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想いを告げて




「なまえ!!どうしたんだい、その脚!!」
『違うのよ、マダムが大袈裟に包帯なんて……』

談話室へ戻ると、ジェームズが大声でそう叫んだ。なまえは苦笑しながら言って、ソファーから投げ出された脚の怪我した部分を優しくさする。ジェームズは「なんだ、そうなのか」と微笑んだ。
その後ろで壁に背を預け体の前で腕を組むシリウスに、なまえは視線を移す。シリウスもなまえを見ていたようで、視線がぶつかった。
「大丈夫か」、シリウスの唇がそう動く。
なまえはコクリと頷いてシリウスから視線を逸らす。少し、鼓動が速くなった気がした。

「……そ、そうだ!!リリー、君に勉強を教えて欲しいんだ!!図書館に行こうじゃないか」

突然切り出したジェームズの棒読みなセリフに、リリーとなまえは目を点にした。ジェームズに手を引かれたリリーは反論する間も与えられず談話室を去る。
つまり談話室に残ったのはなまえと、シリウス。
なまえは気まずさから、俯いたまま口を閉ざした。シリウスの歩み寄る足音が聞こえる。ちょうどなまえの背後まで辿り着いたところで、シリウスが沈黙を破った。

「……なまえ」
『…………』
「その、あー…あれは忘れてくれ」

シリウスの言う“あれ”がキスのことであるのはなまえにもわかっていた。しかしなまえは何も答えず黙り込んだまま。

「それと…今から言うことは、深く考えずに聞いて欲しい」

深く、息を吸い込む音が聞こえた。一瞬また静寂が戻り、なまえの鼓動がまた速くなる。

「あれは、あのキスはふざけてしたわけじゃない」

なまえが俯いていた顔を上げれば、いつの間にか目の前に移動したシリウスがいた。

「俺にはなまえを他の女と同等に見ることなんて出来ない。俺にとってお前は、それ以上に大きい」

視線がぶつかり、何故だかその灰色から目が離せない。

「……だからあのキスはお遊びじゃない」

灰色の瞳を見つめたまま、なまえは閉ざしていた口を開いた。

『……どういう、意味?』
「俺は、」

シリウスが床に片膝を付き、なまえの目線まで下がる。そして微かに笑みを浮かべた。

「なまえ、お前のことが好きなんだ」

その瞬間、談話室がまた静寂に包まれた。まるでなまえにシリウスの言葉だけを聞かせるかのように。

「だからあのキスは忘れてくれ……」

シリウスはそう言うとなまえの脚を軽く撫で、「お大事に」と言って立ち上がると、談話室を出て行った。
残されたなまえの耳には、自分の心音しか聞こえていない。

『深く考えずに聞くなんて、無理に決まってるじゃない』


あきゅろす。
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