照れ隠し
「もう大丈夫よ」
医務室に着いてすぐ、マダム・ポンフリーが慌てて手当てをしたお陰でシリウスは大事に至らなかった。
「本当、無茶したねー」
ジェームズは何が可笑しいのか笑いっぱなし。シリウスは相変わらず仏頂面。なまえは肩を竦め、このどうしようもない状況にため息を吐いた。
「ところでさ、シリウスはいつまでそうしてるつもりなんだい?」
シリウスの肩に手を置いて、悪戯に笑うジェームズを、シリウスが一瞥する。
「ずっとそんなだと、なまえが可哀想じゃないか」
なまえは訳も分からず首を傾げた。
「ほーら!!」
ジェームズが背中を押すと、シリウスは深いため息を吐き、なまえをちらりと盗み見る。
「シーリーウース!!」
ジェームズに急かされ、チッと舌打ちをしたシリウスは、なまえを真っ直ぐに見つめた。だがしかし。
「ほっといてくれよ…」
そう言って、またそっぽを向いてしまった。
……な、なんなの!?
なまえは立ち上がり、一度シリウスとジェームズを交互に見据えた後、医務室を走り去った。
「君は馬鹿だね、シリウス」
「……煩い」
なまえが去った後、シリウスは頭を抱えて俯いていた。それを見ているジェームズは、呆れてため息を吐いているのだった。
『なんなのよ、本当に……』
医務室を出て、寮へ戻ろうと廊下を歩いていたなまえ。
「シリウスは大丈夫だった?」
そう声を掛けられて振り向くと、リーマスが心配そうに立っていた。
『えぇ、大丈夫だったわ』
「それならよかった」
嬉しそうに微笑むリーマス。なまえもつられて笑みがこぼれる。
すると何かに気づいたリーマスがなまえに歩み寄り、なまえの額にそっと触れた。
「あれ?」
『っつ……!!』
「ここ、瘤が出来てる」
自分より背の高いリーマスを見上げる形になったなまえ。パチリと目が合って、この至近距離が恥ずかしくなる。
『あ、ありがとう!!さっきぶつけたんだと思うわ……』
リーマスから離れるため、後ずさる。しかし、それはリーマスにより制された。リーマスはなまえの腕を掴むと、自分の方へと引き寄せる。
ちゅっ。廊下に響くリップ音。リーマスが瘤の部分にキスを落とした。
『な、何して……!?』
「なまえが可愛いから、つい」
『つ、ついじゃないでしょう!?』
そう思いながらも人好きする笑顔を見せられれば、頬が熱を持っていく。
「さ、寮に戻ろうか?」
リーマスに手を引かれ、なまえは更に顔を赤くした。
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