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パートナー選び




いつの間にか季節は冬になっていて、なまえはリリーや、もちろんリーマスたちと過ごす時間が多かったし、あれからシリウスと喧嘩することも無かった。
冬休みに入ったが、ほとんどの人間はクリスマスに行われる行事に参加するべくホグワーツに残っている。

「なまえ、クリスマスのことなんだけど」

夜、女子寮の二人の部屋で、リリーがドレッサーの前に座り濡れた髪を乾かしながら言った。

『何?』
「ダンスパーティー、ジェームズに……誘われたの」

顔を耳まで染め嬉しそうに、しかし困ったように言うリリーに、なまえはクスッと笑う。

『あなたの気持ちはどうなの?』
「そ、それは……」

「だって」だとか「だけど」という言葉をぶつぶつ呟くリリー。なまえはリリーの後ろに立って肩を抱いた。

『好きならそれでいいんじゃない?』

なまえの言葉にリリーはハッとして、それから優しく微笑んだ。

「そうね」

なまえも微笑みで返し、二人はジェームズのことを話し始める。
暫くしてリリーは、ふと何か気づいたようになまえを真っ直ぐ見つめた。鏡越しにリリーと視線が交わる。

「で、あなたはパートナー決めたの?」
『今それ聞くこと?』
「要するに決まってないのね」

ハァ、とため息混じりに苦笑するリリーと、これまた同じ様に苦笑するなまえ。

「断ってばかりいるからよ」
『話したこともない人に誘われたって困るわ?』

『そうでしょ?』と同意を求めれば、リリーは「そうだけど…」と肩を竦める。

『まぁ、ダンスなんて踊れないし。その日は大人しく部屋にいるわ』
「そんなこと言って」
『それよりリリー!折角ジェームズとパートナーになるのなら、素敵なドレスを用意しなくちゃ』

鏡の中のリリーに微笑んで、なまえはベッドの縁に座る。リリーはなまえったら、と不満げな顔で髪をとかし始めた。








その翌日。なまえとリリーが朝食のために大広間に行けば、ジェームズとシリウス、リーマスとピーターが席に着いていた。

「あら、早いのね」
「こいつの寝相が悪くてな」

シリウスがジェームズを指差してけらけらと笑う。

「な、シリウスだって寝言で何か叫んでたじゃないか!!“そこがいいのか?”とか“もっと声出…っつ!!い、痛いじゃないか!!」
「余計なこと言うな馬鹿」

シリウスに頭を殴られたジェームズは、目に涙を浮かべながら殴られた箇所をさすっている。

『あらシリウス、随分卑猥な夢でも見てたのね?』
「…………」

なまえが悪戯に笑みを浮かべれば、シリウスはばつが悪そうに視線を逸らした。ちなみに、リリーは軽蔑の眼差しをシリウスに送っている。リーマスはまるで他人のフリ。
そんな微妙な雰囲気の中、なまえは後ろから声を掛けられた。振り向けば、そこには知らないハッフルパフ生。

「なまえ・みょうじ実は、ずっと前から君のこと、その……いいな、って思っててさ」

綺麗なブロンドの男子生徒は、耳まで真っ赤になった顔を隠しながら言った。

「良かったら、僕とダンスパーティーに出てくれないかな……?」

言い終えた男子生徒はまるで茹で上がったタコのように真っ赤で、後ろからジェームズがクスッと笑う声が聞こえる。

『……あの、ごめんなさい』

頭を下げるなまえ。しかし男子生徒も簡単には引き下がらなかった。

「頼むよ!!僕だけパートナーが決まってなくて……それにほら!!君は美人だし、みんなに自慢出来るだろ?お願いだからさ!!」
「残念だが、こいつを誘うのには俺の許可が必要だ」

その声に右を見れば、シリウスが仁王立ちをしていた。

「なまえはお前の価値を高める道具じゃないんでね」
「なんだよブラックめ……自分がモテるからって偉そうに言うなよ!!」
「それはモテない男の僻み、だな」
「、な!!」

それを聞いたジェームズが、今度はぷっとカボチャジュースを吹き出している。ふん、と鼻で笑ってやれば、男子生徒は顔を赤くして自分の席へと戻っていった。

「一体なんなのよ、今の男は」

リリーが自分にかかったカボチャジュースを拭きながら首を傾げる。なまえは困惑を顔に浮かべながら苦笑した。

『さぁ、名前さえ知らないわ?シリウス、ありがとう』

シリウスを見れば、優しく微笑んでなまえの額をぴんっと弾く。

「こんなお子様みたいな奴のどこがいいんだか」
『お子様で悪かったわね。シリウスの馬鹿』

シリウスは「悪い悪い」と言ってなまえの頭をポンと叩いた。
その後ジェームズがカボチャジュースをかけてしまったことをリリーに土下座し、リリーは小さなため息と共にジェームズにダンスパーティーの返事を告げた。もちろんジェームズはその場で奇声を発し、一日中ずっとにやけていたことは言うまでもない。
そんなジェームズに大広間を出るときに耳打ちをされたなまえ。

「シリウスの寝言には、必ずなまえの名前が出てくるんだよ」

それだけ言ったジェームズは、スキップで去っていった。
一瞬思考が停止したなまえはジェームズの言ったことを頭の中で整理する。

『、どういうこと?』
「……どうしたのなまえ?さぁ、行きましょう」

なまえは疑問を頭に残したまま、リリーの元に走った。


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