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償い※綱手



「何、九尾が現れただと!」


「はい、綱手さま。今カカシの忍犬が情報を持って参りました!」

「全員、非常体制を張れ。アカデミーの子供達は避難小屋に。それと同盟国にも援軍を要請しろ。一刻も早く!わかったな、シズネ。」

「はい!」

火影室がざわめく
木ノ葉の里全体が揺れる


「あの部隊でも任務に失敗するとは……。やはり侮れなかったか…。」


「サスケが死んだのが全ての要因じゃな……。殺せと命じたワケでもなかろーに…
何故、認めてやらかったのか…、自由恋愛主義なワシにとっては理解出来ぬが……
言える事は、まあ…木ノ葉の連中の眼は冷たいもんじゃった‥」


「こんな処で悠長に語っている場合では無いぞ、自来也…」


「のう、ひとつ聞いて良いか?
お主にはどう映った?
同性愛……
アイツ等の想いは……――」





Never let me back






「私は分からず屋では無いぞ、恋愛は自由だろう?」


「じゃあ何故、S級任務を任せたり、里抜けに対して躍起になったんじゃ?、放っといてやれば何も危害はなかったろーに‥」

「あいつ等の想いがどんなものか知りたかったのと……、私もこの世界に矛盾を感じていたのかもな……」


あんな風に
誰かを愛する気持ち。愛した奴を喪った時の気持ち。


「私には解っていた筈なのにな…」



樹々が崩れて行く…

『あ』


『ん』

の扉が後形もなく
踏み潰される…




16年前にも
この里は九尾に襲われた……






私はこの世界が
こうなる事を知り
どこかで、この時を望んでいたのかも知れない…




「私に考えがある。付き合え、自来也…」



「……お前と一緒に死ねるなら本望じゃのォ…」


「そうではない、お前には手伝って欲しい事があるだけだ。………自来也、お前は物書きとして語り継がなければならない…、この事態が何故、起こったか…をな。その役目を五代火影として申し渡す。」

お前に渡す、最期の命令だ。



純粋な夢を歪ませた罪は私にある……。



封印の術式は
“波風ミナト”
四代目火影が開発したものの解明出来ぬ何かを秘めたもの……


三代目はこの式を執ったが大蛇丸を封印しそこねた…



今、向かって来るのは三竦みの一人とは壮大に違う力を持つ
破壊神だ。



とても私なんかでは太刀打ちは出来ない…





しかし
やらねばなるまい。


この作戦がうまく行き、そしてそれが…サスケとナルトへの詫びにでもなれば……



私も少しは救われるだろうか。





現れた巨大な古の妖狐九尾を眼にし、変り果てたナルトの姿に愕然と体が震えた。


憎悪と破壊に渦巻く形相……

強い意思と愛を
拒絶した里への報いの痕跡



「これが九尾の……
うずまきナルトの力か…」



忍術も忍具、技すら効力がない。

傷を与えても直ぐに回復してしまう…
敵に廻って改めて思う、厄介なものだと。


よく見ると片手に、うちはサスケの亡骸を包み持っている。
テンゾウがくれた最期の情報が託された鳩により知った事を目の当たりにするとどれ程の想いが寄せられてたかが知れた。



「火影室を抜けて正解じゃったのォ」

「自来也……
私は汚い大人かもな…」


恐らく此処は崩壊しないつもりと読める、うちはサスケの家の屋根に登り、自来也と共に佇んでいるのだから。






妖狐が私のチャクラに気が付き此方を見やる。



その紅眼は
愛しい者を喪った
哀しみに満ち


涙していた…






「…済まなかった。……うずまきナルト」




意識も声も…
身体すら完全に
九尾と同化しているのか獣声しかあがらないようだ。





「……私が憎いなら殺せ。……しかし、この術式を終えてからにして欲しい…」



信頼が失せているのは当然だろう
容赦なく鋭い爪が
防御を取らない私の身を切り裂いた…




もっと此方へ来い

術式の円を敷いた範囲内に入れ。


私が憎くて
この里が憎いのだろう?






「よし、出来たぞ綱手!」


背後にいる
自来也の支度が終わったようだ…



「ナルト……
私もこの世界が
というより…
実はこの世界を築き、すっかり染まってしまった私自身が大嫌いなのだ。」


何も言わずに私に寄る、鋭く大きな紅眼……


「信じてくれとは言えた立場ではないのも
重々承知の上で、
最期の話を聞いて欲しい……
私が小さな頃から
いや、もっと以前から積み上げて出来た物に疑問を感じていた。
しかしそれを火影になって打算的な考えで閉ざしてしまった。
でもな、お前たちが陰湿な眼で見られるようになってからか……
再び戦乱止まない忍びの世に……人としての扱いなどに疑問を抱いた。
だが……
臆病な私は…
偏見を変える事より、庶民達の私を見る眼を恐れてしまったのだ。
よってこれは…
私が招いた忌まわしの世界……
変えるのには崩壊が必要…――」

覚悟はとうに出来ている…


「さて期は熟した。
お喋りも終いだ、
さあナルト、お前は…サスケに逢いに行き、もう一度………
…やりなおして来い…。」


意味が理解出来ないと傾げる首…
騙されないと疑う眼差し…

「本当に済まない事をした……私は地獄でお前達の幸せを願っているよ…」




時空の扉が開く…



契約を結んだ私の瀕死なる身を糧に……



九尾が
時の狭間に陥る……





次なる
未来を目指して。




もし、
もしも今度会えたとしたなら


その世界では………
私も立派な火影になろう……








未熟な火影であった
私が
封印出来たのは……


憎しみに自我を忘れ
只の暴徒と化した邪悪なる化身の
"一部"のみ、だった。








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あきゅろす。
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