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おかしな出来事




再び静寂の訪れた廊下にシリウスを残し、リーマスは図書館にいた。机に突っ伏して頭に浮かべるのは想いを寄せるなまえの顔。頭を上げてハァ、と深いため息を吐く。

『……リー、マス?』

同時に、視界に入る愛しい人。今し方頭に浮かべたその人が目の前に現れ、思考が追いつかない。

「なまえ…どうしたんだい?」
『寮に戻る途中でリーマスとシリウスがいないのに気づいたの。リーマスならきっとここにいるだろうと思って』
「心配してくれたの?」
『突然いなくなるんだもの。心配にもなるわよ』

その言葉がなんだか嬉しくて、苦笑しながらリーマスの隣に座ったなまえに「ごめんね」と微笑んだ。

『シリウスは?』
「廊下で別れたからその後は知らないな」
『……喧嘩でもしたの?』
「…………」

心配そうに眉を寄せるなまえ。リーマスはクスッと小さく笑って中指と親指で作った輪をなまえの額に弾いた。

『っつ!!な、突然何!?』
「ふふ、なまえが可愛くて意地悪したくなっちゃった」
『何よそれ……だからってでこぴんは痛いわ』
「ごめんごめん」

クスクス笑うリーマスになまえは頬を膨らませる。
すると突然リーマスはガタッと椅子を引いて立ち上がり、隣のなまえを見下ろして言った。

「僕もシリウスも負けず嫌いなんだ」
『……?』
「…いや、なんでもない。僕行くね?」

去っていくリーマスの背中を見つめながら、なまえは顔を強ばらせていた。

『あなたもシリウスも、あたしなんか選ばなければ良かったのに。だってあたしは……』

……“だってあたしは”?今、あたしは何を言おうとしたのかしら。
リーマスの背中を見送ったなまえは図書館を後にした。









図書館を出たなまえは談話室へ続く廊下を歩いていた。
先程の不思議な感情は一体なんだったのか、なまえはそればかりが頭に浮かぶ。
少し遠回りをしようと別の道を選んだところで突然後ろから肩を掴まれ驚いて振り返ると、そこにはにっこりと微笑んだダンブルドアがいて、促されるまま校長室へと向かう。
校長室へ入ると、ダンブルドアはパチンと指を鳴らして椅子と机、それに紅茶とケーキを出してくれた。なまえは椅子に座り、紅茶の入ったティーカップを持ちながらダンブルドアに尋ねる。

『先生、突然どうしたんですか?』
「……のうなまえや。最近、おかしなことは無かったかな?おかしな夢を見ることは…」
『おかしな、夢?』
「いや、見ていなければそれでいい。もし見ていたら、なるべく早く忘れることじゃ」
『……幼い頃の』
「ん?」
『幼い頃の夢を見ました。記憶に無いはずなのに、父親と話をしていて……だけど何故だかひどく懐かしく感じたんです、その…父親のこと……』
「ふむ…なまえ、そのことは早く忘れるのじゃ。君には父親の記憶が無い。ならばその夢もただの夢に過ぎない」

眼鏡の奥の青い瞳が真っ直ぐになまえを捉えている。なまえが首を縦に振ると、ダンブルドアは優しく微笑んだ。

『……でも先生、何故そんなことを』
「んむ…いや……おかしなことに惑わされては有意義な生活が送れんじゃろうと思うてな」
『……そう、ですか』
「もし今後おかしなことがあっても決して抱え込むでないぞ」
『はい』

柔らかい笑みを浮かべるダンブルドアに微笑みで返すなまえだが、ダンブルドアに微かながら窺える焦燥感に疑問を抱いていた。


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