*6
「一人で強く信じて突き進むよか、二人で……、いや、みんなで信じての方がきっと、叶ったり通じたりなんだろな。」
水を撒きながら小声を漏らしたナルトは笑みこそ絶やさずにいたが、一瞬だけ何処か寂しそうな瞳で二葉を見詰めていたのを見逃しはしない。
「お前が信じて頑張ったからだよ…」
ひたすらスイカに芽が出ると信じて、毎日努力する姿に、目的は違うが重ねていた。
ナルト
お前と俺の方向性は全く違う。
だが互いに強くなりたいと願い、見えない未来を手に入れようとしている。
現在はいいは、やがて時が経ち…今よりも強い力を宿してあの男へと近付いたなら……密かにお前へ抱いている、この気持ちさえも抑し殺し、もう二度と抱かないよう全ての感情をも捨て去ってしまうだろう。
そう思念すれば首筋の付け根にある呪印がズキンと痛んだ。俺の気怠さを招く憂鬱はここにあると示すように。
口に出来ない想いの数々は遣り場もなく。目に見えない闇が拡散する事に怯え、ナルトを否定してしまう暗示を怖れている。
ナルトの遠い未来の夢よりも断然として近い未来だとの懸念は捨てられずな俺の未来……
時が迫っているとの予感が刻々と広がる。…ーー俺の中で。
それを変えたくなったんだ。
決して焦りや不安に煽られた訳じゃなく、もっと単純な理由。
ただ、お前の
笑顔が見たくて…
今はお前の
傍に居たくて…ーー
「だから、動いたんだ…」
「…へ?」
「見えないもんを信じさせるために、お前は毎日、朝夕欠かさず努力をしてた…」
「努力なんて、んな立派なもんじゃ…、ただ水やりに来てただけだし…。ってかサスケどした?お前がそんなこと言うなんて何かヘンだぞ?」
確かに俺は変だ。
お前に恋心を抱いた時点で、もう既に…だ。
「夏バテでもしたんだろ?まだ早ェ時間だからさ、少し寝てろって」
心配そうに垂れる眉、傾く顔。
俺の本意を知ったら困惑な顔に変わるのだろうか…。
「…悪いがそうする。お前も家へ帰って支度しとけ。」
立ち上がりナルトに背を向けた刹那、小さな手に肩を抱き寄せられた。
「部屋まで連れてってやるよ、お前いつもより顔白いし、何か気になるかんな!」
「離せ、一人で歩ける…」
「うっせェ!素直に肩借りとけ!!」
些細なことでもそうやってお前は直ぐに懸命になる。
無理矢理と手首を掴み肩を寄せ、腰に片手を回して支えを必要としない俺を介助し歩く。
そんな姿を見せられて黙っていられる訳がない。
「……ナルト…」
「あ?どした?」
「……ーー。」
「気持ちわりィんか!だ、大丈夫かよ!」
項垂れて名を呼んだのみで口を噤んだ俺を縁側に上がらせ横へと寝転がる姿勢へと招いたナルトにされるが侭の最中、ナルトの胸元を掴み、せがんでいた。
「悪いが、借りを作らせろ……」
縁側で二人、
早朝の涼やかな空気と風に触れながら
此処からでは様子の見えない石段向こうを覆うビニールを眺め目を細くとしていた。
透明なる面に朝陽が反射しキラキラ光り、時折通り過ぎる風に微かと揺らめく景色のその下で、成長を続けて行くと思われる植物が確りと実る事を求め、ナルトの膝の上に黒い立ち髪を寝かせ置いて眺めていた。
焦がれる想いを照らし合わせて……ーー
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