!』



電話を誰かが奪ったみたいだ。



『よぉ。あんたが秋江?』

「…そうですが?」

『壱魅は、オレのオモチャにすっから返さねぇよ。』

「!」



それだけ言って、電話は切られた。

壱魅様をオモチャ、だと?

沸々とどす黒い感情が沸き上がる。



「あのガキ…」



―――潰す。



壱魅様は、誰にも渡さない。
あの笑顔を、優しさを、私が守る。
あの方が、傷つくことも、苦しむことも、悲しむことも、必要ない。
全て、私が排除する。
たとえ、それが神原家の次期当主であろうと…。

私は、牙を剥く。

電話越しに聞こえた啜り泣く声。
あれは壱魅様のもの。
泣いてるのだ、あの方は…。

助けにいきますから、どうかご無事で…。

私は、本家に車を飛ばした。



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