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*7

庭に流した視線を戻せば、下がる蒼穹色の瞳孔が杞憂で細くとなった俺の双眸に宿った。
漸く西瓜より俺を重点として視野に入れたか…


「氷か何か持ってこよっか?」

「いや、暫くこのままがいい…」

後頭を敷く弾力とナルトの手団扇が作る微風の居心地の良さに甘えていたい。
不甲斐なくもそう思わずに居られずに瞼閉じる。虫の音が莢かにして囃し立てるかに鼓膜を素通りしてゆく…
今日の夕方も明日の朝もナルトは庭に訪れる。夏の風物詩なる実が食せるまで糧となる水を与えに……

「芽が出てふくらんだら、花…咲くんかな?」

また西瓜かよ。
手仰ぐ風は確かに俺に向けているのに、視線も思考もまた遠退いちまったらしい。苛立ちに瞼は開き眉が顰まる。

「スイカの花咲いて、スイカの実になってデッカク美味しく育ったら、……そしたらーー…」

丸い瞳が幅を狭め、仰ぐ手の指が束を解き不意をついたようにして俺の顳(こめかみ)へと差し入り、ゆっくり垂れる横髪を上梳いて落ちて行った。切なさを交えつ噛み締めた唇の変わりに何かを紡ぐ様…

「…そしたら、何だよ?」
「……そしたら、……ーーサスケが好きになってくれっかなって。」


まさか
お前も俺の事を……



「サスケ、本当はキライだろ?」

「そんな事はない」
「ウッソだぁ〜!!」

「嘘じゃねーよ…」

「でも、あんま好きじゃねーだろ?」


見透かすような唇、疑いの眼差しが仰向けた俺の目上から近寄る。杞憂は晴れ代わりに喉の渇きを催すくらいに体温が上昇し、鼓動が爽やかな朝の外気に響き出す…。言うなら今だと状況を先読む手がナルトの頬へと伸び、指先が輪郭に辿り着く。

「…好きだ、ナルト」

刻んだ語句に驚いたのか縦へと見開かれる蒼穹色の丸玉。
きょとんとして言葉を失った相貌。


静と化したナルトの頭上では一時的に強く吹いた風により和紙が大きく揺らいで、チリリリ‥…と鈴のような音色が渡り。
庭では樹々の何処かの幹に止まった蝉が鳴き始めた。


募らせていた想いを告げた後に流れる静けさから蔓延った、この何とも釈然としない焦燥を拭い攫うかに……――






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