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任務を終わらせた帰り道。いつも通りにナルトと並び歩く。

「買い物して行きてェからさ、先に家帰っていいってばよ。」

多くの食材を販売している総合店の前で一旦立ち止まったナルトが笑い掛ける。
ナルトとは俺の家で一緒に暮らして数年の仲だ。

「俺も付き合うぜ。」

「ダメダメ!いいからサスケ、お前は先帰って少し休んでろって!」

「大丈夫だ、気にするな。」

「オレにはオレの計画があっからダメッ!」

腕を交差しバツ印を向けたのは、写輪眼をカカシと共に使いミッションを果たして疲労困憊気味なのを見抜いてだろう。
心配無用と投げかける俺に断固として尚も帰宅するように勧め。荷は影分身で運べは何て事ないと更に念を押し、肩を叩きニィと笑う。

俺はナルトの気持ちを汲み、一人家路を辿った。
そして玄関をくぐり居間へと上がれば早々と横臥して身をが休ませていた。

眠りに意識を傾け、どれくらいの時が経ったのだろうか。
バタバタと忙しない物音を微睡みの中で聞き取り、俄かに細い視線を台所へと馳せる。

「帰ったのか?」

「静かにしてたつもりだったけど起こしちまったか、わりィわりィ。あのさ、いっぱい買いすぎたし、たまには豪勢なのもいっかなって思って、今夜はゲストも呼んでバイキングにするってばよ!」

「ゲスト?」

「そうそ、帰り道でたまたま声かけられてさ。何かちょうどうちに寄ろうとしてたから、逆によかったとか言っててな。」

シカマルにキバやサクラ…辺りか?

カカシは相当チャクラを使い果たしてた様子だったからな、遭う訳がねェ。
心辺りを巡らせていると、まだハッキリとしない意識の最中、ふいに玄関の硝子戸を叩く音が耳に飛び込んだ。

「はいはいはいはぁーい!!」

廊下を騒がしく走るナルトの足音を聴きつつも、怠さ任せに再び瞼を閉じていた。何をほざいてるか分からねーが、聞き覚えのある低声と客人を歓迎する明るいデカ声が廊下を通して響いているのが何故か和やかだと感じつつ。

「サスケェ!サスケェ!手作りケーキってなすげーモン貰っちま…ぐあッ!!」

その後に耳入るドタバタ木床を走るやかましい音。それが驚愕なる発声と共にドタンとした鈍くも派手な音に変わった。
反射的に飛び起きて其処へと出向き見れば受け身も取らずに転び、ケーキの入った箱を大切そうに強く抱きかかえているナルトが眼に入る。

「大丈夫か、ナルト。」

「へーき、へーき!ケーキはこのとーり無事だってばよ!!」

「箱が逆さだと思うが…。まあ、お前が無事なら何よりだ。」

「へ?逆さま…?」

慌てて身を起こした際に渡った力によりグシャリと箱が軋んだが、ナルトは気に止めず。そのまま居間の中央に滞在する大きな卓袱台に預かった白い箱を置いた。

潰れたそれを雑な手つきで開けるナルトの背後を見守る。

苺と生クリームで装飾されたホール型の丸い菓子上にのる楕円形のチョコレート板は罅(ひび)入り。愛らしい模様を施した祝のケーキは柔らかな形を崩し、ナルトを落胆させた。

「わりィ。せっかくのケーキが台無しにしちまって…。」

読み取れるプレートの文字と俺の背後に詰め寄る気配に客人が誰だか明らかとなる。

「鬼鮫が勝手に拵えて寄越した物でな。…アイツの勝手故に気にする事はない。」

「平然と敷居を跨りやがって…。勝手なのはアンタだ、イタチ。」

「ナルトくんの了承は得た。それに此処はオレの生家だ。問題は無い…。」

「てめェ…。そんな事が言えた義理か!」

「何やってんだ!サスケェ!!」

釈然とした眼差しを馳せるイタチの懐を掴み睨めば、ナルトに間を割られ「兄弟喧嘩は今度にしろ!」と叱られる。

「チィ、仕方ねェ。ナルトに免じて許してやるか。…今日だけはな。」

「己の弱さを他人の所為にするとはな。負け犬に相応しい…。」

「なんだと…」

「喧嘩すんなら庭でやれってばよ!!」

キレかかったナルトに蹴り飛ばされてイタチと素足のまま庭へ。

窓も玄関も鍵を掛けられてしまい、仕方無しに庭石に腰を落とした。

肩を下げ俯き溜息を吐く。

「操る側が操られるとは……、愛とは深いものだな。」

「知った風な口をきくな。原因はアンタだからな、イタチ。」

「何でも人様の所為にする。此もこの時勢の賜物か……」

「何が言いたい?」
「今日はなんの日だろうな…。」

「さあな。」

「幼き頃は朝から浮き足立って祝ってくれたと云うのに…。随分と変わり果てたな、サスケ。」

「誰がそうさせた?、…誰が?」

「さあ…。差し詰めゆとり教育なる土壌で育んだ反抗期が…とでも思っておこうか…。」

「アンタだ、アンタだ!アンタがそう仕向けたんだろが!」

「一つの可能性と課題を与えただけだ…。兄としてな。」

「どういう意味だ?」

「お前がブラコンだと云うレッテルを剥がしてやったのさ。父上や母上、煎餅屋の老夫婦もお前に友達がいない事を心配しててな…。」

「だからと言ってやり過ぎだ。」


「兄の教訓を生かし、ナルトくんとは程良く仲良くヤった方が良い…。焦らすのも必要だからな。」

「ああ、ヤる時はヤってるぜ。アンタに言われなくてもな。」

「そうか。なら安心したぞ。」

「余計な世話だ。」

「ところで今日は何の日だったか…――」

「……災いの素がこの世に舞い降りた日かもな?」

「キューピット降臨とは…なかなか粋な事を云うようになったな、サスケ。」

「…その都合の良い脳内を今すぐかち割ってやろうか?」

「バイキングなんて、アカデミー以来だから楽しみだな…。」

「給食とバイキングを一緒にするな。」

「沢山、買ってたな。ナルトくん…。一人で大丈夫だろうか?」

「ああ、影分身まで使って用意してるらしいな。」

ナルトはもしかしたら気を使って俺とイタチを庭に放ったのかも知れない。

今日が何の日だか知って……。



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