素直になって
なまえが医務室から解放されたのは翌日の朝だった。マダム・ポンフリーに無理はするなと念を押され寮に戻っている最中、角を曲がってすぐ目の前にジェームズとシリウスが現れ、ジェームズはなまえを見つけると、笑みを浮かべながら近づいてくる。
「やぁなまえ!!もう大丈夫なのかい?」
『えぇ大丈夫よ…あの、ジェームズ?』
「なんだい?」
『……シリウスと、二人で話がしたいの』
なまえの言葉に一番驚きを見せたのはもちろんシリウス自身で、ジェームズの一歩後ろでなまえを見ていたシリウスがきょとんとしている。ジェームズはというと、一体どんな了見だとなまえの肩を揺すり出す始末。
仕方がないので簡潔に理由を説明すると、ジェームズはあぁなんだ、といった様子で手を振りながら去っていった。
二人になったなまえとシリウスの間に、静寂が訪れる。
「……なんの用だ」
先に口を開いたのはシリウスだった。それ程離れていない二人の距離が、より一層緊張感を齎す。
『あの、その…ありがとう』
「、?」
突然礼を言われ、シリウスはまたきょとんとした表情でなまえを見た。
『ホグズミードから、あたしのこと運んでくれたのよね』
「……あぁ」
『迷惑掛けてごめんなさい』
「別に迷惑なんかじゃない」
『……あたし、あなたのこと誤解してたわ』
「どんな誤解かは想像がつく」
苦笑しているシリウスに、なまえはクスッと笑った。
『仲直り、よね』
「……俺は喧嘩したつもりなんてないけどな」
『あら、あたしだってないわよ』
「ふん、どうだかなー?」
静かな廊下に、二人の笑い声が響いた。
「あら、仲直りしたの?」
寮に戻ると、ジェームズから聞いていたのかリリーがそう言った。
『えぇ、たぶん』
「たぶんって何よ、曖昧ね」
『だって、仲直りの前にあたしたち喧嘩なんてしてないもの』
「よく言うわよ」
なまえがおどけて言えば、リリーは嬉しそうに微笑んだ。
ローブに着替え女子寮を出る。談話室に降り立つと、リーマスがソファに座っていた。
「おはようなまえ。もう平気?」
『平気よ、昨日はありがとうリーマス』
なまえがそう言えば、リーマスはふんわりと微笑んだ。
『それとね、リーマス……』
リーマスに小さく耳打ちをする。
『あたしの過去について、もちろんヴォルデモート郷のことについて誰にも言わないで。時が来たら、自分で話すわ』
なまえの言葉に、リーマスは首を縦に振った。そして三人は朝食の席へと向かう。
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