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最初は悪印象




大広間に案内されて早々中央部に設置された椅子に座らされた挙げ句、渡された古帽子。どうやら被れとのことらしい。なまえは躊躇いなくそれを被った。

「ほほぅ。君は欲を持っとらんね」

頭上から声が聞こえ、思わず顔を上げるが何もない。

「ここだよ。わしは帽子だ」

今度は目線だけ上にして古帽子を見るが、当たり前のように帽子の鍔に隠れて見えない。それをもろともしないなまえは、驚きもせず相変わらず静かに佇んでいた。

「君はー…うむ…グリフィンドール!!」

古帽子の叫びと共に聞こえたのはグリフィンドール席からの歓声。
なまえは古帽子に『どうも』と軽く会釈をし、グリフィンドールのテーブルへと移動を始めた。その間にダンブルドアがなまえの説明をするのが聞こえている。

「彼女はなまえ・みょうじ。不憫なことに、記憶が無い。グリフィンドールの六年生に転入じゃ」

どこに座ればいいものか、と困惑していたなまえに一人の女生徒が手招きをしていた。なまえは招かれるままその女生徒の隣に座る。

「初めまして!!あたしはリリー・エバンス。あなたと同じ六年生よ」

赤毛の、エメラルドグリーンの瞳が綺麗な女生徒が、にこりと微笑んで手を差し出した。なまえはそれを笑顔で握り返す。
すると湧いて出たようにリリーの反対の席から手が伸びてきた。なまえは一瞬驚いたが手の主を確認して同じ様に握り返す。眼鏡の奥に見える榛色の瞳と、所々跳ねた髪。なまえは、クスッと吹き出した。

「僕はジェームズ・ポッターさ!!」
『よろしく』
「僕はリーマス。リーマス・J・ルーピンだよ」

ジェームズの向かいに座る穏やかな青年がなまえに微笑んだ。なまえもリーマスに『よろしく』と一言述べ、微笑み返す。
しかしリーマスの隣に座る男が、自分をぽかーんと見つめていることに気づいたなまえは訝しげに眉を寄せた。

「ん?どうしたんだい、シリウス」

はっと我に返った男が、ばつの悪そうになまえから目を逸らす。
……人の顔、じろじろ見といて失礼ね。

「ほら、シリウスも挨拶!!」
「…………」

ジェームズが催促するのを無視し、シリウスと呼ばれた男は俯いたまま。

「んもう、しょうがないな!!そいつはシリウス・ブラックさ」

痺れを切らしたジェームズが、小さなため息と共に言った。
バチバチ、何度目であろうこの感覚。なんだか哀しくなるこの気持ち。シリウスとは初めて会った気がしないのだ。
あたしは、この人を知っている?

「どうしたの、なまえ?」

心配するリリーに『なんでもない』と言って、もう一度シリウスに視線をやる。シリウスはいまだ、なまえを見ようとしない。
あたし、こういう人苦手だわ。

「は?」

やっと上げた顔は、可笑しい程間抜け面なシリウス。どうやら、声に出ていたらしい。

「……ぶふっ」

暫くの沈黙を破ったのは、なんとも阿呆らしいジェームズの笑いだった。

「なまえ、君さいっこー!!これからよろしく!!」

ジェームズに釣られて、リリーやリーマスもクスクスと笑い出す。そんな中、シリウスはムスッとそっぽを向いていた。


あきゅろす。
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