side B SASUKE 振り向く背中の隣りへ歩を進める。 幼い頃から変わら無い桟橋…… 軋む木の音が古い物では無い事が伝わる。 近代化を知らせる里の灯とは此処だけが異なって居る。 それは態と オレが全てを失った と錯覚した、あの日… その当時の侭―――‥ 時が止まったかの空間が酷く懐かしい。 しかし 確かに歳月を知らせる金色薄れた髪色が彗星の光に照らされば、時の流れを知らしめられる。 アイツの 薄くなった碧い瞳が、流れ線を追う事を止め此方へと向けられ、お前の眼にオレがどう映って居るのだろう…などの疑問が不意に脳裏を掠めた。 星の行方よりナルトの半生が気掛かりだったが、敢えて聞かずと唇を開く。 「…まさか、願いが叶うなんて…、思ってもみなかったぜ。」 身に纏う外套は きっとあの頃、 此の場所で同じく流れた星に願った事柄を叶えた証。 「…‥良かったじゃないか、ナルト。 いや、七代目火影だったな。お前の願いが叶って……」 実直たる言霊を含めるも揶揄を込めてフと笑う。 するとアイツは 緩やかな皺を刻んで口を開いた。 「本当だったんだな‥。災い持つ巨大な箒星……――。人々からは忌み嫌われるけど、真剣な願いは必ず叶えてくれるってな奴――‥」 「災いか…」 ナルトの話の一句に鈍く瞬き、耽る。 忍びなる世界に住む者に本当の安らぎなどは訪れやしない。 何時も戦乱と 幾つ物の喪失せた命を哀憐れむ暇も無く また次の命を奪い 目的のみを遂行させる…… 遺された者の哀しみ 喪われた命の重みを背負いながら、 忘れようとしながら 仕方が無かった… と己に片を着けてきた。 ナルト お前もそんな世界で生きて来たハズ…… 今更 互いに、どんな災い等にも恐れやしないだろう。 オレと相違的に 弧を描く瞳…‥ 歪む頬の線。 「……ああ、叶った。たった今――‥」 そう言った あの頃と変わらずな闇を照らす彩りに飾られた微笑み。 それが際立つ淡碧に鉛色を混ぜる、真っ直ぐにと…‥。 そして瞠ったままになる。考えられない疎通が巡る‥… 何だと? 今、…叶っただと? 「まさか、ナルト…」 お前は火影になる事を星に願わず、オレと同じ事を… オレは今 どんな顔をしてアイツを見詰めているのだろうか…… ある程度 年老いた面なのは確かだが…―― [*前へ][次へ#] [戻る] |