Devotion(鬼閻/鬼男転生) 想いには名が有った筈なのに、僕はそれを思い出せないでいる。 心臓はそれでいいと優しく凪ぐけれど、どうしてもその名を思い出さなくてはならないような気がするのだ。 あなたに伝えたかったこの想いに、名を与えなければならないのだ。 だけど、あなたが誰なのかさえ思い出せない。 宵闇が空を包む時刻、僕は声を殺して嗚咽する。 闇が怖いわけではない。 この闇が、酷く懐かしいのだ。 思い出せない何かが、胸をどうしようもなく揺さぶる。 例えるならばこれはノスタルジア。 例えるならばこれはリグレット。 例えるならばこれは…。 独りの部屋に、低空を滑る慟哭が響く。 えずいて、えずいて、胸の奥の引っ掛かりを、必死で押し出そうとする。 更けゆく優しい宵闇は、僕を置いて西の空へ去っていった。 僕はまだ、あなたを思い出せない。 鳴りやまない時計のベルのような、あなたは誰ですか。 そして、胸に深く刻まれたこの想いの名は…。 ―Devotion― ←→ |