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忘れられた過去




「……“あの人”、に?」

リーマスは目を見開き、小さな声でそう言った。
……リーマスは何も知らないんだった。

『黙っていてごめんなさい…実はあたし、この世界の人間じゃないみたいなの』
「この世界の人間じゃない?それは一体……」
『自分でもよくわならないの。ただ…ダンブルドアが異世界の人間なんじゃないか、って』

少し不安げにダンブルドアを見れば、なまえを見て優しく頷いている。

「……そんなことって」
『でも、今現にあたしはここにいるのよ?』
「あぁ、うん…そうだね」

眉を下げながら、リーマスは苦笑した。なまえもそれを見て、同じように笑う。
ダンブルドアは大きく咳払いをし、なまえを真っ直ぐに見た。

「それで、記憶は?」
『はい。確かに戻りました』
「ふむ…」

しかし一瞬、ダンブルドアのキラキラした瞳が曇ったのを、なまえは見逃さなかった。









なまえは、日本のとある孤児院で育った。
親の顔は覚えていない。親がいた記憶すらない。
唯一親の居たという証拠が首にぶら下がる鍵だった。鍵にはなまえの名前と、そして両親のイニシャルが彫られているのだ。
ある日、いつものように読書をしていたなまえが、ふと誰かの視線を感じその方向を見ると、いつもは壁のあった場所に扉があるではないか。その壁にはなまえが小さい頃に描いた自分と想像の父親が並んでいる落書きがあったはずだから、扉があるのは確実におかしい。

「なまえ」

扉の向こうから、誰かがなまえを呼んでいる。何故だかひどく懐かしいその声に、なまえは問いかけた。

『……誰?』
「名はヴォルデモート郷」
『ヴォルデモート?』
「俺様と共に来い、なまえよ。鍵は持っておるだろう?」
『鍵?』

なまえは胸元の鍵を見た。一度躊躇ったものの、それを手に取り鍵穴に差し込む。
ガチャっと扉が開き光に包まれたなまえは、そのまま意識を失った。







『目覚めたらもうここにいたわ』
「そんなことがあったなんて」

リーマスは驚きと不安が入り混じった表情でなまえを見ていた。それを横目にダンブルドアは腰掛けていた椅子から立ち上がる。

「……なまえ、今はゆっくり休むことじゃ。リーマス、なまえについておってくれ」
「はい」

ダンブルドアはふんわりと微笑んで、医務室を去っていった。
なまえは先程言いそびれたことを慌ててリーマスに言う。

『あ、ここまで運んでくれてありがとう』
「いや、僕じゃないよ」
『え?』
「シリウスだ」

突然出てきたその名前に、なまえは目を見開いた。リーマスはその様子に苦笑している。

『……シリウスが?』
「あぁ、そうだよ。なんだかんだ言っても君のことが心配なんだ。あいつはそういう奴さ」


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