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あの日と同じ形をした月を眺め、隣に立つ兄の過去の所行を思い浮かべているとガラリとガラス戸が摺れる音がした。


「で〜きた、出来た、出来たってばよォ!!」

「…サスケの子が出来たとは、ダブルでめでたい日だな…。」


「本当か、ナルト…」

「ああ゛?んなワケねーだろ!!何ボケてんだよ!」

「ナイスツッコミだがリアクションがなっちゃないぞ…、ナルトくん。」

「お笑いマスターにはなりたかねーから別にいいってばよ。」

「そうか。残念だな。しかし、我が暁の人柱となればそんなワガママは通用しない…。」

「暁ってそっちの方向、目指してんのか?」

「世界平和に笑いは必要不可欠だ。世界中、誰だって笑いあり涙あり…だからな。」

「ふーん。何か演歌じみてんだな、暁って。」

「イッツ・ア・スモールワールドだ。ナルトくん。」

「……相手にしなくていいぞ、ナルト。」

「…今際(いまわ)の際には最高の笑顔を放ってやろう。サスケ、お前の思い出のアルバムの中で必ずしも一番となるベストショットをな…。」

「フン、…楽しみにしてるぜ。」

「フ……。」

「今日だけは兄弟仲良くな感じになれてよかった、よかった!」

うんうんと微笑み頷くナルトに招かれ、香ばしい薫りが漂う居間へ足を踏み入れる。

「今夜は大盤振る舞いだってばよ!ノビねーうちにさあさあ、召し上がれってんだ!!」

「ほう、…これはなかなか豪勢だな。」

「……まさか、ナルト…お前本気で…」

「本気と書いてマジと読むってばよ!」

長方形の比較的広い卓袱台の中央にはペタペタと粘土を手で固めて修正したような苺のケーキが置かれ、その周りには所狭しと様々なカップラーメンが並べられている。
椀や箸も、やっと置ける状態で……だ。


「ラーメンバイキングへようこそ!
料理の紹介を簡単にするってばよ!!」

「うむ、頼むぞ、ナルトくん。」

「えーっと、こっちはチキンベースの味噌に醤油に塩!、こっち側は豚骨でそれベースの味噌に醤油!んで、そっちは世界ラーメンフェアって感じで韓国の辛いヤツとチリ味に、最近流行りのトマト味はイタリアンテイストでチーズ入りィ!あとはキムチにカレー、広東に四川、クラムチャウダーラーメンはちっとフランスっぽくで、変わり種っぽいトムヤンクン、カルビクッパとぉ…、後はサスケのお気に入り北海道限定焼きそば弁当に、ポピュラーなペヤング、まぜそば、油そば、つけ麺、チョウジが好きそうなポテチ味焼きそばだってばよ!」

俺はただ、指差し説明するナルトの得意げな笑みに相反するかに眉を潜め、湯を入れたのみで完成するインスタント商品の一部をやるせない気持ちで眺めているだけだったがイタチは上座でそれらを真剣な眼差しで見詰めていた。

「流石に豪勢だな。それに料理の説明までしてくれるとは気分が良い…。ケーキも手作り感がたっぷりで家庭的だしな。」


イタチ。
アンタは本当にそう思っているのか?

だとしたら、俺に劣らずあの日から過酷な時を過ごしてきたって事か。

「んじゃイタチの誕生日おめでとーってコトで牛乳で乾杯するってばよ!」


牛乳?
カップラーメンに牛乳だと?

「ホラ、サスケもいつまでも意地なんかはってねーで…」

「ナルト、お前正気か?」

「ああ゛?お前こそまだ寝ぼけてんじゃねーの?こーんなめでたくてゴージャスなバイキング、他にねーだろ?」

「そうだサスケ。お前は可笑しい…。」
「可笑しいのはそっちだろが。」

「なっにィ!!オレとイタチのどこがオカシイんだってばよ!
いい加減に素直んなって目覚ましやがれってんだ!」


「目を覚ますのはナルト、お前だ!」

「なに寝言ぶっこいてんだってばよ!!起きろサスケ!起っきろ、起っきろ、起きろってばァ!!キバやシカマルが待ってんぞ!」

「……ーーん、…」
瞼を開くとエプロン姿のナルトが俺の身体を揺らしていた。

「イタチはどうした?」

「どんな夢見てたんかは知んねーけど、オレ達の結婚記念日とキバの誕生日を祝う会を今日するっつったろ?」

「おーい、ナルト。お湯沸いてんぜ!!」

「おう、今行くってばよ!」

キバに呼ばれて台所へ向かったナルトを後目にして身を起こす。
俺はどうやら帰り道途中で買い物へ出向いたナルトを家で待つ間ずっと眠りに陥り、現在の現在まで夢を見ていたらしい。


「だいぶ疲れてるみてェだけどよ、大丈夫か?」

「…そういうシカマル、お前こそ疲れた面してんじゃねーか。」

「アレ見りゃよ、そりゃこんな面にもなるわな。アイツらは楽しそうだけどよ?」

俺の隣に膝立て座り、ぼそぼそと話すシカマルの親指の先を見れば、さっき見た夢との光景が被り出した。

「う!…こ、これは…」

テーブルの四隅まで並ぶ豊富な種類のカップラーメン。
息の合ったコンビプレイでそれの蓋を開け、湯を注いでゆくキバとナルトは確かに楽しそうだ。


「ま、まさかな…」

テーブルの中央にはシカマルが買ってきたと言うケーキが置かれ、その横にはキバが持ってきたビーフジャーキーが山積みにされていた。


「今日はラーメンバイキングでレッツパーティーだってばよ!」

「三分経ってねーけど取りあえず乾杯しよーぜ!」

「んじゃ、オレ達とキバおめでとうってコトで…」

俺が買った高級トマトジュースが入ったコップを掲げるナルトとキバの愉しげな声が居間に響き渡っていた。



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