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それは嫉妬心




「わぁ!!なまえ、すごく綺麗だわ!!」

ダンスパーティーの夜。ドレッサーの前に座るなまえに、リリーが言った。
なまえはネイビーのふんわりと広がったドレスで着飾り、いつもはストレートな黒髪にウェーブをかけ、うっすらと化粧をしている。元々日本人にしては大人っぽい端正な顔立ちであるため、普段以上に大人びて見える。

『リリーこそ。それならジェームズもあなたに惚れ直すわね』
「もうなまえったら!!」

一方、リリーはワインレッドのショートドレスで着飾り、髪をアップにしている。体のラインが強調されるドレスなので、リリーのスタイルの良さが際立つ。
きっとジェームズはより一層綺麗になったリリーに奇声を上げるのだろう、となまえは思った。

『それじゃあ、行きましょうか?』
「そうね。待ちくたびれてそうだわ」

談話室に降りれば、すでにジェームズとリーマスが待っていた。案の定、ジェームズはリリーを見て口をパクパクさせている。
その後、「リリー、君はまるで女神のようだ!!」と叫んだジェームズに、リリーが真っ赤になっているのを見て、なまえは自然と頬が緩んでいた。

「なまえ」

その声にハッと横を見れば、リーマスが並んで立っている。

「なまえ、すごく綺麗……」
『……あ、ありがとう』

にっこりと微笑むリーマスに、なまえは顔が熱くなった。

「シリウスとピーターはもう行ったよ!僕たちも行こう!!」
「ちょっとジェームズ、あんまり引っ張らないで!!」
「あ、ごめんよ」

ジェームズがリリーの手を取って大広間に向かおうとしているので、リーマスとなまえは慌てて追い掛けた。








会場となる大広間に入れば、生徒たちの視線が四人に集中した。なんといっても、美男美女が正装により更に美しくなっているのだ。所々でざわめきが起こる。
暫くして、パーティー開始の合図がダンブルドアによって為され、ジェームズとリリーは人混みに消えていった。なまえは二人が上手くいくことを祈り、リーマスと共に輪の中へ入っていく。

「僕たちも踊ろうか?」
『……リーマス、あの、あたしダンスなんて踊れないわ』
「大丈夫、僕がリードするから」

リーマスの言葉になまえが頷き、差し出された左手に自分の右手を乗せる。ゆったりとした曲に合わせ、リーマスのリードによりステップを踏むと、なまえでも十分かたちになっていた。

「上手いじゃないか」
『リーマスのお陰よ』

なまえがそう言えば、リーマスは嬉しそうに微笑んだ。
暫くして曲が激しいものに変わった途端、会場の脇から黄色い歓声が上がる。何事かと思えば、歓声の中心に見慣れた人物がいた。

「シリウスだ」

シリウスがレイブンクローのチェルシーと踊っている。チェルシーといえば、美人で有名なレイブンクローの女子生徒だ。シリウスもあの容姿なのだから、そんな二人に歓声が上がるのは当然のこと。
なまえとリーマスは静かな場所へ行こうと、飲み物を片手にバルコニーへ移動する。
そんな二人をシリウスが見ていたとは、誰も気づかなかった。








『ダンスパーティーってすごいのね。圧倒されたわ』

なまえがクスクス笑うと、リーマスも笑みで返す。

「どう?楽しい?」
『えぇ、もちろん』

リーマスはそっかと言って夜空を見上げた。なまえも釣られて夜空を見れば、満天の星が輝いている。

『……綺麗』
「僕はなまえの方が綺麗だと思うけど?」
『も、もう!!リーマスったら意外と気障なことばかり言うわね……』

リーマスの言葉に、なまえは顔を赤らめる。そして、リーマスは俯いたなまえの頬に唇を落とした。驚いたなまえは顔を上げてリーマスを見る。

「好きだよ、なまえ」
『リーマス…』

リーマスは満足そうな笑みを浮かべ、「飲み物を取ってくるよ」と言って大広間の中へ消えていった。なまえはリーマスが去った後、もう一度夜空を見上げた。リーマスの言葉が、頭の中を廻る。

「なまえ」

後ろから掛けられた声に振り向けば、シリウスが立っていた。

『シリウス、どうしたの?』

見られたのだろうか、そう思いなまえは少しだけ焦っていた。実をいうと、廊下での出来事から、なまえはあまりシリウスと関わっていないのだった。というよりも、気まずさからなまえがシリウスを避けていたのだ。
久しぶりにシリウスと向き合ったなまえは緊張感から心臓が早く脈打つのを感じる。

「お前とリーマスの姿が見えて追ってきた」
『チェルシーは?』
「あいつなら今頃他の男と踊ってるだろう」

そう言いながら、シリウスはなまえの横に並んだ。ネクタイを緩め、ふぅと深呼吸をする。

『……そのドレス、似合ってる』

えっ、となまえがシリウスを見れば黒髪の間から見える耳が真っ赤で、なまえは思わず吹き出した。

「何笑ってんだよ……」

シリウスがなまえの方を向いたので、必然的に二人は視線が交わる。

『……ありがとう』

先に逸らしたのはなまえだった。なまえが俯いてそう言えば、シリウスはあぁ、と夜空を見上げる。
暫しの沈黙。それを破ったのはシリウス。

「リーマスは、本気なんだな」
『え?』
「あいつはお前のこと、本気なんだな」

やはり見ていたのか、そう思いバッとシリウスの方に顔を向けた。
ちゅっというリップ音。一瞬、何が起こったのかわからなかった。すぐに頭をフル回転させると、ようやく状況が把握出来る。
自分の唇に、シリウスのそれが重なっている。
なまえは大きく目を見開いた。
ガリッ。
離れたシリウスの唇から血が出ている。なまえは全身がカーッと熱くなり、シリウスを一瞥するとそのまま会場の人混みに消えていった。
残されたシリウスは冷静になると、自分のしたことに後悔の念を抱く。

「俺は何をやってるんだ」

口の中に鉄の味が広がる。
リーマスにキスされるなまえを見て、頭の中が真っ白になった、ただ、それだけ。


あきゅろす。
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